『カウントダウン』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/08
『カウントダウン』(真梨幸子), 作家別(ま行), 書評(か行), 真梨幸子
『カウントダウン』真梨 幸子 宝島社文庫 2020年6月18日第1刷

半年後までに、邪魔なものはみんな “片付ける” - 。海老名亜希子は 「お掃除コンシェルジュ」 として活躍する人気エッセイスト、五十歳・独身。歩道橋から落ちて救急車で運ばれ、その時の検査がきっかけで癌が見つかった。余命は半年。潔く “死” を受け入れた亜希子は、”有終の美” を飾るべく、梅屋百貨店の外商・薬王子涼子とともに “終活” に勤しむ。元夫から譲られた三鷹のマンションの処分。元夫と結婚した妹との決着。そして、過去から突きつけられる数々の課題。亜希子は邪魔なものを “片付けて” 終活に奮闘するが、マンションのクローゼットに大きな秘密を抱えていた - 。イヤミスの女王が放つ二転三転の “終活” ミステリー、待望の文庫化です。(ウェブサイト/版元ドットコムより)
主人公の海老名亜希子は、少々思い込みが激しい程度で、特に性悪女だというわけではありません。学生時代は成績優秀で、(得票数こそ少なかったものの) 生徒会長に立候補するほどの人物でした。
彼女は大手の印刷会社に就職します。しかし、それは彼女が最も望む就職先ではありませんでした。そのせいだったのか、その後の彼女のOL生活は必ずしも順調だったとは言えません。
ところが、”災い” 転じて何とやら、今や絶大な影響力を持つSNSの力もあって、あれよあれよという間に海老名亜希子は「お掃除コンシェルジュ」として活躍する人気エッセイストの地位を手に入れたのでした。
思うに、それは彼女にとって “破格” の出来事だったのでしょう。なろうと思ってなれたわけではありません。ある日、気付くと誰もが知る有名人になっていた - そんなことだったと思います。
それにつけても五十歳という年齢での癌告知はあまりに突然で、思いもしない出来事でした。彼女の人生の絶頂期に訪れた、この上ない不運であったことでしょう。
余命半年を宣告された亜希子には、死ぬまでに “片付け” なければならないことが、山ほどありました。自身のプライドにかけて - 決して人に知られてはならないこと。人として許すわけにはいかないこと。他にも、あれやこれやと・・・・。
“終わり良ければ総て良し” - 亜希子が考える “有終の美” とは、そういうものでした。
例えば、「お掃除コンシェルジュ」 として活躍する人気エッセイストでありながら、元夫と暮らした三鷹のマンションは荒れ放題で、”汚部屋” と呼ぶに相応しい状態になり果てています。
これを何とかせねばなりません。その状態は、彼女の表の顔と、あまりにギャップのあることでした。人に知られる前に、何としても始末しなければなりません。
やろうやろうと思いながらも、放置したままゴミ屋敷状態になったのは、全てが 「離婚」 が原因でした。ただの離婚ではありません。あろうことか、元夫は亜希子と離婚後、密かに付き合っていた亜希子の妹、美奈子と再婚したのでした。
この本を読んでみてください係数 80/100

◆真梨 幸子
1964年宮崎県生まれ。
多摩芸術学園映画科(現、多摩芸術大学映像演劇学科)卒業。
作品 「孤虫症」「えんじ色心中」「殺人鬼フジコの衝動」「深く深く、砂に埋めて」「女ともだち」「あの女」「みんな邪魔」「人生相談」「お引っ越し」他多数
関連記事
-
-
『火車』(宮部みゆき)_書評という名の読書感想文
『火車』宮部 みゆき 新潮文庫 2020年5月10日87刷 ミステリー20年間の第1
-
-
『人生相談。』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文
『人生相談。』真梨 幸子 講談社文庫 2017年7月14日第一刷 父が遺してくれた家に、見知らぬ家
-
-
『蹴りたい背中』(綿矢りさ)_書評という名の読書感想文
『蹴りたい背中』綿矢 りさ 河出文庫 2007年4月20日初版 これまでに幾度も書いているの
-
-
『カインは言わなかった』(芦沢央)_書評という名の読書感想文
『カインは言わなかった』芦沢 央 文春文庫 2022年8月10日第1刷 男の名は、
-
-
『屑の結晶』(まさきとしか)_書評という名の読書感想文
『屑の結晶』まさき としか 光文社文庫 2022年10月20日初版第1刷発行 最後
-
-
『羆嵐』(吉村昭)_書評という名の読書感想文
『羆嵐』吉村 昭 新潮文庫 2026年12月20日 62刷発行 6人殺害 三毛別ヒグマ事件
-
-
『殺人出産』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文
『殺人出産』村田 沙耶香 講談社文庫 2016年8月10日第一刷 今から百年前、殺人は悪だった。1
-
-
『金賢姫全告白 いま、女として』(金賢姫)_書評という名の読書感想文
『金賢姫全告白 いま、女として』金 賢姫 文芸春秋 1991年10月1日第一刷 この本を読んで、
-
-
『くちぶえ番長』(重松清)_書評という名の読書感想文
『くちぶえ番長』重松 清 新潮文庫 2020年9月15日30刷 マコトとは、それき
-
-
『携帯の無い青春』(酒井順子)_書評という名の読書感想文
『携帯の無い青春』酒井 順子 幻冬舎文庫 2011年6月10日初版 黒電話の前で、「彼」からの電話
















