『作家刑事毒島』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『作家刑事毒島』中山 七里 幻冬舎文庫 2018年10月10日初版


作家刑事毒島 (幻冬舎文庫)

内容についての紹介文を、二つ掲載します。(文庫の裏に書いてある) まずはスタンダードな方から。

新人賞の選考に関わる編集者の刺殺死体が発見された。三人の作家志望が容疑者に浮上するも捜査は難航。警視庁捜査一課の新人刑事・高千穂明日香の前に現れた助っ人は、人気ミステリ作家兼刑事技能指導員の毒島真理。冴え渡る推理と鋭い舌鋒で犯人を追い詰めていくが・・・・・・・。人間の業と出版業界の闇が暴かれる、痛快・ノンストップミステリ!

二つ目。こちらは幻冬舎ウェブサイトにある単行本出版時のもの。文庫と比べより詳細に、毒島をはじめ登場する人物らのキャラクターがより饒舌に書いてあります。

この男、前代未聞のトンデモ作家か。はたまた推理冴え渡る名刑事か!?  中山史上最毒・出版業界激震必至の本格ミステリ!  殺人事件解決のアドバイスを仰ごうと神保町の書斎を訪れた刑事・明日香を迎えたのは流行作家の毒島。虫も殺さぬような温和な笑顔の持ち主は、性格の歪んだ皮肉屋だった。捜査過程で浮かび上がってきたのは、巨匠病にかかった新人作家、手段を選ばずヒット作を連発する編集者、ストーカーまがいの熱狂的な読者。ついには毒島本人が容疑者に!?  新・爆笑小説!

毒島の仕事場は神田神保町の中にあった。大型書店と古書店が立ち並ぶ間を埋めるように、昔ながらの飲食店が点在している。その中にあってひときわ古びた外観の天ぷら屋の二階がそうだと、明日香は聞かされていた。(P31)

毒の島と書いてぶすじま、名は真理(しんり) - 毒島真理。二年前に新人賞を受賞してデビュー、現在売出し中のミステリ作家である毒島は、元刑事。わけあって一度は退官したものの、すぐに “刑事技能指導員” として再雇用されています。

彼は “刑事としては” とびきり優秀な人物で、それは元同僚の誰もが認めるところ。ところがその元同僚の、これまた誰もが彼を大の苦手としています。ある理由がもとで、滅多なことで関わろうとはしません。

閑話休題。

ある編集者の刺殺死体が発見されます。そこで指名されたのが、新米刑事・高千穂明日香でした。。明日香はここで初めて作家兼刑事の毒島真理と出会うことになります。皆が尻込みする中、出版業界に滅法強い刑事がいると、彼女は半ば強引に 「参考意見を聞いてこい」 と命じられたのでした。

(果たして、それが彼女の今後のキャリアにとって真に有益であったのか。はたまた、知らずにおくべき災いでしかなかったのか・・・・・・・)

そこで明日香は、おのずと毒島の “正体” を知ることになります。被疑者との面談に際し、毒島がする容赦ない詰問の連続に、(一瞬とはいえ) 明日香は気が遠くなります。

彼女は何も言えません。毒島が言う言葉以上に、被疑者を追い込む言葉が見当たらないからです。被疑者もまた言葉を失くします。それを見透かしたかのように、毒島がする詰問は、さらに相手の心を抉ります。

最初の事件以降、二人は(出版業界絡みの)事件が起こると召集されるようになります。その度明日香は、毒島の舌鋒鋭い詰問の聞き役となり、時に眩暈がしたりもするのですが、事件は概ね毒島が推理した通りの経過を辿ります。

彼はとびきり優秀で、実は被疑者と直接出会う前、事前情報のみを知る段階で、大方誰が犯人かの目星を付けています。後は裏付けを取るだけなのですが、それでも被疑者と面談します。なぜなら、毒島は、要は被疑者を “いたぶりたい” だけなのです。

第一話 ワナビの心理試験
第二話 編集者は偏執者
第三話 賞は獲ってはみたものの
第四話 愛瀆者
第五話 原作とドラマの間には深くて暗い川がある

 

この本を読んでみてください係数 85/100


作家刑事毒島 (幻冬舎文庫)

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。

作品 「切り裂きジャックの告白」「贖罪の奏鳴曲」「追憶の夜想曲」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「連続殺人鬼カエル男」「ヒポクラテスの誓い」他多数

関連記事

『さよなら渓谷』(吉田修一)_書評という名の読書感想文

『さよなら渓谷』 吉田 修一 新潮社 2008年6月20日発行 さよなら渓谷 (新潮文庫)

記事を読む

『作家的覚書』(高村薫)_書評という名の読書感想文

『作家的覚書』高村 薫 岩波新書 2017年4月20日第一刷 作家的覚書 (岩波新書) 「図

記事を読む

『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ)_書評という名の読書感想文

『そして、バトンは渡された』瀬尾 まいこ 文春文庫 2020年9月10日第1刷 そして、バト

記事を読む

『その愛の程度』(小野寺史宜)_書評という名の読書感想文

『その愛の程度』小野寺 史宜 講談社文庫 2019年9月13日第1刷 その愛の程度 (講談社

記事を読む

『脊梁山脈』(乙川優三郎)_書評という名の読書感想文

『脊梁山脈』乙川 優三郎 新潮文庫 2016年1月1日発行 脊梁山脈 (新潮文庫) &n

記事を読む

『スリーピング・ブッダ』(早見和真)_書評という名の読書感想文

『スリーピング・ブッダ』早見 和真 角川文庫 2014年8月25日初版 スリーピング・ブッダ

記事を読む

『蜃気楼の犬』(呉勝浩)_書評という名の読書感想文

『蜃気楼の犬』呉 勝浩 講談社文庫 2018年5月15日第一刷 蜃気楼の犬 (講談社文庫)

記事を読む

『妻が椎茸だったころ』(中島京子)_書評という名の読書感想文

『妻が椎茸だったころ』中島 京子 講談社文庫 2016年12月15日第一刷 妻が椎茸だったころ

記事を読む

『 i (アイ)』(西加奈子)_西加奈子の新たなる代表作

『 i (アイ)』西 加奈子 ポプラ文庫 2019年11月5日第1刷 (2-1)i (ポプラ

記事を読む

『悪と仮面のルール』(中村文則)_書評という名の読書感想文

『悪と仮面のルール』中村 文則 講談社文庫 2013年10月16日第一刷 悪と仮面のルール (

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『死者のための音楽』(山白朝子)_書評という名の読書感想文

『死者のための音楽』山白 朝子 角川文庫 2013年11月25日初版

『騙る』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『騙る』黒川 博行 文藝春秋 2020年12月15日第1刷 騙

『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治)_書評という名の読書感想文

『ケーキの切れない非行少年たち』宮口 幸治 新潮新書 2020年9月

『ひとでちゃんに殺される』(片岡翔)_書評という名の読書感想文 

『ひとでちゃんに殺される』片岡 翔 新潮文庫 2021年2月1日発行

『藤色の記憶』(あさのあつこ)_書評という名の読書感想文

『藤色の記憶』あさの あつこ 角川文庫 2020年12月25日初版

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑