『春の庭』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『春の庭』柴崎 友香 文春文庫 2017年4月10日第一刷


春の庭 (文春文庫)

東京・世田谷の取り壊し間近のアパートに住む太郎は、住人の女と知り合う。彼女は隣に建つ「水色の家」に、異様な関心を示していた。街に積み重なる時間の中で、彼らが見つけたものとは - 。第151回芥川賞に輝く表題作に、「糸」「見えない」「出かける準備」の三篇を加え、作家の揺るぎない才能を示した小説集。解説・堀江敏幸 (文春文庫)

読み慣れないものを読んでしまった。そんな感じがします。解説者が堀江敏幸というのもそうで、たぶん私なんかには理解できないことが書いてあるんだろうと。

案の定、(難しくはないのですが)読むと、それがどうしたの? みたいなことばかりが書いてあります。何がよくて芥川賞なのか、さっぱりわかりません。

でも、しょうがない。つらつら思い直して考えるに、(この話には)並みの人間では思いもつかない、とても重大な何かが秘められているんだろうと。それが証拠に、帯の裏には「何かが始まる気配。見えなかったものが見えてくる。」とあります。
・・・・・・・・・
太郎の暮らすアパート「ビューパレス サエキⅢ」は近々取り壊す予定で、元いた住人の大方は既に部屋を出ており、太郎の他には中年女性が一人と、「西」という名の独身女性が残るばかりになっています。

太郎の部屋は1階、中年女性と西の部屋は2階にあります。(L字になった建物の2階の一番奥にあるのが西の部屋です)

話の発端 -

西は、アパートと隣り合わせに建つ「水色の家」に異常なまでの関心を寄せています。2階のベランダ越しに見える家の様子を熱心にスケッチしたり、人知れず中へ忍び込もうとしたりします。それを太郎は、何気に下の階から眺めています。

その内二人は口をきくようになり、西がなぜそれほどまでに「水色の家」に関心を寄せているかの理由がわかります。彼女が愛してやまないのが「春の庭」と題した写真集で、そこに収められているのが、まさに目の前に建つ「水色の家」だったのです。

「春の庭」は、20年前、隣家(「水色の家」)に住むある夫婦の日常生活を撮影した写真集で、夫は35歳のCMディレクター、牛島タローという男性で、妻は27歳になる小劇団の女優、馬村かいこという女性です。

西は、(牛島タローの気取った作風が好みではなかったものの)彼と馬村かいこがお互いを撮影し合った「春の庭」という作品は、とてもいい写真集だと思っています。

「水色の家」は、現実の西の生活の中では見慣れないものばかりで出来上がっており、彼女は何より、全面に黄緑色のモザイクタイルが貼られた不思議な模様の風呂場が気に入っています。

ガウディが造ったアパートの壁を思い出した。それほど趣味がいいとは思わなかったが、こんな風呂場を希望した人と、作った人と、そして毎日この浴槽に入る人がいると思うと、なんだか笑えてくるのだった。

長い間空き家だった後、「水色の家」には森尾さん一家が引っ越して来ます。実和子は二人の幼い子供の母親で、西よりもずいぶんと若く見えます。人の良さそうな実和子をして、西は彼女にとり入り、あわよくば家に上がり込めないだろうかと策を巡らせます。

一方、太郎はというと、これがわからないのですが、(西のこととは別にして)彼は彼として生きているには違いないのですが、どこか茫洋として掴みどころがありません。西に対する彼の態度も、これといったことはなく、何が起きるというわけでもありません。

太郎と西とはあくまで同じアパートに住む住人で、それ以上でも以下でもなく、太郎はむしろ西との関わりを最小限に留めたいと思いながら、それでもズルズルと西の誘いに乗り、飲み屋へ行き、彼女の長話に付き合ったりします。

 

この本を読んでみてください係数  80/100


春の庭 (文春文庫)

◆柴崎 友香
1973年大阪府大阪市大正区生まれ。
大阪府立大学総合科学部国際文化コース人文地理学専攻卒業。

作品 「きょうのできごと」「次の駅まで、きみはどんな歌をうたうの?」「青空感傷ツアー」「フルタイムライフ」「また会う日まで」「その街の今は」「寝ても覚めても」他多数

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