『男ともだち』(千早茜)_書評という名の読書感想文

『男ともだち』千早 茜 文春文庫 2017年3月10日第一刷


男ともだち (文春文庫)

29歳のイラストレーター神名葵は関係の冷めた恋人・彰人と同棲をしながらも、身勝手な愛人・真司との逢瀬を重ねていた。仕事は順調だが、ほんとうに描きたかったことを見失っているところに、大学の先輩だったハセオから電話がかかる。七年ぶりの彼との再会で、停滞していた神名の生活に変化が訪れる - 。解説・村山由佳(文春文庫)

本作『男ともだち』が文芸誌に連載され始めた当時、業界は静かにどよめき、括目しつつ次号を待ち望んだ。単行本は発売されるとたちまちベストセラーになり、やがて大きな文学賞(第151回直木賞)の候補にも挙がった。

読者からの感想、それに選考委員の評においても、主人公の言動(というより行動原理)を受け入れられるのかどうかと並んで、ハセオという男ともだちの〈リアリティ〉がずいぶんと取り沙汰されたものだ。(解説より抜粋)

- と、(興味深くはあるものの)いささか面倒な話だというのがわかります。

まずは、ある意味男として理想的な人物として描かれている(であろう)- 長谷雄(ハセオ)という人物について

- そんな奴がいるわけない。いたら、そいつは本当にどうかしている。好きでもない女のために何でそこまで親身になれるのか。何があっても神名 - 大学時代からの知り合いで、男女の関係を抜きにしてハセオが常に気をかけ続ける主人公の女性 - を守り続ける意味がわかりません。

抱く必要がないから抱かない?

よくもそんなことをぬけぬけと。抱きたいと思うとき、普通男は、必要かどうかなどとは考えもしません。百歩譲って、万に一人くらいはいるのかもしれないけれど、それはあくまで例外で、奇跡みたいに扱ってはならないと思うのですが。

次に、見方を変えればとんでもなく無節操で、だらしなくも感じる - 神名(かんな)という女性について

- 一切合切を引受けて、何も求めない。誰よりも安堵し、時に添い寝までするハセオをして、愛していないとはどういうことなのでしょう。なぜ、セックスなしの関係にそこまで拘るのか。「誰とでもやれる」と言いながら、ハセオとだけはやれない理由がわかりません。

まさか、ハセオがしたくないから、自分からはしないとでも決めているのでしょうか。では、同居人の彰人とは、不倫相手の真司とはどうなのですか? 気分次第で誰とでも寝る貴女にとって、ハセオとは一体何なのですか。夢に出てくる、ただの幻想ではないのですか。

- とまぁ、こんな感じなわけです。

神名は、長谷雄のことをハセオと、苗字で呼びます。ハセオも、彼女を名前で呼ばずに、神名(かんな)と呼びます。それは知り合った大学の頃からそうで、30歳になる今も変わらず、二人は互いをそう呼び合います。

神名は、ハセオとの関係を人に訊かれると「男ともだち」だと答えます。何だかちょっとずるい言い方にも思えますが、神名にとってハセオは、そうとしか他に呼び様のない存在で、知り合った当初から、今もずっとその関係は変わることなく続いています。

※イラストレーターとして一応の成功を収めている神名は、それより上の高みを目指して不断の努力をしています。ハセオと再会し、神名は、自分が本当に望んでいるのは彰人の優しさや真司の強さではなく、ハセオがハセオとして、傍にいることだと気付きます。

 

この本を読んでみてください係数  85/100


男ともだち (文春文庫)

◆千早 茜
1979年北海道江別市生まれ。
立命館大学文学部人文総合インスティテュート卒業。

作品 「魚神」「からまる」「桜の首飾り」「あとかた」「眠りの庭」「森の家」「おとぎのかけら 新釈西洋童話集」他

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