『賢者の愛』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『賢者の愛』山田 詠美 中公文庫 2018年1月25日初版


賢者の愛 (中公文庫)

高中真由子は、編集者の父と医師の母のもとで、何不自由なく育てられてきた。真由子が小学生のころ、隣家に二つ年下の百合の家族が引っ越してきて、二人は急速に仲良くなっていく。しかし、真由子が21歳になった冬、百合は真由子が幼いころからずっと思いを寄せてきた澤村諒一の子どもを妊娠したと告白した。その日から、真由子の復讐が始まる - 。諒一と百合の子どもの名付け親になった真由子は、『痴人の愛』の「ナオミ」から、二人の息子に「直巳」と名付け、彼を「調教」していく。直巳が二十歳の誕生日を迎えた日、真由子は初めて、直巳に体を許す。それが最初で最後となるとも知らず・・・・・・・。主演・中山美穂のテレビドラマも大きな話題を呼んだ、絢爛豪華な愛憎劇! (アマゾン内容紹介より)

ある時期集中して「山田詠美」を読んだ。時々はこの人の小説を読むことが必要だ、と強く感じた。私にとって「山田詠美」は、(他の誰とも違う)いわばカンフル剤のような存在で、読むと、その都度思い知らされることになる。ひどく落ち込みもする。

自分の思うことすべてが「凡庸」であるような。ほかに「違う世界」があるような。そのことこそを、思い知れと。世界はおまえが思う以上に複雑で、始末に負えないものに充ち満ちている。ありきたりに依らず、それを解れと。

私は私のやり方で、あなたの息子を愛してみせる。真由子は、長い間、何度もくり返された決意を、改めて心の内に甦らせながら不敵な笑みを浮かべるのでした。愛を復讐に使うこと。それが彼女の選んだ方法だったのです。

真由子は、百合の息子・直巳を、知らず知らずのうちに母の百合から遠ざけようとします。幼い直巳を、母を母と思わぬように仕向け、自らが「育て上げよう」とします。

それは背徳の限りを尽くした方法で、悪意に充ち、容赦がありません。なぜなら真由子は親友であるはずの百合から、かつて想いを寄せた百合の夫・諒一から、それ相応の手ひどい仕打ちを被ったのですから。彼女の敵意は、二人に生まれた息子・直巳へと向かいます。

そうとは知らず、直巳は真由子を受け入れ、母の百合以上に真由子を慕うようになります。但し、「母のように」ではありません。母とは違い、時に教師のように、時には歳の離れた姉のように。そして常には娼婦の気配を漂わせ、若い直巳の心と体を揺さぶり続けます。

結果直巳は、22歳も年上の、真由子の(体の)虜になります。

 

この本を読んでみてください係数  85/100


賢者の愛 (中公文庫)

◆山田 詠美
1959年東京都板橋区生まれ。
明治大学日本文学科中退。

作品 「僕は勉強ができない」「蝶々の纏足・風葬の教室」「ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー」「ベッドタイムアイズ」「色彩の息子」「学問」「放課後の音符」「風味絶佳」他多数

関連記事

『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』山田 詠美 幻冬舎文庫 1997年6月25日初版 ソウ

記事を読む

『カソウスキの行方』(津村記久子)_書評という名の読書感想文

『カソウスキの行方』津村 記久子 講談社文庫 2012年1月17日第一刷 カソウスキの行方 (

記事を読む

『風味絶佳』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『風味絶佳』山田 詠美 文芸春秋 2008年5月10日第一刷 風味絶佳  

記事を読む

『カラヴィンカ』(遠田潤子)_書評という名の読書感想文

『カラヴィンカ』遠田 潤子 角川文庫 2017年10月25日初版 カラヴィンカ (角川文庫)

記事を読む

『ここは退屈迎えに来て』(山内マリコ)_書評という名の読書感想文

『ここは退屈迎えに来て』山内 マリコ 幻冬舎文庫 2014年4月10日初版 ここは退屈迎えに来

記事を読む

『くちなし』(彩瀬まる)_愛なんて言葉がなければよかったのに。

『くちなし』彩瀬 まる 文春文庫 2020年4月10日第1刷 くちなし (文春文庫)

記事を読む

『神様の裏の顔』(藤崎翔)_書評という名の読書感想文

『神様の裏の顔』藤崎 翔 角川文庫 2016年8月25日初版 神様の裏の顔 (角川文庫) 神

記事を読む

『僕はロボットごしの君に恋をする』(山田悠介)_幾つであろうと仕方ない。切ないものは切ない。

『僕はロボットごしの君に恋をする』山田 悠介 河出文庫 2020年4月30日初版 僕はロボッ

記事を読む

『工場』(小山田浩子)_書評という名の読書感想文

『工場』小山田 浩子 新潮文庫 2018年9月1日発行 工場 (新潮文庫) (帯に) 芥

記事を読む

『検事の本懐』(柚月裕子)_書評という名の読書感想文

『検事の本懐』柚月 裕子 角川文庫 2018年9月5日3刷 検事の本懐 (角川文庫)

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『かか』(宇佐見りん)_書評という名の読書感想文

『かか』宇佐見 りん 河出書房新社 2019年11月30日初版

『希望病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『希望病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2020年11月11日初版

『JR上野駅公園口』(柳美里)_書評という名の読書感想文

『JR上野駅公園口』柳 美里 河出文庫 2017年2月20日初版

『裏アカ』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『裏アカ』大石 圭 徳間文庫 2020年5月15日初刷 裏アカ

『鵜頭川村事件』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『鵜頭川村事件』櫛木 理宇 文春文庫 2020年11月10日第1刷

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑