『雨の夜、夜行列車に』(赤川次郎)_書評という名の読書感想文

『雨の夜、夜行列車に』赤川 次郎 角川文庫 2017年1月25日初版


雨の夜、夜行列車に (角川文庫)

「今夜、九時の列車よ - 」組織の金を盗んで命を狙われている逃走中の宮部は、自宅で彼を待ち続けている妻の亜紀子と、夜行列車で落ち合う約束をしていた。しかしその列車には、宮部を逮捕しようとする刑事たち、地方へ講演に出かける元大臣とその秘書、自殺しそうな元サラリーマンと駆け落ちしようとしている元部下など、各々の幸せを掴むための人たちが、乗り込もうとしていた。彼らを待ち受ける衝撃の結末とは - 。(角川文庫)

何を血迷ったのか(!?)、普段は決して買わない本を買いました。ある朝新聞を開くと角川文庫の新刊を紹介する欄があり、いつもは気にもとめないでいるものがその時はどういうわけか目にとまり、何気に読んでみたいと思ったのだからしょうがない。

最後に読んだのは、おそらく40年近く前のことになります。私にとっては若かりし頃の懐かしい作家で、当時、私よりむしろよく読んでいたのはその頃私が付き合っていた彼女の方、今は私の妻であったように思います。

久しぶりに読んだ感想はといえば - やっぱり、軽い。そして、薄い。コーヒーでいうと、“アメリカン”を飲んでいるような。薄味で重くないので何杯でも飲めてしまうような、そんな感じがします。

よくよく読めば、(登場人物らの)状況はかなりシリアスに思えるのですが、深刻さであるとか、追い詰められた感というのが、(昔読んだときと何も変わらず)まるで希薄であるのを(ある意味)脅威に感じてしまうのは私ばかりのことなのでしょうか。

何を置いても読みたいとは思わない代わりに、あれば(気楽に読めるだけに)つい読んでしまう。読めば読んだですらすら読めて、あっという間に読んでしまえる。

後を引かない。あっけないといえばあっけないのですが、時と場合によってはそれが大いに役立つことがあります。手持ち無沙汰でいるとき、深刻な話などとても読む気にならないときには、もってこいの本なのでしょう。

でなければ - 執筆作品は580冊を超え、著作の累計発行部数が3億3,000万部(いずれも2015年時点)- になんてなろうはずがありません。日本人作家で唯一人、赤川次郎だけが成し得た、これは驚くべき数字なのです。

軽いからといって、決して軽んじてはなりません。読む読まないはあくまでも人の好みで、自分が読まないことを良いことに、読んでいる人を見て、「ああ、あんなものしか読んでないのか」などと、莫迦にするようなことがあってはならないのです。

いつもは忘れているけれど、ある時、それは無性に食べたくなることがあります。一気に一袋も食べると大いに満足し、当分は食べなくてよくなります。しかしまたある人にとっては必要不可欠な食べ物で、手元にないと安心していられない、そんなことであったりします。

決して高価でもなく、一番の贅沢ともいえない。手を伸ばせばそこにあり、誰もが食することができる至極お手ごろなスナック菓子 - 赤川次郎が書くミステリーは、私には、どこかあの“ポテチ”に似ているように思えるのですが、さてどうなんでしょう???

 

この本を読んでみてください係数 80/100


雨の夜、夜行列車に (角川文庫)

 

◆赤川 次郎
1948年福岡県生まれ。
桐朋高等学校卒業。

作品 「幽霊列車」「三毛猫ホームズ」シリーズ、「天使と悪魔」シリーズ、「鼠」シリーズ、「ふたり」「怪談人恋坂」「記念写真」他多数

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