『くちぶえ番長』(重松清)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2021/07/21 『くちぶえ番長』(重松清), 作家別(さ行), 書評(か行), 重松清

『くちぶえ番長』重松 清 新潮文庫 2020年9月15日30刷

くちぶえ番長 (新潮文庫)

マコトとは、それきり会うことはなかった。
引っ越してしばらくたった頃 - たしか五月だったと思う、あいつはちっとも手紙をくれないから、こっちからハガキを出してみた。「夏休みには泊りに来てください」 と書いたあと、一人で顔を赤くして 「・・・・・・・とパパもママも言ってます」 と付け加えた。

でもそのハガキ、ポストに投函した三日後に 「転居先不明」 のスタンプを捺されて戻ってきた。
引っ越してすぐにおばあさんの病気が重くなって、また別の町の病院に移ったらしい - と病院に電話をかけて調べてくれた父も、マコトたちが引っ越した先の住所は知らなかった。

マコトとぼくをつなぐ糸は、そこで切れてしまった。
おじさんになったいまでも、切れたままだ。
ぼくの手元に残っているのは、指人形の 『マコトくん』 と、マコトと一緒に過ごした小学四年生の一年間の思い出だけだ。(本文より)

(この作品は、2005年4月から2006年3月にわたって雑誌 『小学四年生』 に連載されたものに、書き下ろしを加えた、文庫オリジナル商品です)

小学四年生のツヨシとマコトの 「たかが一年。されど一年。」 が描かれています。

大人になった誰かの実話であるような。それを重松清が (多少なりとも) デフォルメして描いたファンタジーであるような。そのころ思う理想のカップルの、マコトがカノショで、カレシがツヨシであるような。そんな感じがします。

級長にふさわしく、ツヨシは何事もそつなくこなすタイプの少年でした。彼は常にクラス全体のことを考えています。一人の問題を優先するするよりも、クラス全体のことを考えるべし - これが当時の彼の、精一杯の “言いわけ” でした。

事を荒げたくないばかりに、彼の行動はやや消極的にならざるを得ません。あえて意見を言わず、見て見ぬふりをして過ごします。わざわざ自分が出しゃばらなくても、事は収まるのではないか - これが彼のモットーで、ツヨシはよくあるタイプの “ことなかれ主義者” でした。

そんなツヨシの勇気のなさを、みごとなまでの行動力で反転させた少女が現れます。それがマコトでした。転校してきた彼女は、開口一番 「わたし、この学校の番長になる」 と宣言します。級長でも他の係でもなく、「番長になる! 」 と言ったのでした。

ツヨシは既にこの段階で、自分にはない真っ正直さの塊のような、(しかもよく見るとちょっとかわいい) マコトに対し、(級長としても、一人の男子としても) 目が離せなくなっています。

小中学生必読! 心を育ててくれる名作。

小学四年生のツヨシのクラスに、一輪車とくちぶえの上手な女の子、マコトがやってきた。転校早々 わたし、この学校の番長になる! と宣言したマコトに、みんなはびっくり。でも、小さい頃にお父さんを亡くしたマコトは、誰よりも強く、優しく、友だち思いで、頼りになるやつだったんだ - 。サイコーの相棒になったマコトとツヨシが駆けぬけた一年間の、決して忘れられない友情物語。(新潮文庫)

※残念ながら、ツヨシの想いは成就しません。しかし、それはこの手の物語では 「定石」 としなければなりません。たとえ大人になった二人が再会したとしても、そこからはまた別の話が始まっていくはずです。だって二人は、もう小学四年生ではないのですから。

この本を読んでみてください係数 80/100

くちぶえ番長 (新潮文庫)

◆重松 清
1963年岡山県津山市生まれ。
早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。

作品「定年ゴジラ」「カカシの夏休み」「ビタミンF」「十字架」「流星ワゴン」「疾走」「カシオペアの丘で」「ナイフ」「星のかけら」「また次の春へ」「ゼツメツ少年」他多数

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