『本屋さんのダイアナ』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『本屋さんのダイアナ』柚木 麻子 新潮文庫 2016年7月1日発行


本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

私の名は、大穴(ダイアナ)。おかしな名前も、キャバクラ勤めの母が染めた金髪も、はしばみ色の瞳も大嫌い。けれど、小学三年生で出会った彩子がそのすべてを褒めてくれた - 。正反対の二人だったが、共通点は本が大好きなこと。地元の公立と名門私立、中学で離れても心はひとつと信じていたのに、思いがけない分かれ道が・・・・・・・。少女から大人に変わる十余年を描く、最強のガール・ミーツ・ガール小説。(新潮文庫)

この小説は、小学三年生からほぼ二十歳に至る、少女から大人に変わる二人の女性の心の変遷を、世界の児童文学(=「少女小説」)の名作になぞらえて描かれた物語です。

ガール・ミーツ・ガール小説(!?)、というらしい。何をもって「最強」なのかはわかりませんが、いずれにせよ、本を読む習慣のない人にはちょっと敷居が高い、そんな感じがする本です。

さて、今回の『本屋さんのダイアナ』は広い意味で、『赤毛のアン』の本歌取り作品と言ってもいいと思う。ただのパスティーシュではない。(パスティーシュ:作風の模倣のこと)

まずはガーリッシュ(派手な。けばけばしいの意)な装丁とタイトルだが、そんなイメージは読み始めてすぐに、心地よく裏切られる。ダブルヒロインのひとりの登場シーンから見てみよう。小学校三年生、新しいクラスでの自己紹介の場面だ。(解説より抜粋)

「矢島ダイアナです。本を読むのが好きです」
出来るだけ小さな声で言い、すぐさま椅子に腰を下ろす。周囲と目を合わさないように膝小僧を見つめた。皆がひそひそ話しているのがわかる。

「ダイアナだって! あの子、外国の子? 」
「違うよ。私、二年の時一緒だったけど、日本人だよ。確か、公園の近くのアパートにお母さんと二人で住んでるの」
「へえ、でも、髪が金色だよ」

「あれ、根っこは黒いじゃん」
(中略)
「ねー、ダイアナってどういう字書くの? カタカナ? 」
「・・・・・・・大きい穴」
消え入るような声でつぶやくと、どっと笑いが起きた。

16歳でダイアナを産み、その後キャバクラで働いている彼女の母は、それがかっこいいので(本名ではなく)自分のことを「ティアラ」と呼んでいます。ダイアナの髪が金髪なのは、それが良いと信じ、ティアラがさせていることです。

ダイアナという名前については、彼女が赤ん坊の頃に離別した父親が競馬狂いで、世界一ラッキーな名前だというので付けられたのですが、当の本人はそれをひどく恨みに思っています。おかしな名前と金髪のせいで、彼女はいつもいじめられてばかりいます。

それまでのダイアナには友だちがいません。「彩子ちゃん」はまさにダイアナの救世主のごとくに彼女の前に現われます。それまではダイアナが忌み嫌っていた(自分に纏わる)すべてのことを、生まれも育ちも違う良家の娘・彩子は、逆に羨ましいと言い、ダイアナのする事なす事全部を褒めてくれます。

ダイアナと彩子は、すぐに「腹心の友」となります。ところが二人が公立と私立、別々の中学校へ進学し、(当然ながら)高校もまた別で、会わないうちに10年近くが経つと、二人はまるで人が違ったように変化を遂げます。

名前や母親のせいで萎縮してばかりいたダイアナは望む書店の店員となり、大学生になった彩子は、やるべきことが見つけ出せずに、チャラい男の餌食になります。

※この小説には『秘密の森のダイアナ』という架空の物語が登場します。そこに出てくる「自分の呪いを解くことができるのは、自分だけ」というメッセージが、とても重要なモチーフになっています。

 

この本を読んでみてください係数 80/100


本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

◆柚木 麻子
1981年東京都世田谷区生まれ。
立教大学文学部フランス文学科卒業。

作品 「終点のあの子」「ナイルパーチの女子会」「ランチのアッコちゃん」「伊藤くんA to E」「その手をにぎりたい」他多数

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