『星々の悲しみ』(宮本輝)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2018/05/21
『星々の悲しみ』(宮本輝), 作家別(ま行), 宮本輝, 書評(は行)
『星々の悲しみ』宮本 輝 文春文庫 2008年8月10日新装版第一刷
喫茶店に掛けてあった絵を盗み出す予備校生たち、アルバイトで西瓜を売る高校生、蝶の標本をコレクションする散髪屋-。若さ故の熱気と闇に突き動かされながら、生きることの意味を求める青年たち。永遠に変わらぬ青春の美しさ、悲しさ、残酷さを、みごとな物語と透徹したまなざしで描く傑作短編集。(「BOOK」データベースより)
表題作の「星々の悲しみ」を読み始めると、非常に懐かしい感触に包まれます。例えて言うと、教科書以外の本を初めて手にした頃に時間が戻ったような、少し甘酸っぱくて、いかにも〈初々しかった〉時代にタイムスリップしたような気分がします。
単行本の刊行は1981年(昭和56年)、すでに34年という長い年月が経過しています。どうしても〈昔の話〉を読んでいるという感覚は拭えないかも知れませんが、私などはかえってそれが心地よく感じられます。滅多に読まない分、やけに新鮮です。
元々、私は宮本輝の読者ではありません。かろうじて『泥の河』を読んだ記憶があるくらいで、以後は一切読んでいません。私と同年代の中には多くのファンがおられると思うのですが、なぜか読もうという気になれずにいました。
改めてその理由を考えようとしたら、なんと田中和生氏が解説で書いてくれているではないですか。田中氏は自分が富山出身でなければ(宮本輝の代表作で芥川賞受賞作『螢川』は富山が舞台になっています)宮本輝は読まなかったかもしれないと断った上で、こんな風に書いています。
(田中氏が)日本の小説に興味を持ち始めたのは1990年頃、その頃の宮本輝というのは例えるなら斉藤由貴が主演した映画「優駿」の原作者の名前で、「現代文学」とは村上龍や村上春樹や島田雅彦や吉本ばななが書くようなもの、という印象だったこと。
都会的で、従来の私小説とは違った新しい書き方で、個人としての自由を追求しているように見える彼らの作品に対して、宮本輝のそれは、親と子の世代が濃密にかかわり、それほど自己主張しない書き方で、地域社会に根ざした人間の生活を描いており、唐突なほど異質だった、と振り返っています。
・・・・・・・・・・
非常に優しい言い方をしていますが、要は、もし「富山」という共通語が介在しなければ、田中氏は宮本輝という作家に興味を抱くことはなかった、ということ。宮本輝という名前は十分に知っているけれど、どうも時代にそぐわない。良い小説を書く人であるのは分かっていても、オーソドックス故に刺激に乏しく、つい後回しにしてしまう。(これは田中氏ではなく)私にとって、宮本輝とはそんな作家でした。
今回は「永遠に変わらぬ青春の美しさ、悲しさ、残酷さを、みごとな物語と透徹したまなざしで描く」というフレーズについ絆されて、思わずという感じで新装なった文庫を買ってしまいました。ホントにホント、つい買ってしまったのです。
この本を読んでみてください係数 80/100
◆宮本 輝
1947年兵庫県神戸市生まれ。本名は宮本正仁。
追手門学院大学文学部卒業。
作品 「泥の河」「螢川」「優駿」「約束の冬」「骸骨ビルの庭」「三千枚の金貨」他多数
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