『また次の春へ』(重松清)_書評という名の読書感想文

『また次の春へ』重松 清 文春文庫 2016年3月10日第一刷


また次の春へ (文春文庫)

終わりから、始まる。厄災で断ち切られたもの、それでもまた巡り来るもの。喪失の悲しみと、再生への祈りを描く、7つの小さな物語。冬を越えたあとに待つ春を、また思う。次の春も、また次の春も、おだやかな暖かい日がつづくといい。

あの日はたしか、みぞれ混じりの雪が降っていた。さぞや寒かったことだろう。手足が痺れ、やがて感覚もなくなろうとする間際。なすすべもなく山裾の小高い場所に立つ大勢の人たちは、海からの大波が陸へと侵入し、そこにあるあらゆるものを薙ぎ倒し、濁流となって尚内陸へと進みゆく光景を前にして、何を思い、何を感じていたのだろうか。

映像にはなかったものの、流されたものの中には、人もいたのだ。人が。老人や子どもが。未来ある多くの若者や、現に今暮らしの柱となって働く壮年の男性や女性も。体が不自由な人も、病気の人も。幼いわが子を残し、家族がすべて奪われたようなことも。

たとえば - それが 「自分だったなら」 と考えてみる。

父・母を喪い、妻を喪い、子を喪ったとしたらどうだろう。友を喪い、想いを寄せる人を喪ったとしたら、その時、私はなにをなせばよいのだろう。

共に生き、共に生きようとした人を亡くした時、そこになにが残るというのか。喪ったものものがあまりに大きく (あるいはあり過ぎて)、きっと言葉さえ出やしない。喩えられない喪失感に打ちひしがれて、息もできない。したくもない。そんな気持ちになるのだろうと。

小学3年生、母を亡くした夜に父がつくってくれた “わが家” のトン汁を、避難所の炊き出しでつくった僕。東京でもどかしい思いを抱え、二ヵ月後に縁のあった被災地を訪れた主婦マチ子さん。あの日に同級生を喪った高校1年生の早苗さん。

ふるさとを穢され、避難指示の中で開かれたお盆の夏祭りで逡巡するノブさん。かつての教え子が亡くなったことを知り、仮設住宅に遺族を訪ねていく先生。行方不明の両親の死亡届を出せないまま、自分の運命を引き受けていこうとする洋行 - 。

未曽有の被害をもたらし、日本中が揺れた東日本大震災。それぞれの位置から、それぞれの距離から、再生への光と家族を描いた珠玉の短篇集。(アマゾン内容紹介より)

収録作品  トン汁/おまじない/しおり/記念日/帰郷/五百羅漢/また次の春へ  以上7編。

 

この本を読んでみてください係数 80/100


また次の春へ (文春文庫)

◆重松 清
1963年岡山県津山市生まれ。
早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。

作品「定年ゴジラ」「カカシの夏休み」「ビタミンF」「十字架」「流星ワゴン」「疾走」「カシオペアの丘で」「ナイフ」「星のかけら」「ゼツメツ少年」他多数

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