『月の満ち欠け』(佐藤正午)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2022/11/17 『月の満ち欠け』(佐藤正午), 佐藤正午, 作家別(さ行), 書評(た行)

『月の満ち欠け』佐藤 正午 岩波書店 2017年4月5日第一刷


月の満ち欠け

生きているうちに読むことができて本当によかった。そう思える一冊です。そして、できれば、あなたにとってもそうでありますように。

第157回直木賞受賞作品。

自分が命を落とすようなことがあったら、もういちど生まれ変わる。月のように。いちど欠けた月が、もういちど満ちるように - そして、あなたの前に現われる。

あたしは、月のように死んで、生まれ変わる - 目の前にいる、この七歳の少女が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! 新たな代表作の誕生は、円熟の境に達した畢竟の書き下ろし。さまよえる魂の物語は戦慄と落涙、衝撃のラストヘ。(岩波書店)

東京駅21番線ホーム。初老の男性・小山内堅(おさない・つよし)が新幹線を降り立ったのは午前11時前。彼は駅前にある東京ステーションホテル2Fのカフェへ向かおうと急ぐ。

そこにいるは、30代の女性とその女性を母に持つ7歳の娘。母は女優で、娘はるりという。

この時、るりと小山内とは初対面。ところが、少女は年齢に似つかわしくない大人びた口調で、初対面であるはずの小山内のコーヒーの好みを言い当ててしまう。そして彼女は、にわかには信じがたい話を語り始めたのだった・・・・・・・

物語はこんなふうにして始まります。

小山内堅は青森県八戸市の生まれ。成人し就職の後、彼は同じ八戸高校出身の二学年後輩にあたる藤宮梢と結婚します。娘が生まれ、瑠璃と名付けられます。

瑠璃が7歳の時、高熱を出したことがあります。それを境に瑠璃の様子が一変します。妻の梢によると、回復した以後の瑠璃は時折大人びた表情を見せ、知るはずのない黛ジュンの歌を歌い、見たこともないデュポンのライターを見分けたのだといいます。

聞くと確かにおかしなことではありますが、そのとき小山内はさほど気にしません。それよりも気懸かりだったのは妻・梢の精神状態の方でした。

そののち、瑠璃は家出をします。瑠璃には会いたい人がいるらしい。しかしまだ幼い少女ゆえ目的は果たせず、父である小山内はそれを問い質そうとはしません。高校を卒業するまで我慢しろと言われ、瑠璃はその約束を守り、その後彼女は家出しなくなります。

11年後。約束の年、高校の卒業式を終えた娘は不幸な交通事故に見舞われた。車を運転していたのは妻の梢で、ふたりとも即死だった。

それから小山内は独りになって考え始めた。

彼が、妻・梢の高校時代の友人で今は女優の緑坂ゆいとその娘・るりと出会うのは、妻と娘を失ってから15年後のことでした。

この本を読んでみてください係数 90/100


月の満ち欠け

◆佐藤 正午
1955年長崎県生まれ。
北海道大学文学部中退。

作品 「永遠の1/2」「Y」「リボルバー」「個人教授」「アンダーリポート/ブルー」「彼女について知ることのすべて」「身の上話」「ジャンプ」「鳩の撃退法」他多数

関連記事

『東京放浪』(小野寺史宜)_書評という名の読書感想文

『東京放浪』小野寺 史宜 ポプラ文庫 2016年8月5日第一刷 (12-4)東京放浪 (ポプラ

記事を読む

『父からの手紙』(小杉健治)_書評という名の読書感想文

『父からの手紙』小杉 健治 光文社文庫 2018年12月20日35刷 父からの手紙 (光文社

記事を読む

『ビタミンF』(重松清)_書評という名の読書感想文

『ビタミンF』重松 清 新潮社 2000年8月20日発行 ビタミンF (新潮文庫) &n

記事を読む

『カレーライス』(重松清)_教室で出会った重松清

『カレーライス』重松 清 新潮文庫 2020年7月1日発行 カレーライス 教室で出会った重松

記事を読む

『明るい夜に出かけて』(佐藤多佳子)_書評という名の読書感想文

『明るい夜に出かけて』佐藤 多佳子 新潮文庫 2019年5月1日発行 明るい夜に出かけて (

記事を読む

『愛なんて嘘』(白石一文)_書評という名の読書感想文

『愛なんて嘘』白石 一文 新潮文庫 2017年9月1日発行 愛なんて嘘 (新潮文庫) 結婚や

記事を読む

『くちぶえ番長』(重松清)_書評という名の読書感想文

『くちぶえ番長』重松 清 新潮文庫 2020年9月15日30刷 くちぶえ番長 (新潮文庫)

記事を読む

『土の中の子供』(中村文則)_書評という名の読書感想文

『土の中の子供』 中村 文則 新潮社 2005年7月30日発行 土の中の子供 (新潮文庫)

記事を読む

『七緒のために』(島本理生)_書評という名の読書感想文

『七緒のために』島本 理生 講談社文庫 2016年4月15日第一刷 七緒のために (講談社

記事を読む

『終の住処』(磯崎憲一郎)_書評という名の読書感想文

『終の住処』磯崎 憲一郎 新潮社 2009年7月25日発行 終の住処 (新潮文庫) 妻はそれ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『中尉』(古処誠二)_書評という名の読書感想文

『中尉』古処 誠二 角川文庫 2017年7月25日初版発行

『犬のかたちをしているもの』(高瀬隼子)_書評という名の読書感想文

『犬のかたちをしているもの』高瀬 隼子 集英社文庫 2022年9月1

『殺人者』(望月諒子)_書評という名の読書感想文

『殺人者』望月 諒子 新潮文庫 2022年11月1日発行

『緑の我が家』(小野不由美)_書評という名の読書感想文

『緑の我が家』小野 不由美 角川文庫 2022年10月25日初版発行

『あなたの涙は蜜の味|イヤミス傑作選』(宮部みゆき 辻村深月他)_書評という名の読書感想文

『あなたの涙は蜜の味|イヤミス傑作選』宮部みゆき 辻村深月他 PHP

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑