『鈴木ごっこ』(木下半太)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2016/03/14
『鈴木ごっこ』(木下半太), 作家別(か行), 書評(さ行), 木下半太
『鈴木ごっこ』木下 半太 幻冬舎文庫 2015年6月10日初版
世田谷区のある空き家にわけありの男女四人(男三人、女一人)が集められる。四人には、ヤクザに多額の借金があった。借金を返済するためには、『鈴木』を名乗り、家族を演じること。一年間、近所に気づかれず家族として過ごせれば借金がチャラになるのだ。
戸惑いながらも、家族を演じる四人。三ヶ月後、ヤクザから新しい指令が出る。「隣の二階堂家の奥さんを落とせ」驚く四人は、何とか協力し、隣の奥さんを落とす作戦に出る。その中で、四人は自分の人生を振り返って反省し、生まれ変わる決意をする。
そして、一年が経ち、鈴木として最後の日。『鈴木ごっこ』の秘密が明かされる・・・。(木下半太オフィシャルブログより)
タイトルに惹かれて読んでみました。とりあえず、話の内容は大凡分かりますよね。帯には「まったくの他人である4人の男女が「鈴木家」を演じる疑似家族ゲーム! 」とあり、「ラスト7行の恐怖にあなたは耐えられるか?」と、やや大げさな文字が踊っています。
夏には、映画になることが決まっているようです。映画のタイトルは『家族ごっこ』、不思議な家族をテーマにしたシュールなオムニバス映画というふれ込みです。ちなみに「鈴木ごっこ」の他には「佐藤家の通夜」「父の愛人たち」「貧乳クラブ」「高橋マニア」・・・、何やら「世にも奇妙な物語」風で面白そうではないですか。
こうなったら、宣伝ついでに主な出演者を紹介しておくと、今が人気の斎藤工を始めとして、柄本時生、小林茂光、霧島れいか、といった面々。監督はもちろん著者である木下半太。元々この人の本業はお芝居ですから、これは当然のこと。映画の公開は8月1日の土曜日から。新宿K’s cinema 他を皮切りに、全国順次公開予定となっています。
・・・・・・・・・・
スミマセン、ここまではほぼ全面的に文庫に巻かれた帯の受け売りです。手抜きと言われても致し方ないところですが、これでもちゃんと読むには読んで書いているのです。
読んだ上で、敢えて言いますが、映画の方がきっと面白い。そんな気がします。小説がダメだと言う訳ではないのですが、上手く出来ていてすんなり読める分、後に残るインパクトが少々弱くてあっけない。これがドラマの演出にかかれば、かなりゾッとする後味に仕上がると思うのです。
その違いを確認するために、まずはこの本を読み、そして映画を観ようではありませんか。夏休みの、ささやかな娯楽になると思います。
この本を読んでみてください係数 75/100
◆木下 半太
1974年大阪府茨木市生まれ。
18歳で予備校に通いながらパチプロになるが、大学受験は失敗。劇団「渋谷ニコルソンズ」主宰。
作品 「悪夢のエレベーター」「悪夢の観覧車」「悪夢の六号室」「宝探しトラジェディー」「オーシティー」「サンブンノイチ」他多数
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