『GIVER/復讐の贈与者』(日野草)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2018/06/29
『GIVER/復讐の贈与者』(日野草), 作家別(は行), 日野草, 書評(か行)
『GIVER/復讐の贈与者』日野 草 角川文庫 2016年8月25日初版
雨の降り続く日、訪ねてきた女に俺は仰天する。彼女は数時間前、俺に殺され、浴室で冷たくなっているはずだ - 。過去に負い目を抱えた人々に巧みに迫る、正体不明の復讐代行業者。彼らはある「最終目的」を胸に、恨む人、恨まれる人を予想外の結末に導く。人間の心を丸裸にする、6つの恐るべき復讐計画とは - 。再読必至の新感覚リベンジ・ミステリ! (角川文庫)
これは、ある復讐代行業者の、恐ろしくも切ない軌跡 -『おすすめ文庫王国2017』(本の雑誌社)国内ミステリー部門第1位に輝く、驚きのリベンジ・ミステリ! とあります。
時間を遡るようにして6つの連作があり、最後になって、最初あった(『00 シークエル』と題された)プロローグが如何なる状況で語られているかがわかる仕掛けになっています。(しかも、かなり驚くような顛末を伴って)
魅力という点で言うなら、(筋書きよりむしろ)全編を通じて登場する 「義波」 という名の青年 - 彼のキャラクターにこそ負うところが大きいように思います。
彼は名前を言うとき、「義務の義に波と書いて、義波(ぎば)」「正義の義に波と書いて、義波」、あるいは「仁義」や「忠義」の義に波と書いて義波、といった具合に自己紹介します。
義波 = GIVER(ギバー)。 贈与者。 復讐を与える者として、恨む人、恨まれる人の前に現れては裁きを行う裏稼業、「復讐代行業者」としての仮の名前で、もとより「義波」は当て字であるわけです。
この青年にはおよそ「感情」というものがありません。普通ある感情を失ったかのような平静さでもって事を成します。
「お金で誰かの恨みを晴らしてやる」とは、まさに現代版「必殺仕事人」。動機はともかくも、彼はことさらスマートに事を運びます。極めて非情に思える反面、彼には、ある特別な事情があります。それがもとで、彼は「義波」の仕事を請け負っています。
細かな説明はしないでおきたいと思います。この手の本については、なるべくなら、何も知らない状態で読んだ方がいい。そう思うからです。
他人が面白いというから必ず面白いのかというと、そんなことはありません。逆に、あまり評判のよくない本を読んで、とても面白いと感じることがあります。ミステリーやホラーといった類いの本は、特にそうなのではないかと思います。
それぞれ、こんなにも感じ方は違うのかと、あとからよく思うことがあるからです。ですから、とにかく読んでみてください。とだけ言っておきましょう。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆日野 草
1977年東京都生まれ。
作品 「ワナビー」「BABEL」「恋愛採集士」「ウェディング・マン」など
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