『新宿鮫』(大沢在昌)_書評という名の読書感想文(その2)

公開日: : 最終更新日:2024/01/14 『新宿鮫』(大沢在昌), 書評(さ行)

『新宿鮫』(その2)大沢 在昌 光文社(カッパ・ノベルス) 1990年9月25日初版

書評その1はコチラ↓
『新宿鮫』(大沢在昌)_書評という名の読書感想文(その1)

新宿歌舞伎町のラブホテル街で発生した射殺事件では、2人の現職警官が死亡しました。

被害者の2人は、一発の銃弾で命を落としています。使用された銃が特定できないこともあって、警察は詳しい状況の公表を先延ばしにしています。
弾道検査の腕には定評がある鑑識課員の藪は、射殺に使用された銃についての見解を鮫島に打ち明けます。藪は、数少ない鮫島の理解者の一人でした。

鮫島は射殺事件の捜査には加わらず、単独で木津を追っています。銃の密造にかけてはプロの木津を潰すためには、製造現場の「工房」をどうしても突き止める必要がありました。
かつて鮫島は木津を逮捕したことがあります。しかし、最後まで工房の所在が分からず仕舞いだったために、木津の刑罰が大幅に軽減されるという因縁がありました。
そんな中、再び制服警官を狙った射殺事件が発生します。今度は、パトカーで警ら中の警官を、バイクを車の真横につけた犯人がガラス越しに狙ったものでした。

スナックから出てきた木津が向かったのは、平久川の支流に面した路地でした。立ち並ぶ船宿の一軒「富川丸」へ入って行きます。
「富川丸」の主人・富川と木津は中学時代のダチで、富川は木津の仕事を承知の上で「工房」への送迎役を引受けていたのです。
「工房」は、平久川から枝川橋を抜けて東雲東運河に入った貯木場の手前にありました。その建物は「宮間運輸」の倉庫でした。

藪の他にもう一人、署内には鮫島の理解者がいます。防犯課の課長・桃井です。桃井は周囲からマンジュウ(死人)と皮肉られる人物ですが、その理由を鮫島は知っています。
木津の「工房」が押さえられるかも知れないこと、警官殺しの犯人が木津の「製品」を使っている可能性について、鮫島はこれまでの捜査過程を桃井に説明します。
逮捕状と捜査令状を請求する鮫島ですが、請求すれば捜査は鮫島の手を離れます。桃井は、令状を必要としない現行犯逮捕を鮫島に委ねます。

そして、遂に鮫島は木津の「工房」へ踏み込むのでした。

一方の警官射殺事件。三度目の事件発生を受けて、捜査は佳境に向かって動き始めます。

木津はホモセクシャルで、カズオという愛人がいました。そのカズオが木津のマンションから銃らしきものを持ち出して、行方が分からなくなっていたのです。
カズオ、本名・宮内和雄の居所を追うことによって、事件の全容が少しずつ明らかになってきます。

ちょっとネタバレぎみになってしまいますが、最終的にカズオは射殺犯ではありません。カズオを起点として捜査が進展して行き、最後には犯人に行き着くわけですが、
しっかり読んでいないと、この犯人が脈絡なく突然現れたように思えてしまうかも知れません。
しかし、犯人は必然性をもって必ず小説のなかに潜んでいるのです。ハードボイルド小説に不要な人物は登場しません。

ラストにかけて鮫島の恋人・晶があわやという場面もありますが、安心してください。鮫島と晶の恋は始まったばかりです。
晶、桃井課長、藪は、鮫島を支える重要な役どころです。頭の片隅に留めておいてください。

『新宿鮫』(大沢在昌)_書評という名の読書感想文(その1)

この本を読んでみてください係数 95/100


◆大沢 在昌

1956年愛知県名古屋市生まれ。

慶應義塾大学法学部中退。文化学院創作コース中退。

作品 「感傷の街角」「深夜曲馬団」「新宿鮫 無間人形」「心では重すぎる」「パンドラ・アイランド」「狼花 新宿鮫IX」「海と月の迷路」他多数

◇ブログランキング

応援クリックしていただけると励みになります。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

関連記事

『殺人カルテ 臨床心理士・月島繭子』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『殺人カルテ 臨床心理士・月島繭子』大石 圭 光文社文庫 2021年8月20日初版1刷

記事を読む

『殺戮にいたる病』(我孫子武丸)_書評という名の読書感想文

『殺戮にいたる病』我孫子 武丸 講談社文庫 2013年10月13日第一刷 東京の繁華街で次々と猟奇

記事を読む

『前世は兎』(吉村萬壱)_書評という名の読書感想文

『前世は兎』吉村 萬壱 集英社 2018年10月30日第一刷 7年余りを雌兎として

記事を読む

『ジウⅢ 新世界秩序 NWO 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ジウⅢ 新世界秩序 NWO 』誉田 哲也 中公文庫 2021年3月25日 改版発行 シリー

記事を読む

『正欲』(朝井リョウ)_書評という名の読書感想文

『正欲』朝井 リョウ 新潮文庫 2023年6月1日発行 第34回柴田錬三郎賞受賞!

記事を読む

『その話は今日はやめておきましょう』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『その話は今日はやめておきましょう』井上 荒野 毎日新聞出版 2018年5月25日発行 定年後の誤

記事を読む

『地獄への近道』(逢坂剛)_書評という名の読書感想文

『地獄への近道』逢坂 剛 集英社文庫 2021年5月25日第1刷 お馴染み御茶ノ水

記事を読む

『スメル男 (新装版)』(原田宗典)_書評という名の読書感想文

『スメル男 (新装版)』原田 宗典 講談社文庫 2021年1月15日第1刷 「腐っ

記事を読む

『祝言島』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『祝言島』真梨 幸子 小学館文庫 2021年5月12日初版第1刷 2006年に起き

記事を読む

『その日東京駅五時二十五分発』(西川美和)_書評という名の読書感想文

『その日東京駅五時二十五分発』西川 美和 新潮文庫 2015年1月1日発行 ぼくは何も考えてな

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『ついでにジェントルメン』(柚木麻子)_書評という名の読書感想文

『ついでにジェントルメン』柚木 麻子 文春文庫 2025年1月10日

『逃亡』(吉村昭)_書評という名の読書感想文

『逃亡』吉村 昭 文春文庫 2023年12月15日 新装版第3刷

『対馬の海に沈む』 (窪田新之助)_書評という名の読書感想文

『対馬の海に沈む』 窪田 新之助 集英社 2024年12月10日 第

『うたかたモザイク』(一穂ミチ)_書評という名の読書感想文

『うたかたモザイク』一穂 ミチ 講談社文庫 2024年11月15日

『友が、消えた』(金城一紀)_書評という名の読書感想文

『友が、消えた』金城 一紀 角川書店 2024年12月16日 初版発

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑