『砕かれた鍵』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/14 『砕かれた鍵』(逢坂剛), 作家別(あ行), 書評(か行), 逢坂剛

『砕かれた鍵』逢坂 剛 集英社 1992年6月25日第一刷

『百舌の叫ぶ夜』『幻の翼』に続くシリーズの第三話。☆百舌シリーズ書評→『百舌の叫ぶ夜』 『幻の翼』

『幻の翼』からさらに1年半くらいあとの設定でこの物語は展開します。第三話には「百舌」は登場しません。その代りと言っては何ですが「ペガサス」と名乗る新たなる殺人者が現れます。

警察庁警務局特別監察官の倉木尚武と明星美希は結婚し、1歳になる息子がいます。しかし、息子の真浩は先天的に心臓に欠陥がある難病を持って生まれ、手術が必要な状態でした。大杉良太は『幻の翼』のラスト、稜徳会病院での事件以後に警察を辞職し、一人で調査会社を経営しています。

その頃、相変わらず警察内部の不祥事が頻発し、実態を現職警察官が告発する本がシリーズ化され、評判を呼ぶような事態になっていました。倉木は本に書かれてある内部の腐敗がある程度事実であることを認めながらも、出版の裏に警察を揺さぶる別の目的を嗅ぎ取り、大杉に出版元の桜書房の調査を依頼します。

前の二作では公安省を創設しようとする政府与党上層部の陰謀を、倉木と大杉が津城警視正と協力して阻止したわけですが、決して根絶やしにはなっていなかったのです。

一方、倉木の妻となった美希は息子・真浩の手術にかかる費用を捻出するために警察共済組合へ借入の相談に行くのですが、そこで総務部福利課の笠井涼子という40歳半ばの婦警と出会います。この笠井涼子という婦警、ただ者ではありません。よく憶えておいて下さい。

倉木の幼い一人息子と美希の母親・友希子が、病室に見舞いを持ってきた准看護婦もろとも爆弾に吹き飛ばされて死亡するという、これまた凄惨なシーンから話は動き出します。

この不幸な出来事は、同じ病院に入院していた倉本真造法務次官宛ての見舞品が、名前がよく似た倉木の息子・真浩のところへ間違って届けられたことが原因でした。悲嘆にくれる美希。捜査が進展しない苛立ちに復讐心を抑えられず、美希は倉木の制止も聞かず独自で爆発犯の捜査を始めます。

美希はやがて爆発犯らしき馬場という男に辿り着きます。出版社を調査するうち、大杉もまた馬場を見かけます。馬場に会いに行った美希を探す倉木と大杉。馬場は何物かに殺され、美希はハンドバッグとパンプス、結婚指輪を隅田川のそばに残したまま行方が分からなくなります。警察は美希の失踪をよいことに一連の警察官の不祥事を含めたことの真相を、死んだ馬場と、馬場を復讐のために殺した美希が自らの命を絶ったという形で終わらせようと目論みます。

しかし、美希は生きていたのです。来迎会という宗教団体の施設に囚われ、そこへ笠井涼子が現れます。

と、このあたりから物語は怒涛のクライマックスへと向かっていきます。笠井涼子と手を組を組む警察官の存在、ペガサスとは一体誰なのか、そして倉木や大杉、美希が迎える結末とは -

※第二話までとは少々趣きが違ってはいますが、相変わらず人がたくさん死んで、結婚したとはいえ、倉木や美希に心休まる日々は訪れません。第三話だけ読んでも十分堪能できますので、ぜひ御一読を!

☆百舌シリーズ書評→『百舌の叫ぶ夜』 『幻の翼』

この本を読んでみてください係数 95/100


☆百舌シリーズ書評→『百舌の叫ぶ夜』 『幻の翼』

◆逢坂 剛

1943年東京都文京区生まれ。

中央大学法学部法律学科卒業。卒業後は、博報堂に勤務しながら執筆活動。約17年後に退職、専業作家となる。

サビーカスのフラメンコギターのレコードを聴いて衝撃を受け、後にスペインに興味を持つようになる。スペインを題材にした小説も数多い。

作品 「カディスの赤い星」「屠殺者よグラナダに死ね」「百舌シリーズ」「岡坂伸策シリーズ」「御茶ノ水警察署シリーズ」「イベリアシリーズ」「禿鷹シリーズ」他多数

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