『八月の御所グラウンド』 (万城目学)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2026/09/10
『八月の御所グラウンド』 (万城目学), 万城目学, 作家別(ま行), 書評(は行)
『八月の御所グラウンド』 万城目 学 文春文庫 2026年8月10日 第1刷
第170回 直木賞受賞作

送り火の季節。奇跡のような野球をした。決して出会うはずのない人と、俺たちはボールを追った。忘れられない京都のひと夏を描く、傑作青春小説。
八月の京都の暑さに勝てる者などいない。恋人にフラれ、灼熱の京都に取り残された俺は、友人からの借金のカタに野球大会に参加する羽目に。留学生や見知らぬ青年が加わった寄せ集めチームのはずが、そこへ信じがたい仮説が立てられ - 。送り火の季節の出会いを描いた表題作を含む二編を収録した直木賞受賞作。 (文春文庫)
目 次
十二月の都大路上下 (カケ) ル
八月の御所グラウンド
行間に漂う空気を含め、すべてが “京都“ というほかありません。そして、(二作共に) この著者ならではの、京都でしかあり得ない仕掛けが施してあります。京都の町をよくは知らないという人は、遠い昔に思いを馳せ、叶うなら、一度京都へ行ってみたいときっと思うはずです。
あぁ、これは京都だからこその物語だ。読み終えてつよくそう思う。十二月、雪の都大路と、八月、猛暑の御所グラウンド。方や陸上部の女子高校生、方や失恋で傷心の大学生。主人公も読み口も異なる二編を繋いでいるのは、京都という町だ。
駅伝大会前日に急遽レースの最終区走者としてエントリーされることになった坂東。無類の方向音痴である彼女は、吹雪のレース中、案の定コースを外れそうになるのだが・・・・・・・(「十二月の都大路上下 (カケ) ル」)。
彼女にフラれた痛手から、「丸ごと地獄の釜」 となったような京都で一人、就活さえも諦めて自堕落に過ごしていた大学四回生・朽木は、高校からの友人・多聞から、借金のかたとして、強制的に草野球の大会に駆り出されることに・・・・・・・(「八月の御所グラウンド」)。
どちらの短編にも “不思議“ が起こる。そして、そのことがきっかけとなり、主人公が成長する。青春小説の王道の構えで描かれる物語だが、本書の魅力はそれだけではない。
とりわけ、人数が揃わない朽木たちのチームに、助っ人としてふらりと登場する人物たち。彼らの背景が、メインで描かれる物語とあいまって、読者の胸にじわじわと沁みてくる。
無気力の塊のようになっていた朽木と、要領の良さだけで、世の中を渡ってきたような多聞。この二人が、物語のラストで語り合うシーンが素晴らしいのは、彼らのドラマがあってこそのものだ。
「なぁ、朽木。俺たち、ちゃんと生きてるか? 」
京都五山の送り火を眺めながら、静かに問いかけた多聞のこの言葉は、読み手である私たちにもそのまま向かってきて、背筋が伸びる。
作者にとって、京都を舞台にした青春小説は、ホルモー・シリーズ以来16年ぶり。今を生きる命への、しなやかなエールにもなっている本書が、第170回直木賞受賞作となったことを寿ぎたい。(吉田伸子 「好書好日」 より/朝日新聞 2024年2月3日掲載)
※二作それぞれに、主人公は 「決して出会うはずのない人」 に出会うことになります。駅伝大会の最中に、そして足りないメンバーの代役として草野球の試合で。駅伝の舞台は言わずと知れた都大路。野球は御所にあるグラウンド。真冬と真夏の京都の町で、とんでもないことが起こります。
この本を読んでみてください係数 90/100

◆万城目 学
1976年大阪府生まれ。
京都大学法学部卒業。
2006年、第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞した 『鴨川ホルモー』 でデビュー。『鹿男あをによし』 『プリンセス・トヨトミ』 『偉大なる、しゅららぼん』 『バベル九朔』 など、著作の多くがテレビドラマ化、映画化されている。2024年、『八月の御所グラウンド』 で第170回直木賞を受賞。他の著書に 『ホルモー六景』 『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』 『悟浄出立』 『パーマネント神喜劇』 『ヒトコブラクダ層戦争』 『あの子とQ』 『六月のぶりぶりぎっちょう』 『ホルモー燦燦』 など。
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