『あちらにいる鬼』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2019/04/30 『あちらにいる鬼』(井上荒野), 井上荒野, 作家別(あ行), 書評(あ行)

『あちらにいる鬼』井上 荒野 朝日新聞出版 2019年2月28日第1刷

あちらにいる鬼

小説家の父、美しい母、そして瀬戸内寂聴をモデルに、〈書くこと〉 と情愛によって貫かれた三人の 〈特別な関係〉 を長女である著者が描き切る、正真正銘の問題作。作家生活30周年及び朝日新聞出版10周年記念作品。(朝日新聞出版)

普通ではまずあり得ない世界のことがあります。素直な感想を言えば、事と次第ではこんなことがまかり通るのだ - ということです。

男にせよ、女にせよ、です。いろいろ理屈はありますが、二人は逢瀬を重ね、男は家庭を顧みず、女は世間を顧みません。思うがままに関係を続けます。

男の妻は、どんな思いでいたのでしょう。男と妻の間に生まれた娘にすれば、父は、母は、そして父の不倫相手はそれぞれに、どんなふうにみえたのでしょう。

幸か不幸か、娘はやがて小説を書くようになります。父や母と同様に。父の不倫相手ともまた同様に。

※言わずもがなですが、小説家の父というのが井上光晴で、その不倫相手が同じ小説家の瀬戸内寂聴をモデルにしています。(作中では井上光晴が白木篤郎、瀬戸内寂聴が長内みはるという名前で登場します)

篤郎と妻・笙子の間に生まれた長女・海里が、著者の井上荒野その人です。井上光晴と瀬戸内寂聴(俗名瀬戸内晴美)は当時から著名な小説家で、その上光晴の妻も、実は小説を書いていたのだそうです。

ひょっとすると、何も知らずに読むのがいいのかもしれません。いかにも可愛げなおばあちゃん顔をした今の瀬戸内寂聴さんを思い浮かべると、もういけません。不倫中の 「みはる」 が、その姿と重なって仕方なくなくなります。

この本を読んでみてください係数 80/100

あちらにいる鬼

◆井上 荒野
1961年東京都生まれ。
成蹊大学文学部英米文学科卒業。

作品 「潤一」「虫娘」「ほろびぬ姫」「グラジオラスの耳」「切羽へ」「つやのよる」「誰かの木琴」「ママがやった」「結婚」「赤へ」「その話は今日はやめておきましょう」他多数

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