『お引っ越し』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/11 『お引っ越し』(真梨幸子), 作家別(ま行), 書評(あ行), 真梨幸子

『お引っ越し』真梨 幸子 角川文庫 2017年11月25日初版

内見したマンションはおしゃれな街のおしゃれな造り、環境も間取りも条件も申し分ない。ここに決めてしまおうか? しかし白い壁に小さな穴を見つけたキヨコは、そこからじわじわと “イヤな感じ” が広がっていくのを感じるのだった・・・・・・・。片付かない荷物、届かない段ボール箱、ヤバい引っ越し業者、とんでもない隣人 - きっとアナタも身に覚えがある引っ越しにまつわる6つの恐怖。イヤミスの女王の筆が冴えるサイコミステリ! (角川文庫)

」「」「」「」「」、そして「」。以上6編。- と思いきや、この小説には6編よりも尚怖い「解説」が付いてあります。

- そうして、『お引っ越し』というタイトルのゲラを、僕は読むこととなった。全部で、六編。A嬢(K川書店の編集者)いわく、都市伝説の中でも、信憑性の高いものを集めたとのことだ。確かに、聞いたことがあるような話がいくつかあった。

たとえば、「箱」、そして「壁」。いや、待て。それだけじゃない。「扉」と「紐」に登場したマンションは、あの有名な「怨霊マンション」ではないか? 夜な夜な、歌が聞こえてくるという噂の。

そして「棚」に出てきた女は、二年前に逮捕された、連続不審死事件の犯人ではないか? 「机」に出てきたあの男もそうだ。去年、死刑が確定した、「連続人食い魔」のことに違いない。僕は、改めて、戦慄を覚えた。

解説者は「とんでもない仕事を引き受けてしまったという思いに駆られた」といい、それは「あることに気が付いてしまったからだ」といいます。そして、「この仕事は引き受けない方がいいとすら思った」と。

いいですか。よく聞いてください。

- 読者の中には、「解説」から先に読む方も多いと思われる。本来は邪道なことなのだが、この本に限っては、それは正しい行為かもしれない。

僕はここで今一度警告する。この本は「読んではいけない」。

本書を読む前に、「解説」を読んだ読者はまずは自身の幸運に感謝するべきだ。そして、今すぐに本を閉じて、この本から遠く離れることをお勧めする。

解説者自らが「読んではいけない」類いの本だといい、「今、ここで本を閉じられるのが賢明だろう」といいます。

おや?

では、いったい「誰が」解説をしているのでしょう?

この本を読んでみてください係数 80/100

◆真梨 幸子
1964年宮崎県生まれ。
多摩芸術学園映画科(現、多摩芸術大学映像演劇学科)卒業。

作品 「孤虫症」「えんじ色心中」「殺人鬼フジコの衝動」「深く深く、砂に埋めて」「女ともだち」「あの女」「みんな邪魔」「人生相談」他多数

関連記事

『イモータル』(萩耿介)_書評という名の読書感想文

『イモータル』萩 耿介 中公文庫 2014年11月25日初版 インドで消息を絶った兄が残した「智慧

記事を読む

『火車』(宮部みゆき)_書評という名の読書感想文

『火車』宮部 みゆき 新潮文庫 2020年5月10日87刷 ミステリー20年間の第1

記事を読む

『ウツボカズラの甘い息』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文

『ウツボカズラの甘い息』柚月 裕子 幻冬舎文庫 2018年10月10日初版 容疑者

記事を読む

『夫のちんぽが入らない』(こだま)_書評という名の読書感想文

『夫のちんぽが入らない』こだま 講談社文庫 2018年9月14日第一刷 "夫のちんぽが入らない"

記事を読む

『終わりなき夜に生れつく』(恩田陸)_書評という名の読書感想文

『終わりなき夜に生れつく』恩田 陸 文春文庫 2020年1月10日第1刷 はじめに、

記事を読む

『あのこは貴族』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『あのこは貴族』山内 マリコ 集英社文庫 2019年5月25日第1刷 TOKYO

記事を読む

『悪逆』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『悪逆』黒川 博行 朝日新聞出版 2023年10月30日 第1刷発行 過払い金マフィア、マル

記事を読む

『劇場』(又吉直樹)_書評という名の読書感想文

『劇場』又吉 直樹 新潮文庫 2019年9月1日発行 高校卒業後、大阪から上京し劇

記事を読む

『祝言島』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『祝言島』真梨 幸子 小学館文庫 2021年5月12日初版第1刷 2006年に起き

記事を読む

『沈黙の町で』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『沈黙の町で』奥田 英朗 朝日新聞出版 2013年2月28日第一刷 川崎市の多摩川河川敷で、

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係 SIT 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係 SIT 』誉田 哲也 中公文庫 202

『血腐れ』(矢樹純)_書評という名の読書感想文

『血腐れ』矢樹 純 新潮文庫 2024年11月1日 発行 戦慄

『チェレンコフの眠り』(一條次郎)_書評という名の読書感想文

『チェレンコフの眠り』一條 次郎 新潮文庫 2024年11月1日 発

『ハング 〈ジウ〉サーガ5 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ハング 〈ジウ〉サーガ5 』誉田 哲也 中公文庫 2024年10月

『Phantom/ファントム』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文 

『Phantom/ファントム』羽田 圭介 文春文庫 2024年9月1

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑