『幸せのプチ』(朱川湊人)_この人の本をたまに読みたくなるのはなぜなんだろう。

『幸せのプチ』朱川 湊人 文春文庫 2020年4月10日第1刷

幸せのプチ (文春文庫)

夜中になると町を歩き回るという、銀色の仮面をつけた男。
不気味な男の正体を探る少年に、中年の警官は言った。
「あの人は悪いことはしないから安心していい。いつか君にもわかるときがくる」-

都電が走るこの下町には、どこか不思議で、ささやかな奇跡が起きる。
ほっぺが落ちる 「ほそ長いコロッケパン」 に、みかければラッキーな 「白い野良犬」、迷路のような道路の先にそびえる銭湯の高い煙突、赤い公衆電話。

キミはもしかして、大切な人を亡くした経験があるのかい?

その町に出かければ、若い自分が残してきた苦い記憶、生きている限り忘れないあの光景に出会えるのだろうか。町の名前は、琥珀 (こはく)-

1970&1980年代の懐かしいアイテム、思い出を背景に繰り広げられる、ひとりひとりの切実な人生模様。文庫化で大幅に修正加筆! 涙腺決壊、追憶切実な連作集。(文藝春秋BOOKSより)

[目次]
第1話 追憶のカスタネット通り
第2話 幸せのプチ
第3話 タマゴ小町とコロッケ・ジェーン
第4話 オリオン座の怪人
第5話 夜に旅立つ

昭和40年代から50年代くらいにかけての東京の下町の話。当時の空気が色濃く漂うノスタルジックな物語は、特別なものは何ひとつ出てはきません。すべては出会いと別れで、それはいつの時代のどんな町であってもあるような見慣れた光景でしょう。

時に、不思議なことが起こります。しかし、思い起こしてみれば、それとよく似た経験をかつて自分もしたような、わかってみれば何でもないような、そんなことに怖気づいたり感動したりであったような気がします。大抵は、大したことではありません。

町の名前は 「琥珀」 といいます。時代の、そして町の “匂い” を感じてください。たぶん、若い人にはわからない。50歳を挟んで前後の人ならきっと伝わるはずです。

この本を読んでみてください係数 80/100

幸せのプチ (文春文庫)

◆朱川 湊人
1963年大阪府生まれ。
慶応義塾大学文学部卒業。

作品 「白い部屋で月の歌を」「都市伝説セピア」「花まんま」「さよならの空」「かたみ歌」「わくらば日記」「月蝕楽園」「冥の水底」他多数

関連記事

『渡良瀬』(佐伯一麦)_書評という名の読書感想文

『渡良瀬』佐伯 一麦 新潮文庫 2017年7月1日発行 渡良瀬 (新潮文庫) 南條拓は一家で

記事を読む

『ニューカルマ』(新庄耕)_書評という名の読書感想文

『ニューカルマ』新庄 耕 集英社文庫 2019年1月25日第一刷 ニューカルマ (集英社文庫

記事を読む

『宰相A』(田中慎弥)_書評という名の読書感想文

『宰相A』田中 慎弥 新潮文庫 2017年12月1日発行 宰相A (新潮文庫) 揃いの国民服

記事を読む

『また次の春へ』(重松清)_書評という名の読書感想文

『また次の春へ』重松 清 文春文庫 2016年3月10日第一刷 また次の春へ (文春文庫)

記事を読む

『起終点駅/ターミナル』(桜木紫乃)_書評という名の読書感想文

『起終点駅/ターミナル』桜木 紫乃 小学館文庫 2015年3月11日初版 起終点駅(ターミナル

記事を読む

『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』山田 詠美 幻冬舎文庫 1997年6月25日初版 ソウ

記事を読む

『世界から猫が消えたなら』(川村元気)_書評という名の読書感想文

『世界から猫が消えたなら』川村 元気 小学館文庫 2014年9月23日初版 世界から猫が消えた

記事を読む

『死んでいない者』(滝口悠生)_書評という名の読書感想文

『死んでいない者』滝口 悠生 文芸春秋 2016年1月30日初版 死んでいない者 &nb

記事を読む

『続々・ヒーローズ (株)!!! 』(北川恵海)_仕事や人生に悩む若いあなたに

『続々・ヒーローズ (株)!!! 』北川 恵海 メディアワークス文庫 2019年12月25日初版

記事を読む

『星々たち』(桜木紫乃)_書評という名の読書感想文

『星々たち』桜木 紫乃 実業之日本社 2014年6月4日初版 星々たち  

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『物語が、始まる』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『物語が、始まる』川上 弘美 中公文庫 2012年4月20日9刷

『魯肉飯のさえずり』(温又柔)_書評という名の読書感想文

『魯肉飯のさえずり』温 又柔 中央公論新社 2020年8月25日初版

『理系。』(川村元気)_書評という名の読書感想文

『理系。』川村 元気 文春文庫 2020年9月10日第1刷 理

『樽とタタン』(中島京子)_書評という名の読書感想文

『樽とタタン』中島 京子 新潮文庫 2020年9月1日発行 樽

『ミーナの行進』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『ミーナの行進』小川 洋子 中公文庫 2018年11月30日6刷発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑