『優しくって少しばか』(原田宗典)_書評という名の読書感想文

『優しくって少しばか』原田 宗典 1986年9月10日第一刷


優しくって少しばか (集英社文庫)

 

つい最近のことです。「文章が上手い」といって人から褒められた、と息子が言います。息子のブログを読んだ人が「原田宗典か、リリー・フランキーみたいな文章が書けるんじゃないか」と言ってくれたようなのです。

原田宗典とリリー・フランキー・・・。微妙な並びですが、その人が言いたいニュアンスは何となく分かります。そして、その人の年齢も。おそらく40歳を過ぎたくらいの人じゃないかと思います。もう少し年輩かも知れませんが、少なくとも若い人じゃない。

久しぶりに原田宗典という名前を聞いたような気がします。今から20年以上も前になりますが、私もこの人が書く小説やエッセイが好きでした。特にエッセイが面白くて、刊行されている数も小説を上回っているのではないかと思います。

その人が息子に言ったのは、きっと原田宗典が書いたエッセイをイメージしてのことだと思います。軽妙洒脱、バカっぽいのですが「そうだ、そうだ」と頷いてしまう。バカを装いながら、肝心なところはズバッと決めてみせる。それが痛快で、心地いいのです。

大人らしくない大人、決して大人ぶらない大人の男、と言えばいいのでしょうか。とにかくかっこよかったのです。こんな人になれたらいいと、一時期真面目に私は思っていました。でもなれんよな、ホントはめっちゃ頭のいい人やもんな、という諦めとともに。
・・・・・・・・・・
今回、敢えて原田宗典の「小説」を読み返してみようと思ったのは、息子の話のせいばかりではありません。息子のことだけなら、何度も言うようですがエッセイで良かったのです。

しかし、原田宗典の現在を思うとき、読むべきはやはり小説だと思ったのですが・・・。

やはり、読めないのです。内容以外の余計なことばかりが頭の中を占領して、読んでる気持ちになれません。何もなければガハハと笑えるようなふざけた場面でも、「こんなの書くのに、どんだけ辛い思いをしてたんだろう・・・」と、つい手を止めて考えてしまう。

そんなことの繰り返しでした。元々この人は小説が苦手だと公言していたのです。そんなことは知っていたし、小説とエッセイでは別人のようなのも承知の上でした。面白かったし、それがいいとさえ思っていました。何より、多くのファンがいたのです。
・・・・・・・・・・
「ふざけたことを大真面目にやる」彼のパフォーマンスは本物で、決して〈ふざけた〉だけのものではなかったと思います。きちんと行動に移し、しっかりエッセイにする作業には相応のエネルギーが必要だったろうとも思います。

でも、原田宗典が本当に書きたかったのは、彼が考える「本物の小説」だったのでしよう。でなければ、躁鬱病になどなるわけがない。まして、覚醒剤など論外です。才気溢れる人であるが故の悲劇、という他に言うべき言葉がありません。

『優しくって少しばか』は、ごく初期の6編からなる作品集です。巻頭の「優しくって少しばか」だけは別物ですが、あとの5編はサスペンス調で背筋が少々寒くなるような短編ばかりが揃っています。

 

◆この本を読んでみてください係数 80/100


優しくって少しばか (集英社文庫)

◆原田 宗典
1959年東京都新宿区新大久保生まれ。
早稲田大学第一文学部卒業。妹は、小説家の原田マハ。

作品 「時々、風と話す」「十九、二十」「しょうがない人」「何者でもない」「吾輩ハ苦手デアル」「透明な地図」「劇場の神様」「醜い花」他多数

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