『緋い猫』(浦賀和宏)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/12 『緋い猫』(浦賀和宏), 作家別(あ行), 書評(あ行), 浦賀和宏

『緋い猫』浦賀 和宏 祥伝社文庫 2016年10月20日初版

17歳の洋子は佐久間という工員の青年と恋に落ちる。だが仲間2名が殺害される事件が起き、犯人と疑われた彼は姿を消す。洋子は佐久間を追って故郷である東北の寒村を訪ねると、かつて東京で彼が飼っていた三毛猫を見つける。村人らは佐久間はいないと口を閉ざし、洋子を監視しはじめた。恋人との再会を信じる洋子を待っていたのは、あまりにも残酷な衝撃の結末だった。(祥伝社文庫)

最初に、「昭和24年」(の話)とあります。この時代背景を見誤ってはなりません。何気に読み始めると今の時代の話かと思いきや、そうではないのです。随分と昔、東京とは遠く離れた青森の、寒村で起こる惨劇だからこそ不気味な、狂気の沙汰が語られます。

常軌を逸した殺戮。そして容赦ない凌辱。- 読むに堪えない残酷な展開や暴力描写について行けず、どうかすると途中で読むのをやめてしまうかもしれません。無いのは人の肉を喰らう、いわゆる「カリバリズム」ぐらいで -(余談ですが)

浦賀和宏という人は、近親相姦、同性愛、カリバリズム、オタク文化や読者など固定層への痛烈な罵倒等、作品のテーマとしてタブーとされている事を扱うことが多いといいます。ことにカリバリズムにはこだわりがあるようです(ウィキペディア参照)-

ミステリーというより、むしろ「バイオレンス・ホラー」とでもいう方が良いような気がします。

出だしの第一章 - 私的にはこの部分は不要に思うのですが - は特にこれといって書くべきことはなく、むしろ取って付けたような前振りで始まっています。物語の主たる舞台は第二章以降になりますので、ここは我慢して読んでください。

第二章で、洋子は佐久間に会いたい一心で、彼の故郷の東北の寒村へとやって来ます。来れば佐久間にすぐにでも会えると思っていたのですが、村の様子は洋子が思い描いていたのとはどうも違うような感じがします。なぜかはわからないのですが、洋子は、何かおかしいと感じます。

村人たちは、何かを隠しているように思えます。洋子が佐久間に会いに来たと言うと、「佐久間はいない」と答えます。(佐久間に)来いと言われて洋子は村へ来ています。なのに、彼はいないと言う。なら、いったい佐久間はどこにいるのか。生きて、無事だろうかと。

この疑問を解くうちに、洋子は段々と村人たちの、特に村の実力者である佐久間の父親の術中に嵌って行くことになります。

第三章から最終第六章にかけては、最初は徐々に、終盤においてはそれこそ怒涛のように、キツくてエグい場面の連続となります。タイトルにある「緋い猫」とは、金属製の檻に入れられた三毛猫が、灯油をかけられ、火だるまになって燃え盛る様子を指しています。

佐久間がかつて東京で一人暮らしをしていた時、彼は一匹の三毛猫を飼っていました。佐久間に会おうと洋子が青森県へ向かい、大湊駅から国鉄バスに乗り、一時間ほど行ったところにある村に降り立ったとき、彼女を最初に出迎えたのも一匹の猫でした。

そのとき洋子は一瞬、佐久間が飼っていたあの三毛猫を思い出します。オレンジと黒の模様がよく似ている。だが、そんなはずがない、と理性が否定します。三毛猫など日本中どこにでもいる。東京と青森で似たような三毛猫を見つけたからといって、何だというのか。

だが、その三毛猫が赤茶色をした首輪をしていることに気付いて、洋子は愕然とした。佐久間が飼っていた猫も、同じ首輪をしていたのだ。

果たして、その二匹の三毛猫は同じ猫なのか。そして、灯油塗れで炎に包まれ、断末魔の悲鳴をあげ続けた末に焼け死んだあの三毛猫は、どうなのか - 。猫は思わぬ形で、最終盤になり、再び洋子の前に姿を現わすことになります。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆浦賀 和宏
1978年神奈川県生まれ。

作品 「記憶の果て」「彼女は存在しない」「ふたりの果て/ハーフウェイ・ハウスの殺人」「眠りの牢獄」「こわれもの」「ファントムの夜明け」他多数

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