『人生相談。』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文
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『人生相談。』(真梨幸子), 作家別(ま行), 書評(さ行), 真梨幸子
『人生相談。』真梨 幸子 講談社文庫 2017年7月14日第一刷
父が遺してくれた家に、見知らぬ家族が住み着いた。しかも我が物顔で。「居候の女性が出て行ってくれません」。悩める十六歳から大洋新聞の「よろず相談室」に届いた一通の人生相談。掲載された回答から導かれた予想外の悲劇とは。投書される誰にでも起こりうる身近な事件が、大きな殺意に繋がっていく。(講談社文庫)
大洋新聞に掲載されている「よろず相談室」には、老若男女から日々さまざまな相談が寄せられています。
「居候に悩んでいます」- 自分たちの家に居候が住んでいて、あるとき主従が逆転してしまった。このままでは居候たちに追い出されてしまう!
「しつこいお客に困っています」- 同僚に生理的に嫌なお客を押しつけられて困っているのだけれど・・・・・・・。
「隣の人がうるさくて、ノイローゼになりそうです」- 25年住んでいる賃貸の部屋。今までは何もなかったのに、隣から急に壁をたたかれるようになり、生活もままならなくなってきたのですが・・・・・・・。
「セクハラに時効はありますか」- 14年前、残業後、8歳年下の後輩に思わず抱きつき、そのまま最後まで・・・・・・・。部長への昇進にあたっての、審査で、この点だけ気になっています。
「大金を拾いました。どうしたらいいでしょうか」- 家の裏の雑木林で見つけたゴミ袋。その中には札束が! 持ち帰って1年そのままなのですがどうしたらよいのでしょうか。
「西城秀樹が好きでたまりません」-「傷だらけのローラ」は私のことを歌っているんです! 秀樹が呼んでいる! どうしたら秀樹に会えますでしょうか。秀樹に会わせてください!
「口座からお金を勝手に引き出されました」- 1500万円ほどの蓄えがあったのですが、どうやら夫が勝手に引き出したようです。これって窃盗にあたりますか?
「占いは当たりますか? 」- 来年、結婚する予定です。祖父母が心酔している占い師に、この結婚は不吉だと言われたと告げられて。そのうち、私も不安になってきたのですが。(「小説現代」ホームページより)
この小説は、これら一見何の繋がりもない、中にバカバカしくも思える8件(実は最後にさらに1件)の「人生相談」で構成されています。
あるといえば、よくあるパターン。で、つまりは、
一見何の関連性もない人生相談の数々。
ところがこの相談の裏には衝撃の事件が隠されていた! - という流れ。
飽きはしないのですが、何せややこしい。読むと、そのうち段々と誰が誰だかわからなくなってきます。誰の、何のことを言っているのか。前の話とこれとは、どこで繋がっているのか。正しく理解できないでいると、その分興味が削がれ、読む気が半減します。
楽しく読むためのヒントを少し。
人は、ひとつの名前(=本名)で生きているとは限りません。それと、(著者の仕掛けた罠に気付くためにも)できれば「相関図」を作ることをお勧めします。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆真梨 幸子
1964年宮崎県生まれ。
多摩芸術学園映画科(現、多摩芸術大学映像演劇学科)卒業。
作品 「孤虫症」「えんじ色心中」「殺人鬼フジコの衝動」「深く深く、砂に埋めて」「女ともだち」「あの女」「みんな邪魔」「お引っ越し」他多数
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