『許されようとは思いません』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『許されようとは思いません』芦沢 央 新潮文庫 2019年6月1日発行

許されようとは思いません (新潮文庫)

あなたは絶対にこの 「結末」 を予測できない!   新時代到来を告げる、驚愕の暗黒ミステリ。

かつて祖母が暮らしていた村を訪ねた 「私」。祖母は、同居していた曾祖父を惨殺して村から追放されたのだ。彼女は何故、余命わずかだったはずの曾祖父を、あえて手にかけたのか・・・・・・・日本推理作家協会賞短編部門ノミネートの表題作ほか、悲劇を起こさざるを得なかった女たちを端整な筆致と鮮やかなレトリックで描き出す全五篇。(新潮社)

いずれも甲乙付け難い秀作が5編。これまで読んだ芦沢央の作品の中ではピカ一ではないかと。文句なく面白いと言えるものにやっと出会えた感じがします。

解説の池上冬樹氏曰く、全てが 「密度が濃く、技巧が凝らされていて、驚きの結末へともっていく。読むのが息苦しくなるほど世界が緊張にふるえている」- 正にその通りの読み応えだろうと。

(以下は、ややネタバレ気味の文章になります。読むと、驚きが半減するかもしれません。読むかどうかはお任せします)

五篇の中でいちばんの傑作は、姉のように だろう。事件を起こした姉のようにはならないために、自分の娘への虐待の衝動を抑えようとする話だ。姉は童話作家として活躍した誇るべき存在で、だからこそ事件は衝撃的で、主人公の は周囲の目を意識して生きていくのだけれど、三歳の娘はいうことをきかず、また夫も を理解してくれず、次第に精神的に追い込まれていく。

ひとつ歯車が狂いだすとどうしようもなく悪い方向へと転がっていく。我慢し、うまくたちまわろうとするものの、情況は容赦なく、幼児虐待に引き込まれていく主婦の心理を徹底的に捉えていて、読むのが辛くなる。

いったい結末はどうなるのかと思っていると、いやはや、最後に足元をすくわれるのだ。どんでん返しがあり、世界が一変する。いままで読んできたものを根底から覆す仕掛けで、あわてて冒頭にもどって確認すると、ちゃんとそこに事実が書いてある。

読者を巧みにリードしつつ、躾と暴力のあわいというテーマを強く訴えながらも、ミステリとしての仕掛けで驚かせる。見事なまでに作り込まれた傑作サスペンスだ。(解説より抜粋)

但し、それでもあなたは気付かないかもしれません。読み損じのないよう、くれぐれも注意してください。

目次
・目撃者はいなかった
・ありがとう、ばあば
・絵の中の男
・姉のように
・許されようとは思いません  

追伸 五篇とは別に、思わぬ場所に “付録” があります。「特別掌編」 を見逃さないようにしてください。

◆この本を読んでみてください係数 85/100

許されようとは思いません (新潮文庫)

◆芦沢 央
1984年東京都生まれ。
千葉大学文学部史学科卒業。

作品 「罪の余白」「今だけのあの子」「いつかの人質」「悪いものが、来ませんように」「火のないところに煙は」他

関連記事

『ゆれる』(西川美和)_書評という名の読書感想文

『ゆれる』西川 美和 文春文庫 2012年8月10日第一刷 ゆれる (文春文庫) &nb

記事を読む

『楽園の真下』(荻原浩)_書評という名の読書感想文

『楽園の真下』荻原 浩 文春文庫 2022年4月10日第1刷 「日本でいちばん天国に

記事を読む

『あなたならどうする』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『あなたならどうする』井上 荒野 文春文庫 2020年7月10日第1刷 あなたならどうする

記事を読む

『真夜中のマーチ』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『真夜中のマーチ』奥田 英朗 集英社文庫 2019年6月8日第12刷 真夜中のマーチ (集英

記事を読む

『奴隷商人サラサ/生き人形が見た夢』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『奴隷商人サラサ/生き人形が見た夢』大石 圭 光文社文庫 2019年2月20日初版 奴隷商人

記事を読む

『つやのよる』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『つやのよる』井上 荒野 新潮文庫 2012年12月1日発行 つやのよる 男ぐるいの女がひと

記事を読む

『よるのふくらみ』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『よるのふくらみ』窪 美澄 新潮文庫 2016年10月1日発行 よるのふくらみ (新潮文庫)

記事を読む

『おもかげ』(浅田次郎)_書評という名の読書感想文

『おもかげ』浅田 次郎 講談社文庫 2021年2月17日第4刷発行 おもかげ (講談社文庫)

記事を読む

『竜血の山』(岩井圭也)_書評という名の読書感想文

『竜血の山』岩井 圭也 中央公論社 2022年1月25日初版発行 北の鉱山に刻まれた

記事を読む

『リバー』(奥田英朗)_書評という名の読書感想文

『リバー』奥田 英朗 集英社 2022年9月30日第1刷発行 同一犯か? 模倣犯か

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『連鎖』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『連鎖』黒川 博行 中央公論新社 2022年11月25日初版発行

『夜に星を放つ』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『夜に星を放つ』窪 美澄 文藝春秋 2022年7月30日第2刷発行

『生命式』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『生命式』村田 沙耶香 河出文庫 2022年5月20日初版発行

『中尉』(古処誠二)_書評という名の読書感想文

『中尉』古処 誠二 角川文庫 2017年7月25日初版発行

『犬のかたちをしているもの』(高瀬隼子)_書評という名の読書感想文

『犬のかたちをしているもの』高瀬 隼子 集英社文庫 2022年9月1

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑