『片想い』(東野圭吾)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/11
『片想い』(東野圭吾), 作家別(は行), 書評(か行), 東野圭吾
『片想い』東野 圭吾 文春文庫 2004年8月10日第一刷
十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが・・・・・・。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。(文春文庫)
ドラマ化決定! 主演 中谷美紀 WOWOWにて全6話放送 予定は2017年秋!!
- ということで久方ぶりに東野圭吾のミステリーを読みました。文庫で614ページあります。途中で飽きるかも・・・・と思いながら読み出したのですが、なんのなんの、読むとやっぱり面白い。読み易く、いくら読んでも疲れません。
後半はちょっとごちゃごちゃして分かりづらいところがあるかもしれません。でも、大丈夫。よくよく読むと、その「ややこしさ」こそがこの小説の核心であるのがわかります。
いつも思うのですが、この人の本は決して期待を裏切りません。常に、普通に面白い。面白いには違いないのですが、(最近はちょっと)普通に過ぎるように感じられ、以前ほどには読みたいと思わなくなっています。
若い頃にはよく読んでいました。おそらく本棚にはこの人の本が50冊近くはあると思います。それだけ読んで言うのもナンですが、私にとって東野圭吾は「特に読みたいと思うものがない」ときに買う本で、それ以上でも以下でもなく、今もそれは変わりません。
20歳の頃からの習慣で、今でも私は週に二回は本屋へ行きます。学生の頃は(お金がないので)もっぱら文庫本、就職して自由なお金ができてからは(それまでの鬱憤を晴らすように)一転して単行本(できる限り初版のもの)ばかりを買うようになりました。
行くと、必ず何かは買います。基本、買わずに帰ることはありません。平均して2冊は買っていたと思います。当然ですが、行く度々に好きな作家の読みたい本が都合よくあるわけではありません。週に二回も行けば、本の並びにほとんど変化はありません。
中に新刊があるにはあっても、読みたいと思う本とは限りません。それでも、何かは買って帰りたい。そんな時私は、それまでは今ひとつ買う気になれなかったもの、そんな時でもないとまず買わないようなものの中から無理に選んで何冊かを買います。
新書や評論、ノンフィクションなどを含め、そんな時私は東野圭吾の本を買います。迷うことは迷いながら、まことに失礼な動機ではありますが、「まあいいか」という感じでこの人の本を買います。
私にとって東野圭吾の本は、いわば「代打」の一番手みたいなものです。何を喰うかが定まらない昼食時、思いあぐねて、結局いつも行く定食屋へ行き、なれた「日替わりメニュー」を喰うようなものなのです。
そうそう。話は変わりますが、そういえば今朝、Yahooニュースにこんな記事が載っていました。(7/18 5:28掲載)
性同一性障害を公表していた元WBC女子フライ級王者の真道ゴー(30)=グリーンツダ=が、性別適合手術と戸籍変更を終えて男性となり、7年間交際した一般女性・あゆかさん(33)と結婚することが17日、分かった。今月上旬に挙式を済ませ、真道の誕生日の18日に婚姻届を提出する。体が男性となった真道は、近日中に日本ボクシングコミッション(JBC)へ引退届を提出する。(スポーツ報知)
こういった記事が当たり前のようになった今、改めて、この本がドラマになるのがわかるような気がします。
※この小説の単行本は2001年3月30日、文藝春秋から刊行されています。私は、その初版本を買っています。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆東野 圭吾
1958年大阪府大阪市生野区生まれ。
大阪府立大学工学部電気工学科卒業。
作品 「放課後」「秘密」「容疑者Xの献身」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「夢幻花」「祈りの幕が下りる時」「白夜行」他多数
関連記事
-
-
『螻蛄(けら)』(黒川博行)_書評という名の読書感想文
『螻蛄(けら)』黒川 博行 新潮社 2009年7月25日発行 信者500万人を擁する伝法宗慧教
-
-
『絶叫委員会』(穂村弘)_書評という名の読書感想文
『絶叫委員会』穂村 弘 ちくま文庫 2013年6月10日第一刷 「名言集・1 」 「俺、砂糖入れ
-
-
『昭和の犬』(姫野カオルコ)_書評という名の読書感想文
『昭和の犬』姫野 カオルコ 幻冬舎文庫 2015年12月5日初版 昭和三十三年滋賀県に生まれた
-
-
『カエルの楽園 2020』(百田尚樹)_書評という名の読書感想文
『カエルの楽園 2020』百田 尚樹 新潮文庫 2020年6月10日発行 コロナ禍
-
-
『学問』(山田詠美)_書評という名の読書感想文
『学問』山田 詠美 新潮文庫 2014年3月1日発行 私はこの作家が書く未成年たちを無条件に信頼
-
-
『検事の信義』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文
『検事の信義』柚月 裕子 角川書店 2019年4月20日初版 累計40万部突破 「佐
-
-
『薬指の標本』(小川洋子)_書評という名の読書感想文
『薬指の標本』小川 洋子 新潮文庫 2021年11月10日31刷 楽譜に書かれた音
-
-
『陰日向に咲く』(劇団ひとり)_書評という名の読書感想文
『陰日向に咲く』劇団ひとり 幻冬舎文庫 2008年8月10日初版発行 この本が出版されたのは、も
-
-
『神の悪手』(芦沢央)_書評という名の読書感想文
『神の悪手』芦沢 央 新潮文庫 2024年6月1日 発行 このどんでん返しが切なすぎる!!
-
-
『草にすわる』(白石一文)_書評という名の読書感想文
『草にすわる』白石 一文 文春文庫 2021年1月10日第1刷 一度倒れた人間が、