『ラメルノエリキサ』(渡辺優)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/10 『ラメルノエリキサ』(渡辺優), 作家別(わ行), 書評(ら行), 渡辺優

『ラメルノエリキサ』渡辺 優 集英社文庫 2018年2月25日第一刷

「お前絶対ぶっ殺すからな! 」 女子高生・小峰りなは、夜道で背中を切られながらも、逃げる人影に叫んだ。退院後、りなは犯人を探すが、糸口は「ラメルノエリキサ」という犯人が残した謎の言葉のみ。そんな中、新たな通り魔事件が起こる。二つの事件を結ぶのはりなの元カレで!? 完璧な母親に苛立ち、犯人への復讐に異常なまでの執念を燃やす少女が疾走する青春小説。第28回小説すばる新人賞受賞作。(集英社文庫)

やられたら絶対やり返す。なんて不謹慎な小説! 」- 帯にあるこんな台詞に誘われて読んでみようと。

小説すばる新人賞の選考会では、(選考委員の) 宮部みゆきが 「私はこの作品と心中します」 とまで言ったそうな。それを受け、(解説では) 池上冬樹氏が 「それほど読む者を夢中にさせる面白さがある」 と述べています。

が、しかし。それはまあ置くとして。

気になるのは、ラメルノエリキサ(!?)ということば - これはいったい何のことだろうと。

何物かを表す一続きの単語? それともどこかで区切って読むのかしら? 例えば、ラメルノ・エリキサとか、ラ・メルノエ・リキサとか、ラメルノエ・リキサであるとか・・・・・・・

凶行に及んだまさにその時、りなに向かって犯人は、

ラメルノエリキサのためなんです、すみません」- という言葉を残します。

※この小説が評価されたのは、ひとえに、主人公である「小峰りな」という女子高生にあります。常識を無視した倫理観。彼女は、やられたらやり返さずにはいられません。あらゆる角度で被ったダメージの量を分析、それ相応に「復讐する」のを善しとしています。

- の割には暗くも陰湿でもなく、いやに正々堂々としています。自分の性格をそうだと言って憚らず、それでいていまどきの女子高生らしくもあります。彼女の言動が、他になくハードボイルドなのがいいということなのですが・・・・・・・

私にはピンときませんでした。みなさんは、どうなのでしょう。

この本を読んでみてください係数  75/100

◆渡辺 優
1987年宮城県仙台市生まれ。宮城学院女子大学国際文化学科卒業。

作品 2015年 「ラメルノエリキサ」 で第28回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。他に「自由なサメと人間たちの夢」「地下にうごめく星」

関連記事

『路地の子』上原 善広_書評という名の読書感想文

『路地の子』上原 善広 新潮社 2017年6月16日発売 金さえあれば差別なんてさ

記事を読む

『路傍』(東山彰良)_書評という名の読書感想文

『路傍』東山 彰良 集英社文庫 2015年5月25日第一刷 俺、28歳。金もなけりゃ、女もいな

記事を読む

『インストール』(綿矢りさ)_書評という名の読書感想文

『インストール』綿矢 りさ 河出書房新社 2001年11月20日初版 この小説が文藝賞を受賞

記事を読む

『リアルワールド』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『リアルワールド』桐野 夏生 集英社文庫 2006年2月25日第一刷 高校三年の夏休み、隣家の少年

記事を読む

『老警』(古野まほろ)_書評という名の読書感想文

『老警』古野 まほろ 角川文庫 2022年8月25日初版発行 :続々重版 『監殺』

記事を読む

『リリース』(古谷田奈月)_書評という名の読書感想文

『リリース』古谷田 奈月 光文社 2016年10月20日初版 女性首相ミタ・ジョズの活躍の下、同性

記事を読む

『竜血の山』(岩井圭也)_書評という名の読書感想文

『竜血の山』岩井 圭也 中央公論社 2022年1月25日初版発行 北の鉱山に刻まれ

記事を読む

『ひらいて』(綿矢りさ)_書評という名の読書感想文

『ひらいて』綿矢 りさ 新潮社文庫 2015年2月1日発行 文庫の解説は、タレントの光浦靖子さん

記事を読む

『暗い越流』(若竹七海)_書評という名の読書感想文

『暗い越流』若竹 七海 光文社文庫 2016年10月20日初版 5年前、通りかかった犬に吠えられ飼

記事を読む

『リアル鬼ごっこ』(山田悠介)_書評という名の読書感想文

『リアル鬼ごっこ』山田 悠介 幻冬舎文庫 2015年4月1日75版 全国500万の 〈佐藤〉 姓を

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『八月の母』(早見和真)_書評という名の読書感想文

『八月の母』早見 和真 角川文庫 2025年6月25日 初版発行

『おまえレベルの話はしてない』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『おまえレベルの話はしてない』芦沢 央 河出書房新社 2025年9月

『絶縁病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『絶縁病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2025年10月11日 初版第1

『木挽町のあだ討ち』(永井紗耶子)_書評という名の読書感想文

『木挽町のあだ討ち』永井 紗耶子 新潮文庫 2025年10月1日 発

『帰れない探偵』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『帰れない探偵』柴崎 友香 講談社 2025年8月26日 第4刷発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑