『JK』(松岡圭祐)_書評という名の読書感想文
公開日:
:
最終更新日:2024/01/06
『JK』(松岡圭祐), 作家別(ま行), 書評(さ行), 松岡圭祐
『JK』松岡 圭祐 角川文庫 2022年5月25日初版
読書メーター(文庫部門/週間) 2022/3/30~4/5 読みたい本ランキング 第1位
逗子の山中で発見された一家3人の焼死体。川崎にある懸野高校の1年生・有坂紗奈が両親と共に惨殺された。犯人は紗奈と同じ学校の同級生や上級生からなる不良グループであることが公然の事実とされたが、警察は決定的な証拠をあげることができず、彼らの悪行が止まることはなかった。しかし、1人の少女、高校1年生の江崎瑛里華が現れて事態は急展開をとげる。人気シリーズ 「高校事変」 を超える、青春バイオレンス文学! (角川文庫)
冒頭 - 極めて残虐、極めて非道な場面が続きます。情け容赦ない暴力と、果てしなく続く凌辱は、今後起こるであろう (物語の) 展開を、あれこれ予想しながらでも読んでください。でないと、気分が萎えて、読む気をなくすかもしれません。それほどに状況は苛烈かつ残忍です。
解説 - 新たなる武闘派ヒロインの誕生 村上 貴史
神奈川県川崎市の懸野高校。
そこには、人々に慕われる一年生の女子がいた。
有坂紗奈。
ダンスサークルの中心的存在であり、吹奏楽部ではフルートで聴く者を魅了する。アルバイト先の介護施設でも、掛け持ちしているコンビニエンスストアでも人気者だ。彼女はさらに、校内で不良に絡まれている同学年の生徒にも救いの手を伸ばす強さを備えている。その一方で紗奈は、実は、鬱病の母を抱えていた。バイトの掛け持ちも家計を助けるためなのだが、彼女は苦労を一切見せず、高校生活を送っていた。
そんな紗奈と両親を、同じ学校の同級生や上級生たちが襲った。高校生とはいえ、川崎のヤクザの配下にある凶悪な連中が、暴虐の限りを尽くしたのだ。笹舘麴をリーダーとする彼等は紗奈の父親を笑いながら殺し、さらに母親を殺すと脅して紗奈を繰り返し凌辱した。男子高校生たちはその後、母親も殺したうえで、ヤクザに後始末を依頼する。両親の死体と、瀕死ながらもまだ息のあった紗奈を、事件が発覚しないように処分して欲しいと頼んだのだ。依頼を受けたヤクザは、死体の処理屋を使って、三人まとめて逗子の山中で焼いてしまうことにする・・・・・・・。
とことん強烈な導入部である。著者は一切の容赦なしに高校一年生の紗奈を痛めつける。それだけでも十分にインパクトが強いのだが、残虐な行為を重ねるのが、紗奈と同世代の男子高校生たちであることも、絶望感をつのらせる。正直言ってこのシーンを読むと、心は負の感情に囚われてしまう。だが、同時に思うのだ、この物語は、ここからどう進むのだろうか、と。(以下略)
※ここから先が本番です。で、ここから先は書きません。尚、「JK」 は女子高生を意味しているわけではありません。何を意味しているかは本書の序盤で語られています。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆松岡 圭祐
1968年愛知県生まれ。
作品 デビュー作 「睡眠」 がミリオンセラーに。「千里眼」シリーズ、「万能鑑定士Q」シリーズ、「ミッキーマウスの憂鬱」「黄砂の籠城」「高校事変」シリーズ他多数
関連記事
-
『サクリファイス』(近藤史恵)_書評という名の読書感想文
『サクリファイス』近藤 史恵 新潮文庫 2010年2月1日発行 ぼくに与えられた使命、それは勝利の
-
『いかれころ』(三国美千子)_書評という名の読書感想文
『いかれころ』三国 美千子 新潮社 2019年6月25日発行 「ほんま私は、いかれ
-
『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ)_書評という名の読書感想文
『52ヘルツのクジラたち』町田 そのこ 中央公論新社 2021年4月10日15版発行
-
『砂に埋もれる犬』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文
『砂に埋もれる犬』桐野 夏生 朝日新聞出版 2021年10月30日第1刷 ジャンル
-
『チヨ子』(宮部みゆき)_書評という名の読書感想文
『チヨ子』宮部 みゆき 光文社文庫 2011年7月20日初版 五年前に使われたきりであちこち古びて
-
『残穢』(小野不由美)_書評という名の読書感想文
『残穢』小野 不由美 新潮文庫 2015年8月1日発行 この家は、どこか可怪しい。転居したばかりの
-
『人生相談。』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文
『人生相談。』真梨 幸子 講談社文庫 2017年7月14日第一刷 父が遺してくれた家に、見知らぬ家
-
『三度目の恋』(川上弘美)_書評という名の読書感想文
『三度目の恋』川上 弘美 中公文庫 2023年9月25日 初版発行 そんなにも、彼が好きなの
-
『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』(滝口悠生)_書評という名の読書感想文
『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』滝口 悠生 新潮文庫 2018年4月1日発行 東北へのバ
-
『1R 1分34秒』(町屋良平)_書評という名の読書感想文
『1R 1分34秒』町屋 良平 新潮社 2019年1月30日発行 デビュー戦を初回