『人生相談。』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/11 『人生相談。』(真梨幸子), 作家別(ま行), 書評(さ行), 真梨幸子

『人生相談。』真梨 幸子 講談社文庫 2017年7月14日第一刷

父が遺してくれた家に、見知らぬ家族が住み着いた。しかも我が物顔で。「居候の女性が出て行ってくれません」。悩める十六歳から大洋新聞の「よろず相談室」に届いた一通の人生相談。掲載された回答から導かれた予想外の悲劇とは。投書される誰にでも起こりうる身近な事件が、大きな殺意に繋がっていく。(講談社文庫)

大洋新聞に掲載されている「よろず相談室」には、老若男女から日々さまざまな相談が寄せられています。

居候に悩んでいます」- 自分たちの家に居候が住んでいて、あるとき主従が逆転してしまった。このままでは居候たちに追い出されてしまう!
しつこいお客に困っています」- 同僚に生理的に嫌なお客を押しつけられて困っているのだけれど・・・・・・・。
隣の人がうるさくて、ノイローゼになりそうです」- 25年住んでいる賃貸の部屋。今までは何もなかったのに、隣から急に壁をたたかれるようになり、生活もままならなくなってきたのですが・・・・・・・。
セクハラに時効はありますか」- 14年前、残業後、8歳年下の後輩に思わず抱きつき、そのまま最後まで・・・・・・・。部長への昇進にあたっての、審査で、この点だけ気になっています。
大金を拾いました。どうしたらいいでしょうか」- 家の裏の雑木林で見つけたゴミ袋。その中には札束が! 持ち帰って1年そのままなのですがどうしたらよいのでしょうか。
西城秀樹が好きでたまりません」-「傷だらけのローラ」は私のことを歌っているんです! 秀樹が呼んでいる! どうしたら秀樹に会えますでしょうか。秀樹に会わせてください!
口座からお金を勝手に引き出されました」- 1500万円ほどの蓄えがあったのですが、どうやら夫が勝手に引き出したようです。これって窃盗にあたりますか?
占いは当たりますか? 」- 来年、結婚する予定です。祖父母が心酔している占い師に、この結婚は不吉だと言われたと告げられて。そのうち、私も不安になってきたのですが。(「小説現代」ホームページより)

この小説は、これら一見何の繋がりもない、中にバカバカしくも思える8件(実は最後にさらに1件)の「人生相談」で構成されています。

あるといえば、よくあるパターン。で、つまりは、

一見何の関連性もない人生相談の数々。
ところがこの相談の裏には衝撃の事件が隠されていた! - という流れ。

飽きはしないのですが、何せややこしい。読むと、そのうち段々と誰が誰だかわからなくなってきます。誰の、何のことを言っているのか。前の話とこれとは、どこで繋がっているのか。正しく理解できないでいると、その分興味が削がれ、読む気が半減します。

楽しく読むためのヒントを少し。

人は、ひとつの名前(=本名)で生きているとは限りません。それと、(著者の仕掛けた罠に気付くためにも)できれば「相関図」を作ることをお勧めします。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆真梨 幸子
1964年宮崎県生まれ。
多摩芸術学園映画科(現、多摩芸術大学映像演劇学科)卒業。

作品 「孤虫症」「えんじ色心中」「殺人鬼フジコの衝動」「深く深く、砂に埋めて」「女ともだち」「あの女」「みんな邪魔」「お引っ越し」他多数

関連記事

『静かな雨』(宮下奈都)_書評という名の読書感想文

『静かな雨』宮下 奈都 文春文庫 2019年6月10日第1刷 行助は美味しいたいや

記事を読む

『最後の記憶 〈新装版〉』(望月諒子)_書評という名の読書感想文

『最後の記憶 〈新装版〉』望月 諒子 徳間文庫 2023年2月15日初刷 本当に怖

記事を読む

『誰かが足りない』(宮下奈都)_書評という名の読書感想文

『誰かが足りない』宮下 奈都 双葉文庫 2014年10月19日第一刷 優しい - 「優しくて、し

記事を読む

『しろいろの街の、その骨の体温の』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『しろいろの街の、その骨の体温の』村田 沙耶香 朝日文庫 2015年7月30日第一刷 クラスでは目

記事を読む

『セイレーンの懺悔』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『セイレーンの懺悔』中山 七里 小学館文庫 2020年8月10日初版 不祥事で番組

記事を読む

『小説 ドラマ恐怖新聞』(原作:つのだじろう 脚本:高山直也 シリーズ構成:乙一 ノベライズ:八坂圭)_書評という名の読書感想文

『小説 ドラマ恐怖新聞』原作:つのだじろう 脚本:高山直也 シリーズ構成:乙一 ノベライズ:八坂圭

記事を読む

『いけない』(道尾秀介)_書評という名の読書感想文

『いけない』道尾 秀介 文春文庫 2022年8月10日第1刷 ★ラスト1ページです

記事を読む

『自転しながら公転する』(山本文緒)_書評という名の読書感想文

『自転しながら公転する』山本 文緒 新潮文庫 2022年11月1日発行 第16回

記事を読む

『風に舞いあがるビニールシート』(森絵都)_書評という名の読書感想文

『風に舞いあがるビニールシート』森 絵都 文春文庫 2009年4月10日第一刷 第135回直木賞受

記事を読む

『せんせい。』(重松清)_書評という名の読書感想文

『せんせい。』重松 清 新潮文庫 2023年3月25日13刷 最泣王・重松清が描く

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『朱色の化身』(塩田武士)_書評という名の読書感想文

『朱色の化身』塩田 武士 講談社文庫 2024年2月15日第1刷発行

『あなたが殺したのは誰』(まさきとしか)_書評という名の読書感想文

『あなたが殺したのは誰』まさき としか 小学館文庫 2024年2月1

『ある行旅死亡人の物語』(共同通信大阪社会部 武田惇志 伊藤亜衣)_書評という名の読書感想文

『ある行旅死亡人の物語』共同通信大阪社会部 武田惇志 伊藤亜衣 毎日

『アンソーシャル ディスタンス』(金原ひとみ)_書評という名の読書感想文

『アンソーシャル ディスタンス』金原 ひとみ 新潮文庫 2024年2

『十七八より』(乗代雄介)_書評という名の読書感想文

『十七八より』乗代 雄介 講談社文庫 2022年1月14日 第1刷発

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑