『夫のちんぽが入らない』(こだま)_書評という名の読書感想文

『夫のちんぽが入らない』こだま 講談社文庫 2018年9月14日第一刷


夫のちんぽが入らない (講談社文庫)

“夫のちんぽが入らない” 衝撃の実話 - 彼女の生きてきたその道が物語になる。

2014年5月に開催された 「文学フリマ」 では、同人誌 『なし水』 を求める人々が異例の大行列を成し、同書は即完売。その中に収録され、大反響を呼んだのが主婦こだまの自伝 『夫のちんぽが入らない』 だ。

同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の 「私」(こだま)。初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。彼の性器が全く入らなかったのだ。その後も二人は 「入らない」 一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし 「いつか入る」 という願いは叶わぬまま、「私」 はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく・・・・・・・。

交際してから約20年、「入らない」 女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った “愛と堕落” の半生。(アマゾン「内容紹介」より)

- で、話はこんなふうに始まっていきます。

いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十余年、この 「ちんぽが入らない」 問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。

何も知らない母は 「結婚して何年も経つのに子供ができないのはおかしい。一度病院で診てもらいなさい。そういう夫婦は珍しくないし、恥ずかしいことじゃないんだから」 と言う。けれど、私は 「ちんぽが入らないのです」 と嘆く夫婦をいまだかつて見たことがない。

医師は私に言うのだろうか。 「ちんぽが入らない? 奥さん、よくあることですよ」 と。そんなことを相談するくらいなら、押し黙ったまま老いていきたい。子供もいらない。ちんぽが入らない私たちは、兄妹のように、あるいは植物のように、ひっそりと生きていくことを選んだ。

遅ればせながら、(文庫化なったので) 読んでみました。

読むとすぐに、これが 「ちんぽが入らない」 - だけの話ではないことがわかります。”大仁田こそ流血すべし” のくだりや、アリハラさんという人の “山とセックスする” 話はとても切実で、であるからこそ、わざと “笑えるように” 書いてある。そんな感じがします。

語り手の「私」は、その頃、小学校の先生をしています。「私」より一つ年上の夫は、私立高校の社会科教師をしています。

大学入学直後、「私」 は同じアパートで暮らす(同じ大学の)彼と知り合い、すぐにつき合い出します。卒業後、彼は隣県の高校へ就職し、その1年後、「私」 は彼と同じ隣県の、小学校に勤めることを決心します。「私」 にとって彼は、「好いている人に、好いてもらえていた」- 初めての人。二人はなるべくして結婚します。

「ちんぽが入らない」 問題は結婚後も延々と続き、それと重なり、「私」 は職業上の様々な困難を抱え込むようになります。理想を抱き教師になったものの、やがて理不尽な現実に晒され、身動きが取れなくなります。死にたいとさえ、思うようになります。

精神を病む 「私」 と同様に、夫はさらに重篤に、精神を病んでしまう事態になります。

追い詰められたときにおかしな方向に逃げ出す人がいる。黙って立ちすくむ人もいる。真正面から闘う人もいるし、声を上げて助けを求める人もいる。どの道にも、その人なりの理由がある。本を批判する人にも、その人の譲れない 「正義」 がある。

別に共感しなくていい。どちらが正しいか白黒つけなくていい。そういう人も存在する、と知るだけで充分ではないか。せめて自分と違う選択を頭ごなしに否定しない人間でありたい。自戒を込めて、そう強く思った。

そもそも、そういうテーマの本なのだ。
実体験を書き、賛否さまざまな声が自分の元に返ってくる。家に帰るまでが遠足だというけれど、忠告も罵声も応援も全部受け取って、また次の地点を目指して歩き始めるところまでが 「ちんぽ」 の物語となった。(P230.231/特別収録  文庫版エッセイ 「ちんぽを出してから」より)

タイトルがタイトルだけに、殊更に心して読むべし、とそういうことです。

 

この本を読んでみてください係数  85/100


夫のちんぽが入らない (講談社文庫)

◆こだま
主婦。2017年1月、実話を元にした私小説 『夫のちんぽが入らない』(扶桑社) でデビュー。たちまちベストセラーとなり、「Yahoo! 検索大賞2017」 小説部門賞受賞。同作は漫画化され、連続ドラマ化も決定し話題に。

作品 「ここは、おしまいの地」(第34回講談社エッセイ賞受賞)

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