『月の満ち欠け』(佐藤正午)_書評という名の読書感想文

『月の満ち欠け』佐藤 正午 岩波書店 2017年4月5日第一刷


月の満ち欠け

生きているうちに読むことができて本当によかった。そう思える一冊です。そして、できれば、あなたにとってもそうでありますように。

第157回直木賞受賞作品。

自分が命を落とすようなことがあったら、もういちど生まれ変わる。月のように。いちど欠けた月が、もういちど満ちるように - そして、あなたの前に現われる。

あたしは、月のように死んで、生まれ変わる - 目の前にいる、この七歳の少女が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! 新たな代表作の誕生は、円熟の境に達した畢竟の書き下ろし。さまよえる魂の物語は戦慄と落涙、衝撃のラストヘ。(岩波書店)

東京駅21番線ホーム。初老の男性・小山内堅(おさない・つよし)が新幹線を降り立ったのは午前11時前。彼は駅前にある東京ステーションホテル2Fのカフェへ向かおうと急ぐ。

そこにいるは、30代の女性とその女性を母に持つ7歳の娘。母は女優で、娘はるりという。

この時、るりと小山内とは初対面。ところが、少女は年齢に似つかわしくない大人びた口調で、初対面であるはずの小山内のコーヒーの好みを言い当ててしまう。そして彼女は、にわかには信じがたい話を語り始めたのだった・・・・・・・

物語はこんなふうにして始まってゆきます。

小山内堅は青森県八戸市の生まれ。成人し就職の後、彼は同じ八戸高校出身の二学年後輩にあたる藤宮梢と結婚します。娘が生まれ、瑠璃と名付けられます。

瑠璃が7歳の時、高熱を出したことがあります。それを境に瑠璃の様子が一変します。妻の梢によると、回復した以後の瑠璃は時折大人びた表情を見せ、知るはずのない黛ジュンの歌を歌い、見たこともないデュポンのライターを見分けたのだといいます。

聞くと確かにおかしなことではありますが、そのとき小山内はさほど気にしません。それよりも気懸かりだったのは妻・梢の精神状態の方でした。

そののち、瑠璃は家出をします。瑠璃には会いたい人がいるらしい。しかしまだ幼い少女ゆえ目的は果たせず、父である小山内はそれを問い質そうとはしません。高校を卒業するまで我慢しろ言われ、瑠璃はその約束を守り、その後彼女は家出しなくなります。

11年後。約束の年、高校の卒業式を終えた娘は不幸な交通事故に見舞われた。車を運転していたのは妻の梢で、ふたりとも即死だった。

それから小山内は独りになって考え始めた。

彼が、妻・梢の高校時代の友人で今は女優の緑坂ゆいとその娘・るりと出会うのは、妻と娘を失ってから15年後のことです。

 

この本を読んでみてください係数 90/100


月の満ち欠け

◆佐藤 正午
1955年長崎県生まれ。
北海道大学文学部中退。

作品 「永遠の1/2」「Y」「リボルバー」「個人教授」「アンダーリポート/ブルー」「彼女について知ることのすべて」「身の上話」「ジャンプ」「鳩の撃退法」他多数

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