『カウントダウン』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『カウントダウン』真梨 幸子 宝島社文庫 2020年6月18日第1刷

カウントダウン (宝島社文庫)

半年後までに、邪魔なものはみんな “片付ける” - 。海老名亜希子は 「お掃除コンシェルジュ」 として活躍する人気エッセイスト、五十歳・独身。歩道橋から落ちて救急車で運ばれ、その時の検査がきっかけで癌が見つかった。余命は半年。潔く “死” を受け入れた亜希子は、”有終の美” を飾るべく、梅屋百貨店の外商・薬王子涼子とともに “終活” に勤しむ。元夫から譲られた三鷹のマンションの処分。元夫と結婚した妹との決着。そして、過去から突きつけられる数々の課題。亜希子は邪魔なものを “片付けて” 終活に奮闘するが、マンションのクローゼットに大きな秘密を抱えていた - 。イヤミスの女王が放つ二転三転の “終活” ミステリー、待望の文庫化です。(ウェブサイト/版元ドットコムより)

主人公の海老名亜希子は、少々思い込みが激しい程度で、特に性悪女だというわけではありません。学生時代は成績優秀で、(得票数こそ少なかったものの) 生徒会長に立候補するほどの人物でした。

彼女は大手の印刷会社に就職します。しかし、それは彼女が最も望む就職先ではありませんでした。そのせいだったのか、その後の彼女のOL生活は必ずしも順調だったとは言えません。

ところが、”災い” 転じて何とやら、今や絶大な影響力を持つSNSの力もあって、あれよあれよという間に海老名亜希子は「お掃除コンシェルジュ」として活躍する人気エッセイストの地位を手に入れたのでした。

思うに、それは彼女にとって “破格” の出来事だったのでしょう。なろうと思ってなれたわけではありません。ある日、気付くと誰もが知る有名人になっていた - そんなことだったと思います。

それにつけても五十歳という年齢での癌告知はあまりに突然で、思いもしない出来事でした。彼女の人生の絶頂期に訪れた、この上ない不運であったことでしょう。

余命半年を宣告された亜希子には、死ぬまでに “片付け” なければならないことが、山ほどありました。自身のプライドにかけて - 決して人に知られてはならないこと。人として許すわけにはいかないこと。他にも、あれやこれやと・・・・。

終わり良ければ総て良し- 亜希子が考える有終の美とは、そういうものでした。

例えば、「お掃除コンシェルジュ」 として活躍する人気エッセイストでありながら、元夫と暮らした三鷹のマンションは荒れ放題で、”汚部屋” と呼ぶに相応しい状態になり果てています。

これを何とかせねばなりません。その状態は、彼女の表の顔と、あまりにギャップのあることでした。人に知られる前に、何としても始末しなければなりません。

やろうやろうと思いながらも、放置したままゴミ屋敷状態になったのは、全てが 「離婚」 が原因でした。ただの離婚ではありません。あろうことか、元夫は亜希子と離婚後、密かに付き合っていた亜希子の妹、美奈子と再婚したのでした。

この本を読んでみてください係数 80/100

カウントダウン (宝島社文庫)

◆真梨 幸子
1964年宮崎県生まれ。
多摩芸術学園映画科(現、多摩芸術大学映像演劇学科)卒業。

作品 「孤虫症」「えんじ色心中」「殺人鬼フジコの衝動」「深く深く、砂に埋めて」「女ともだち」「あの女」「みんな邪魔」「人生相談」「お引っ越し」他多数

関連記事

『月蝕楽園』(朱川湊人)_書評という名の読書感想文

『月蝕楽園』朱川 湊人 双葉文庫 2017年8月9日第一刷 月蝕楽園 (双葉文庫) 癌で入院

記事を読む

『ハコブネ』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『ハコブネ』村田 沙耶香 集英社文庫 2016年11月25日第一刷 ハコブネ (集英社文庫)

記事を読む

『孤独論/逃げよ、生きよ』(田中慎弥)_書評という名の読書感想文

『孤独論/逃げよ、生きよ』田中 慎弥 徳間書店 2017年2月28日初版 孤独論 逃げよ、生き

記事を読む

『イヤミス短篇集』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『イヤミス短篇集』真梨 幸子 講談社文庫 2016年11月15日第一刷 イヤミス短篇集 (講談

記事を読む

『兄の終い』(村井理子)_書評という名の読書感想文

『兄の終い』村井 理子 CCCメディアハウス 2020年6月11日初版第5刷 兄の終い

記事を読む

『風に舞いあがるビニールシート』(森絵都)_書評という名の読書感想文

『風に舞いあがるビニールシート』森 絵都 文春文庫 2009年4月10日第一刷 風に舞いあがる

記事を読む

『職業としての小説家』(村上春樹)_書評という名の読書感想文

『職業としての小説家』村上 春樹 新潮文庫 2016年10月1日発行 職業としての小説家 (新

記事を読む

『ギッちょん』(山下澄人)_書評という名の読書感想文

『ギッちょん』山下 澄人 文春文庫 2017年4月10日第一刷 ギッちょん (文春文庫) 四

記事を読む

『ここは、おしまいの地』(こだま)_書評という名の読書感想文

『ここは、おしまいの地』こだま 講談社文庫 2020年6月11日第1刷 ここは、おしまいの地

記事を読む

『凶犬の眼』(柚月裕子)_柚月裕子版 仁義なき戦い

『凶犬の眼』柚月 裕子 角川文庫 2020年3月25日初版 凶犬の眼 (角川文庫) 広

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『人間タワー』(朝比奈あすか)_書評という名の読書感想文

『人間タワー』朝比奈 あすか 文春文庫 2020年11月10日第1刷

『かか』(宇佐見りん)_書評という名の読書感想文

『かか』宇佐見 りん 河出書房新社 2019年11月30日初版

『希望病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『希望病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2020年11月11日初版

『JR上野駅公園口』(柳美里)_書評という名の読書感想文

『JR上野駅公園口』柳 美里 河出文庫 2017年2月20日初版

『裏アカ』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『裏アカ』大石 圭 徳間文庫 2020年5月15日初刷 裏アカ

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑