『乙女の家』(朝倉かすみ)_書評という名の読書感想文

『乙女の家』朝倉 かすみ 新潮文庫 2017年9月1日発行


乙女の家 (新潮文庫)

内縁関係を貫いた曾祖母、族のヘッドの子どもを高校生で産んだシングルマザーの祖母、普通の家庭を夢見たのに別居中の母、そして自分のキャラを探して迷走中の娘の若菜。強烈な祖母らに煽られつつも、友の恋をアシスト、祖父母の仲も取り持ち大活躍の若菜と、それを見守る家族。それぞれに、幸せはやって来るのか・・・・・・・。(新潮社)

長く曾祖父の愛人のような立場だった曾祖母、和子。16歳で妊娠し高校を中退した元ツッパリの祖母、洋子。二人を反面教師に、理想の家庭というものに拘る母、あゆみ。3人はまるで違うキャラクターなのですが、ひとつ、共通する「もの」があります。

歳は違えど、(今なお)3人は「乙女」みたいに浮き立つ「女心」を持っています。それに対し娘の若菜は、〈これといったキャラクターがない自分〉をひどく気にしています。彼女は、自分が「付和雷同型」の人間で、何ら主張することなく、

水中をただようクラゲのよう」に「友だちや、家族のあいだで、ぷかぷか浮かんでいるだけ」の存在だと思っています。そうではなくて、

あるいはそうであるからこそ、若菜は、他者に対し自分をたしかに特徴付ける、如何にも彼女らしいと思われる、新たな「人物像」を創り出そうと躍起になっています。

若菜が欲しているのは、「自分が望む自分の姿」ではなく、彼女を見て他人が思う「イメージ」のことです。彼女は自分が「主役」であろうとしているわけではありません。むしろ望んでいるのは「脇役」で、いつも、誰に対しても「キュートな脇役」でありたいと願っています。

若菜がしているのは「自分探し」ではなく、今の自分ではない、別の「誰か」になりたいということ。それが為、彼女は「文学少女キャラ」一直線の高橋さんと友だちになり、それまでの自分を一掃しリスタートしようと、2人で家出を企んだりします。

第1章 家出してみよう
第2章 多忙になってみよう
第3章 病弱になってみよう
第4章 告白してみよう
第5章 遠くをながめてみよう

※若菜が自分の考えや思いを書き留めているノートがあります。ノートのタイトルは「WTC」。「ワカナノトチュウ」のアルファベット表記の略です。17歳の若菜の、「途中」の言葉、それまでに気付いたことや考えたこと、「わかった」と思うことが綴られています。

 

この本を読んでみてください係数 80/100


乙女の家 (新潮文庫)

◆朝倉 かすみ
1960年北海道小樽市生まれ。
北海道武蔵女子短期大学教養学科卒業。

作品 「田村はまだか」「夏目家順路」「玩具の言い分」「感応連鎖」「肝、焼ける」「遊佐家の四週間」「ロコモーション」「恋に焦がれて吉田の上京」他多数

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