『君の膵臓をたべたい』(住野よる)_書評という名の読書感想文

『君の膵臓をたべたい』住野 よる 双葉社 2015年6月21日第一刷


君の膵臓をたべたい

主人公である「僕」が病院で偶然拾った1冊の「共病文庫」というタイトルの文庫本。それは「僕」のクラスメイトである山内桜良(やまうちさくら)が綴っていた、秘密の日記帳であり、彼女の余命が膵臓の病気により、もう長くはないことが記されていた。

「僕」はその本の中身を興味本位で覗いたことにより、身内以外で唯一桜良の病気を知る人物となる。(wikipediaより)

それがきっかけで、二人は付き合うようになります。が、互いがよくてそうなったのかというと、そうではありません。「僕」に言わせれば、それは半ば強制的に始まった関係で、彼女にすれば、死に逝く自分が出会ったちょうど〈手頃なパートナー〉ほどの意味だったのです。
・・・・・・・・・
著者のデビュー作にして、涙なくして読めない感動の青春小説。略して「キミスイ」と言うらしい。昨年の年間ベストセラーの第1位を獲得し、夏には映画にもなるらしい。既に70万部を超えて売れており、今更感があるにはあるのですが、遅まきながら読んでみようと思いました。

で、感想はと言いますと、私が言うより、本屋に行き、帯の裏側にある「絶賛の声」を読んでみてください。いわく -

・「うわははっ」と笑うヒロインの声が、夏の空色とともに私の心に鮮やかに残っています。(20代 男性)
・共感しやすさといったら私が最近読んだ現代小説では群を抜いています。(30代 女性)
・切なくって切なくって・・・・とびきりのラストシーンとたくさんの胸キュンを、ありがとう。(30代 女性)
・3回読みました。50過ぎのおっさんをその度に泣かせる青春小説がかつてあっただろうか。(50代 男性)
・すごいよ、このタイトル。すごいよ、ファーストインパクトありすぎでしょ。なんていいタイトルなんだろう。思いの全てが込められているじゃないか。(40代 女性)

- とまあ、称賛と感動の嵐、また嵐、なわけです。そして下に太字で、

読後、きっとこのタイトルに涙する - とあります。

いつまで経っても、二人はまるで背中合わせのような関係が続きます。「僕」は桜良のことを「桜良」と名前で呼べず、桜良は桜良で、「僕」の都合や考えなどは一切気に留めようとしません。

死ぬまでにやっておきたいことがあり、「僕」に向かってそれに付き合えと言います。焼肉やスィーツの食べ放題に連れて行かれ、(当たり前に日帰りだと思っていたら)あろうことか、一泊旅行へ行くことになります。

桜良の予約したホテルの手違いで、二人は一つの部屋に泊まることになります。最初「僕」は違うホテルへ行くと言うのですが、桜良は一緒に泊まろうと言います。結果、二人は同じベッドで眠るのですが、言葉通りに、何もないまま朝を迎えます。

その時、「僕」にはまだ経験も覚悟もなく、その上、桜良に対して淫らな感情を持つ自分を認められないでいます。桜良という人間は自分にとって何者でもない、何があって自分が選ばれてここにいるのか。それが「僕」には、皆目見当が付かないでいます。
・・・・・・・・・
ここから先については、どうか御自身で確かめてみてください。若い方は今の自分と照らし合わせて、もう若くはない私みたいな方ならあの頃を思い出しながら、女性なら桜良という女の子に、男性なら「僕」になったつもりで読んでみてください。

きっと、胸の痛む瞬間があると思います。いじらしさや健気さに涙するかもしれません。それは噂通りで、あれやこれやをとやかく言う前に、ともかく一度読んでみてはどうかと。

※ ちなみに。どうでもいいことですが「住野よる」はペンネームで、本人曰く結構〈おっさんおっさん〉した大阪在住の男性とのことです。これにはちょっと驚きました。

 

この本を読んでみてください係数 85/100


君の膵臓をたべたい

◆住野 よる
1990年生まれの27歳(らしい)。大阪府在住。男性。

作品 「また、同じ夢を見ていた」「よるのばけもの」「か「」く「」し「」ご「」と「」など

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