『ふたり狂い』(真梨幸子)_書評という名の読書感想文

『ふたり狂い』真梨 幸子 早川書房 2011年11月15日発行


ふたり狂い (ハヤカワ文庫JA)

 

『殺人鬼フジコの衝動』を手始めに、『女ともだち』『あの女』『孤虫症』と続けて4冊読みました。噂に違わぬエログロと後味の悪さに加え、各作品ごとの、周到に準備された筋書きがみごとで、一々驚いたり感心したりしていたのです。

そして、この『ふたり狂い』 - いきなり【エロトマニア】なんて章から始まります。これはもう間違いなく面白い、面白くない訳がない。・・・そう思って、読み始めたのです。
他の人だって、きっとそうだと思います。

女性誌「フレンジー」の人気連載小説「あなたの愛へ」。その同姓同名の主人公が自分だと思い込んだ川上孝一は、思い余って著者の榛名ミサキを刺してしまう。それに端を発して起こる、デパ地下惣菜売り場での異物混入事件、ネットでの企業中傷事件、そして郊外マンションでの連続殺人 - だが、その背後には謎の女マイコの存在があった・・・。現代人のささやかな狂気と、連鎖する因縁の果てに明かされる驚愕すべき真実とは? 「殺人鬼フジコの衝動」の著者が仕掛ける、もうひとつの罠。(「BOOK」データベースより)

しかし、どうにもこれまでとは調子が違うのです。上手く言えないのですが、話の〈大枠〉みたいなものを、自分が分かって読んでいるのか、分からないままスルーしているだけなのか、そもそもが分からなくなってきて、ストレスばかりが溜まってくるのです。

たぶん、これに尽きるのですが、やたらと多い登場人物とその人物たちがいくつもの章を跨いで出たり入ったりするせいで、頭の整理が追いつかないのです。それこそ相関図でも作らないことには、途中で訳が分からなくなります。要するに、ややこしすぎるのです。

この小説では、主要な登場人物の誰が正気で、誰が狂っているのか、それが最後まで分からない仕掛けになっています。そして、おそらくそうすることが真梨幸子の一番の企みだと思います。だからこそ、それ以外の事はなるだけシンプルに書いてほしかった。

軽い気持ちで読み始めた私が理解できないだけなら良いのですが、唖然としたのは、書評家の大矢博子サンの解説です。こんなことが書いてあります。

この『ふたり狂い』は、ドロドロのイヤ汁小説を読み慣れた読者をも唸らせる作品であると同時に、これから真梨幸子を読むというビギナーにうってつけの入門書でもあるのだ。

オイオイ! それはあまりに無責任な。「ビギナーにうってつけの入門書」って、あなた、どこをどう読んだらそんなトンチンカンなことが言えるのですか? おかしい。どう好意的に考えても、そんな訳ないのです。

真梨幸子の小説を堪能したければ、この小説は、むしろ後回しにすべき作品です。失礼を承知で言えば、読まなくてもいい。読めばストレスが溜まるだけ。もう少し、あともう少し読めば面白くなるはずだと信じて読んで、結局最後まで半端な気分が晴れることはありません。

こんなのを最初に読まされた〈ビギナー〉は、もう二度と真梨幸子の小説に手を出さなくなることだってあるかも知れません。余計なことに惑わされず話に没頭して、一心不乱に読み耽る。まずは、それこそが、この手の小説の最大の魅力だろうと思います。

ですから、不幸にしてこの小説を読んだ〈ビギナー〉のみなさんに対して、私は大矢博子サンとは真逆のことを伝えたいと思います。

みなさん、真梨幸子の小説はこんなややこしくて分かりづらい小説ではありません。他の作品はとても分かりやすくて読みやすく、その上とっても気色の悪い小説なのです。

 

この本を読んでみてください係数 70/100


ふたり狂い (ハヤカワ文庫JA)

◆真梨 幸子
1964年宮崎県生まれ。
多摩芸術学園映画科(現、多摩芸術大学映像演劇学科)卒業。

作品 「孤虫症」「えんじ色心中」「殺人鬼フジコの衝動」「深く深く、砂に埋めて」「女ともだち」「あの女」「人生相談」「お引っ越し」他多数

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