『木曜日の子ども』(重松清)_書評という名の読書感想文

『木曜日の子ども』重松 清 角川文庫 2022年1月25日初版

木曜日の子ども (角川文庫)

世界の終わりを見たくはないか - ? ”あいつの影が息子を奪う。父親になろうとした男は、絶望の先に広がる光景に涙する。

7年前、旭ヶ丘の中学校で起きた、クラスメイト9人の無差別毒殺事件。結婚を機にその地に移った私は、妻の連れ子である14歳の晴彦との関係をうまく築けずにいた。晴彦は、犯人の上田祐太郎の面影があるらしい。上田が社会に復帰したこの夏、ある噂が流れる - 世界の終わりを見せるため、ウエダサマが降臨した。やがて近所で飼い犬の変死、学校への脅迫が相次ぎ、私と晴彦の距離は縮まらないまま、再び 「事件」 が起きる。(角川文庫)

7年前の夏、そこは日本中のどこよりも有名なニュータウンだった。街の歴史から住民の平均年収まで、さまざまな情報がマスコミを通じて全国に流された。
事件が起きたのだ。
旭ヶ丘というありふれた地名は、その夏以来、特別な意味を帯びて語られるようになった。

事件の日時は、7月1日 - その日のお昼前、旭ヶ丘中学校宛てに一通の封書が届いたところから、すべては始まったのだ。
中に入っていたのは、コピー用紙が一枚。パソコンの文字で一行だけ書いてあった。

〈もうすぐたくさんの生徒が死にます みんな木曜日の子どもです〉

- 交番の警官が着いたときには、もう事件は終わっていた。
死亡した生徒9名。
入院した生徒21名 - うち3名は、一時昏睡状態に陥る重症だった。

すべて、2年1組の生徒だった。
給食の野菜スープに、毒物が混入されていた。ワルキューレという名前で一般に知られる、無色無臭の化合物だった。

犯人は2年1組の男子生徒だった。
彼は事件の現場にいた。31人の生徒のうち、ただ一人無事だった。

警察はすぐさま少年を逮捕し、両親に連絡をとって、家宅捜索のために自宅を訪れた。
捜査員はそこで、もう一つの事件を知ることになる。

7年前の夏 - 。
私は35歳で、独り身だった。結婚をするつもりはなかったし、ましてや自分が父親になるなど、想像したことすらなかった。

7年後のいま - 。
42歳の私には、家族が二人いる。同い年の妻の香奈恵と、中学2年生の一人息子、晴彦 - 正確には、いまはまだ
晴彦くんと紹介したほうがいい。

7年後の未来には、くん抜きで呼んでいたい。その頃、彼は21歳だ。二人で酒を酌み交わせるような、そんな父と息子になっていたい。
だから、いまの私には、木曜日の子ども事件は決して他人事ではない。
閑静な住宅街の旭ヶ丘を襲った悲劇を、海の向こうの国の戦争と同じように遠目で眺めることは、もう、できないのだ。
(P16 本文より)

私は、息子となった晴彦との関係に今ひとつ自信が持てずにいます。大人しく従順な晴彦を、額面通りに受け取ることが出来ません。薄々わかるのですが、彼は嘘の自分を装っています。私に対し、端から心を開くつもりはないような、そんな風に思えてなりません。

晴彦は、以前いた富士見台の中学校で凄絶ないじめを経験しています。母親の再婚を機に、(私を含む) 三人は旭ヶ丘ニュータウンに新居を移し、晴彦が旭ヶ丘中学校に転校してからは、それはもはや過去の話であるべきはずのものでした。

ところが、事実はそうではなかったことがわかります。加えて、晴彦にはかつて同級生を9人も毒殺した犯人・上田祐太郎の面影がありました。間近で見るとまるで違うのですが、上田をよく知る人からは “ひと違い” されることがありました。それほど二人は、”気配” がよく似ています。

やがて上田が社会復帰したと知らされます。すると時を同じくして、近所の飼い犬が変死し、学校に脅迫状が届きます。そして晴彦は、相も変わらず、いもしない同級生の高木くんと会うために、連日家を留守にしています。

この本を読んでみてください係数 85/100

木曜日の子ども (角川文庫)

◆重松 清
1963年岡山県津山市生まれ。
早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。

作品「定年ゴジラ」「カカシの夏休み」「ビタミンF」「十字架」「流星ワゴン」「疾走」「カシオペアの丘で」「ナイフ」「星のかけら」「また次の春へ」「ゼツメツ少年」他多数

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