『煙霞』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/13 『煙霞』(黒川博行), 作家別(か行), 書評(か行), 黒川博行

『煙霞』黒川 博行 文芸春秋 2009年1月30日第一刷

WOWOWでドラマになっているらしい。

北新地のホステスと欧州視察旅行に出かける理事長を誘拐した美術講師の熊谷と音楽教諭の菜穂子。私学助成金の不正受給をネタに正教員の資格を得ようとするが、二人を操る黒幕の狙いは理事長の隠し財産だった。教育現場の闇は100キロの金塊に姿を変え、悪党たちを翻弄する。元高校教師の著者が描く痛快ミステリー。(「BOOK」データベースより)

書店へ行ったら、えらいド派手に文庫が積まれています。森山未來の、不敵な面構えが嫌でも目に付きます。森山未來はすごく好きな役者さんですが、それにしても見事なワル顔で、少し上目で睨めつけるような視線が何とも素晴らしい。

あの表情だけで、どんなドラマか観たくなります。相手役の高畑充希チャンも可愛いし、他にも関西出身の個性的な俳優さんがたくさん出演しているようです。木村祐一の悪党ぶりなんかもぜひ観てみたい。しれーっとした顔で、きっとツッコミまくるんやろなー。
・・・・・・・・・
熊谷が勤めているのは、学校法人晴峰学園・晴峰女子高等学校。この学園の経営は理事長である酒井のワンマンで、教師たちの多くが何がしかの不満を抱えています。

常勤とは言え未だに講師の身分で、約束だったはずの正教員になれずにいる熊谷も例外ではありません。ことによると次の人事では、条件も環境も悪い他校へ異動させられるかも知れないという状況に鬱々としています。

そんなところへ、同じく身分保障を求める体育講師の小山田がある計画を持ってきます。計画は杜撰でしかもかなり乱暴なものですが、最終的に熊谷は音楽教諭の正木菜穂子と一緒に、この計画に乗ることを決心します。

ところが、理事長の酒井を追い詰めて交渉するまではそれなりに予定通りだったのですが、そのあとがいけません。事態は思わぬ方向へ転がっていきます。

(ドラマでもきっとそうでしょうが)小説の方は、ちょっと頼りなさげの熊谷と気の強い菜穂子の掛け合いがホントに面白い。悪党たちとの騙し合いも、最後まで目が離せません。

理事長と愛人が失踪するあたりまでは、ちょっと我慢して読んでください。そこを過ぎると、急に話の展開が加速します。あとは最後まで怒涛の一気読みです。

この本を読んでみてください係数 80/100


◆黒川 博行
1949年愛媛県今治市生まれ。6歳の頃に大阪に移り住み、現在大阪府羽曳野市在住。
京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業。妻は日本画家の黒川雅子。
スーパーの社員、高校の美術教師を経て、専業作家。無類のギャンブル好き。

作品 「二度のお別れ」「左手首」「雨に殺せば」「ドアの向こうに」「絵が殺した」「疫病神」「国境」「悪果」「文福茶釜」「暗礁」「螻蛄」「破門」「後妻業」「勁草」他多数

◇ブログランキング

いつも応援クリックありがとうございます。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

関連記事

『幻年時代』(坂口恭平)_書評という名の読書感想文

『幻年時代』坂口 恭平 幻冬舎文庫 2016年12月10日初版 4才の春。電電公社の巨大団地を出て

記事を読む

『紙の月』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『紙の月』 角田 光代  角川春樹事務所 2012年3月8日第一刷 映画 『紙の月』 の全国ロー

記事を読む

『カエルの小指/a murder of crows』(道尾秀介)_書評という名の読書感想文

『カエルの小指/a murder of crows』道尾 秀介 講談社文庫 2022年2月15日第

記事を読む

『大阪』(岸政彦 柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『大阪』岸政彦 柴崎友香 河出書房新社 2021年1月30日初版発行 大阪に来た人

記事を読む

『傲慢と善良』(辻村深月)_書評という名の読書感想文

『傲慢と善良』辻村 深月 朝日新聞出版 2019年3月30日第1刷 婚約者が忽然と

記事を読む

『小説 学を喰らう虫』(北村守)_最近話題の一冊NO.2

『小説 学を喰らう虫』北村 守 現代書林 2019年11月20日初版 『小説 学を

記事を読む

『改良』(遠野遥)_書評という名の読書感想文

『改良』遠野 遥 河出文庫 2022年1月20日初版発行 これが、芥川賞作家・遠野

記事を読む

『孤独論/逃げよ、生きよ』(田中慎弥)_書評という名の読書感想文

『孤独論/逃げよ、生きよ』田中 慎弥 徳間書店 2017年2月28日初版 作家デビューまで貫き通し

記事を読む

『カルマ真仙教事件(上)』(濱嘉之)_書評という名の読書感想文

『カルマ真仙教事件(上)』濱 嘉之 講談社文庫 2017年6月15日第一刷 警視庁公安部OBの鷹田

記事を読む

『村上春樹は、むずかしい』(加藤典洋)_書評という名の読書感想文

『村上春樹は、むずかしい』加藤 典洋 岩波新書 2015年12月18日第一刷 久方ぶりに岩波

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係 SIT 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係 SIT 』誉田 哲也 中公文庫 202

『血腐れ』(矢樹純)_書評という名の読書感想文

『血腐れ』矢樹 純 新潮文庫 2024年11月1日 発行 戦慄

『チェレンコフの眠り』(一條次郎)_書評という名の読書感想文

『チェレンコフの眠り』一條 次郎 新潮文庫 2024年11月1日 発

『ハング 〈ジウ〉サーガ5 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ハング 〈ジウ〉サーガ5 』誉田 哲也 中公文庫 2024年10月

『Phantom/ファントム』(羽田圭介)_書評という名の読書感想文 

『Phantom/ファントム』羽田 圭介 文春文庫 2024年9月1

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑