『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ)_書評という名の読書感想文

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ 新潮文庫 2021年7月1日発行

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫)

副題は、The Real British Secondary School Days  

はじめに、この本について当時中学二年生だった並木志織さんという女の子が書いた感想文 (の一部) を紹介します。何についてが書いてあり、何を学ぶべきかがとてもよくわかります。

本を読み進めていて、「そもそも人は何故人種や容姿、能力や考え方が違うと、奇異な目で見られたり差別されたりするのか? そうだとすると多様性はトラブルの原因になってしまうし、多様でない、均一な集団の方が平和なのではないか? 」 という疑問が湧いてきた。そんな私に 「母ちゃん」 が 「それは違うんじゃない? 」 と本の中から語りかけてくれた。「多様性ってやつは物事をややこしくするし、ケンカや衝突が絶えないし、そりゃない方が楽よ。多様性はうんざりするほど大変だしめんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う。」 と。

確かに多様性があるということは、自分とは違う個性や考え方が多種多様にあるということで、その分 「知らない」 「分からない」 ことが多くあるということだ。その時、他者について 「知ろう」 「理解しよう」 といった 「知ろうとする行動」 がないと、無知なまま偏見や差別が生まれるのだということを 「母ちゃん」 の言葉から学ばせてもらった。(原文ママ/解説より)

- ということで、ここで提案です。(たまには真面目になって)

・あらゆるジャンルにおける 「多様性」 ということについて考えてみましょう。
・複雑化する 「レイシズム」 について考えてみましょう。
・「エンパシー」 と 「シンパシー」 の違いについて考えてみましょう。
※ヒントはすべて作品中にあります。

さて、後先になりましたが、この本は英国・ブライトンで暮らす日本人女性のブレイディみかこさんが、当時中学生だった息子とのつき合いを通し、「地べた」の英国を一緒に見つめていく物語です。

貧困、差別、分断の様子などが取り上げられています。みかこさんの 「配偶者」 はアイルランド人で、当然のこと、一人息子の 「ぼく」 は日本人であり、また日本人ではありません。アイルランド人であり、またアイルランド人でもありません。

地元の元底辺中学校に入学した当初、それがもとで 「イエローでホワイト」 な 「ぼく」 は 「ちょっとブルー」 になり、それをノートにメモしたことがありました。

但し、心配は無用。母が母なら、息子も息子。彼は思う以上に気丈夫で、中学入学当初の完全アウェイな状況を、あっという間に “ホーム” に変えてみせます。

元来彼は冷静で、理知的な人間でした。滅多なことでは落ち込まず、その上敬虔なクリスチャンでもありました。一途に正統派な彼は、ほとんどが白人の中で唯一の “東洋人” でありながら、そのうち多くのクラスメイトの信頼を得るようになります。

人種も貧富の差もごちゃまぜの元底辺中学校に通い始めたぼく。人種差別丸出しの移民の子、アフリカからきたばかりの少女やジェンダーに悩むサッカー小僧。まるで世界の縮図のようなこの学校では、いろいろあって当たり前、みんなぼくの大切な友だちなんだ - 。ぼくとパンクな母ちゃんは、ともに考え、ともに悩み、毎日を乗り越えていく。最後はホロリと涙のこぼれる感動のリアルストーリー。(新潮文庫)

(本作 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 は、2019年の発刊。自身の子育てについて新潮社の雑誌 『波』 に月1回連載していたものがベースとなっています)

※最後に著者のことをちょっと詳しく。

ブレイディ みかこ (Brady Mikako、1965年6月7日生) はイギリス・ブライトン在住の保育士、ライター、コラムニスト。

福岡県福岡市生まれ。貧困家庭出身。日本在住の頃からパンクミュージックに傾倒し、ジョン・ライドン (ジョニー・ロットン) に感化される。高校を卒業して上京、そして渡英。ロンドンやダブリンを転々とし、無一文となって日本に戻ったが、1996年に再び渡英し、ブライトンに住み、ロンドンの日系企業で数年間勤務。その後フリーとなり、翻訳や著述を行う。英国在住は20年を超える。
英国では、保育士の資格を取得し、失業者や、低所得者が無料で子どもを預けられる託児所で働く。また、成人向けの算数教室のアシスタントを経験する。そこで経済格差を実感するとともに、算数の二ケタの計算ができない大勢の大人に接して教育格差にも驚きを感じたという。彼女はもともと 「Yahoo! ニュース個人」 で政治時評や、社会時評を書いており、託児所が英国の緊縮財政で潰れるのを経験し、反緊縮の考えを強く持つようになったという。(wikipediaからの抜粋)

この本を読んでみてください係数 85/100

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫)

◆ブレイディみかこ
1965年福岡県生まれ。
県立修猷館高校卒。’96年から英国ブライトン在住。

作品 「子どもたちの階級闘争」他多数。本作でYahoo! ニュース|本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞を受賞。

関連記事

『未必のマクベス』(早瀬耕)_書評という名の読書感想文

『未必のマクベス』早瀬 耕 ハヤカワ文庫 2017年7月25日発行 未必のマクベス (ハヤカワ

記事を読む

『盤上に散る』(塩田武士)_書評という名の読書感想文 

『盤上に散る』塩田 武士 講談社文庫 2019年1月16日第一刷 盤上に散る (講談社文庫)

記事を読む

『優しくって少しばか』(原田宗典)_書評という名の読書感想文

『優しくって少しばか』原田 宗典 1986年9月10日第一刷 優しくって少しばか (集英社文庫)

記事を読む

『少年と犬』(馳星周)_書評という名の読書感想文

『少年と犬』馳 星周 文藝春秋 2020年7月25日第4刷 【第163回 直木賞受賞作】少年

記事を読む

『ふたりの距離の概算』(米澤穂信)_書評という名の読書感想文

『ふたりの距離の概算』米澤 穂信 角川文庫 2012年6月25日初版 ふたりの距離の概算 (角

記事を読む

『ひらいて』(綿矢りさ)_書評という名の読書感想文

『ひらいて』綿矢 りさ 新潮社文庫 2015年2月1日発行 ひらいて (新潮文庫) 文庫の解説は

記事を読む

『笑う山崎』(花村萬月)_書評という名の読書感想文

『笑う山崎』花村 萬月 祥伝社 1994年3月15日第一刷 笑う山崎 (ノン・ポシェット) 「山崎

記事を読む

『八月の路上に捨てる』(伊藤たかみ)_書評という名の読書感想文

『八月の路上に捨てる』伊藤 たかみ 文芸春秋 2006年8月30日第一刷 八月の路上に捨てる

記事を読む

『ひりつく夜の音』(小野寺史宜)_書評という名の読書感想文

『ひりつく夜の音』小野寺 史宜 新潮文庫 2019年10月1日発行 ひりつく夜の音 (新潮文

記事を読む

『姫君を喰う話/宇能鴻一郎傑作短編集』(宇能鴻一郎)_書評という名の読書感想文

『姫君を喰う話/宇能鴻一郎傑作短編集』宇能 鴻一郎 新潮文庫 2021年8月1日発行 姫君を

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

『5時過ぎランチ』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文

『5時過ぎランチ』羽田 圭介 実業之日本社文庫 2021年10月15

『きみはだれかのどうでもいい人』(伊藤朱里)_書評という名の読書感想文

『きみはだれかのどうでもいい人』伊藤 朱里 小学館文庫 2021年9

『はるか/HAL – CA』(宿野かほる)_書評という名の読書感想文

『はるか/HAL - CA』宿野 かほる 新潮文庫 2021年10月

『変な家』(雨穴)_書評という名の読書感想文

『変な家』雨穴 飛鳥新社 2021年9月10日第8刷発行 変な

『でえれえ、やっちもねえ』(岩井志麻子)_書評という名の読書感想文

『でえれえ、やっちもねえ』岩井 志麻子 角川ホラー文庫 2021年6

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑