『鳥の会議』(山下澄人)_書評という名の読書感想文

『鳥の会議』山下 澄人 河出文庫 2017年3月30日初版


鳥の会議 (河出文庫 や)

ぼくと神永、三上、長田はいつも一緒だ。ぼくがまさしにどつかれて左目を腫らしたと知ると、神永たちは仕返しにゲーセンに向かい、教師や先輩からの理不尽には暴力で反抗する毎日。ある晩、酔った親父の乱暴にカッとなった神永は、台所に二本あった包丁を握る。「お前にやられるなら本望や」そう言い放つ親父を、神永は刺すのだが・・・・。痛みと苦味のなかで輝く少年たちの群像。(河出文庫)

鳥の会議
何気に読むと、酷い目に遭います。直に刺されてひりひりするような。読むより前に思い知れと。そう言われているような感じがします。

読んで済むと思うなら読まなくていい、どうせわかるはずもないのだからと。お前なんかのために書いたわけではないのだと、怒られているような気がします。

(書いてある)おおよそはわからぬわけではないですが、それでは足りない。

自分を誇示する手段が暴力だけで、(馬鹿で勉強もしないので)思いを伝えるための言葉がうまく口から出てこない。たまに言えても、今度は聞いた相手に伝わらない。互いがそうなので、会話は細切れて単語の応酬みたいになり、大抵最後は喧嘩腰で終わります。

彼らと彼らが敵対するグループがあるのですが、彼らの家は一様に貧乏で、概して依るべき家族がいません。あるべき家族が、家族としての態を成していません。子に劣らず乱暴で、そもそもの素養が欠落しています。彼らも、そこを頼ろうとしません。

普通に読むと、出口さえないように感じられます。故に、普通に読んだだけでは不都合なのでしょう。普通になど読めるはずがないのですが、それでも読んでみようと思うなら覚悟が必要です。こんな小説を書く人を、私はこの人以外知りません。

悲しみのなかを漂う優しさには暴力の気配がたちこめる。読者の魂に素手で触れてくるような小説である。

私は魂が振れた。- 町田康(小説家)

 

この本を読んでみてください係数 85/100


鳥の会議 (河出文庫 や)

◆山下 澄人
1966年兵庫県神戸市生まれ。
神戸市立神戸商業高等学校(現六甲アイランド高等学校)卒業。倉本聰の富良野塾二期生。

作品 「緑のさる」「砂漠ダンス」「ルンタ」「ギッちょん」「しんせかい」他

関連記事

『夜の木の下で』(湯本香樹実)_書評という名の読書感想文

『夜の木の下で』湯本 香樹実 新潮文庫 2017年11月1日発行 夜の木の下で (新潮文庫)

記事を読む

『子供の領分』(吉行淳之介)_書評という名の読書感想文

『子供の領分』吉行 淳之介 番町書房 1975年12月1日初版 子供の領分 (集英社文庫) 吉行

記事を読む

『どろにやいと』(戌井昭人)_書評という名の読書感想文

『どろにやいと』戌井 昭人 講談社 2014年8月25日第一刷 どろにやいと  

記事を読む

『だれかのいとしいひと』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『だれかのいとしいひと』角田 光代 文春文庫 2004年5月10日第一刷 だれかのいとしいひと

記事を読む

『森は知っている』(吉田修一)_噂の 『太陽は動かない』 の前日譚

『森は知っている』吉田 修一 幻冬舎文庫 2017年8月5日初版 森は知っている (幻冬舎文

記事を読む

『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』山田 詠美 幻冬社 2013年2月25日第一刷

記事を読む

『つむじ風食堂の夜』(吉田篤弘)_書評という名の読書感想文

『つむじ風食堂の夜』吉田 篤弘 ちくま文庫 2005年11月10日第一刷 つむじ風食堂の夜 (

記事を読む

『美しい距離』(山崎ナオコーラ)_この作品に心の芥川賞を(豊崎由美)

『美しい距離』山崎 ナオコーラ 文春文庫 2020年1月10日第1刷 美しい距離 (文春文庫

記事を読む

『パリ行ったことないの』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『パリ行ったことないの』山内 マリコ 集英社文庫 2017年4月25日第一刷 パリ行ったことな

記事を読む

『たそがれどきに見つけたもの』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『たそがれどきに見つけたもの』朝倉 かすみ 講談社文庫 2019年10月16日第1刷 たそが

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『人間タワー』(朝比奈あすか)_書評という名の読書感想文

『人間タワー』朝比奈 あすか 文春文庫 2020年11月10日第1刷

『かか』(宇佐見りん)_書評という名の読書感想文

『かか』宇佐見 りん 河出書房新社 2019年11月30日初版

『希望病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『希望病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2020年11月11日初版

『JR上野駅公園口』(柳美里)_書評という名の読書感想文

『JR上野駅公園口』柳 美里 河出文庫 2017年2月20日初版

『裏アカ』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『裏アカ』大石 圭 徳間文庫 2020年5月15日初刷 裏アカ

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑