『リバース』(湊かなえ)_書評という名の読書感想文

『リバース』湊 かなえ 講談社文庫 2017年3月15日第一刷


リバース (講談社文庫)

深瀬和久は平凡なサラリーマン。自宅の近所にある〈クローバー・コーヒー〉に通うことが唯一の楽しみだ。そんな穏やかな生活が、越智美穂子との出会いにより華やぎ始める。ある日、彼女のもとへ『深瀬和久は人殺しだ』と書かれた告発文が届く。深瀬は懊悩する。遂にあのことを打ち明ける時がきたのか - と。(講談社文庫)

4月からTBSでドラマになるらしい。作品の出来はともかくも、作る側からすると大層難儀な仕事なんだろうな、とそんな感じがします。

ネットには大々的な番宣があり、(興味のある方なら)凡そはご存じなのではないでしょうか。ですから、(あらすじを追うのではなく)読んだ印象だけを書いておこうと思います。

当たり前のことですが、この手の本は読み切ってこそナンボ、であるわけです。正直に言うと、中盤あたりまでは「ワクワク」も「ドキドキ」もしません。むしろ平坦で、偏がない。(偏がない:起伏がなくてつまらないという意味)

さすがに最後になって - ああ、そうくるか!! - なのですが、断っておきますが、(感心こそすれ)泣いてしまうであるとか、ひどく感動するというわけではありません。

ドラマにおいては、随所に心理的な葛藤や駆け引きのようなものが描かれるのでしょうが、下手をすると、理屈ばかりのまどろっこしい画になってしまうのではないかと。(余計なことですが)そんな心配をしています。

ただこの小説にはちょっと変わった、ある「事情」があります。それが、(やや大袈裟ではありますが)文庫の帯に書いてあります。それを紹介しておきたいと思います。読んで興味が湧けば、試しに、読んでみてください。

かくも本書が「ミステリー」であるのは、その異例な成立事情に因る。というのも、まず版元である講談社の編集部からある〈お題〉が出され、それに応える形で書き出された作品だからだ。

小説本編より先に「解説」に目をとおされている読者もいるだろうから詳しく言えないが、その〈お題〉はこの小説の「最後の一行」をほとんど既定し、極めてアクロバティックな筆さばきが要求されるものである。- 佳多山大地(解説より)

いかがですか? 物語が書かれる以前に、すでに〈リバース〉しているわけです。

 

この本を読んでみてください係数  80/100


リバース (講談社文庫)

◆湊 かなえ
1973年広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ。
武庫川女子大学家政学部卒業。

作品 「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「望郷」「往復書簡」「境遇」「サファイア」「母性」「絶唱」「ユートピア」他多数

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