『サンブンノニ』(木下半太)_書評という名の読書感想文

『サンブンノニ』木下 半太 角川文庫 2016年2月25日初版


サンブンノニ (角川文庫)

 

銀行強盗で得た大金を山分けし、日本各地に潜伏していたシュウ、コジ、健さん。だが、3人とも〈川崎の帝王〉破魔翔に見つかり、連れ戻されてしまう。そして命じられたのは、「〈川崎の魔女〉の現金輸送車の奪取」だった・・・・! 北海道から新たな勢力も進出し、3人はまたもや裏社会の覇権を巡る争いに巻き込まれる。息つく間もない駆け引きと騙し合い。果たしてシュウたちはどん底から抜け出せるのか? 驚異のノンストップ・エンターテイメント! (角川文庫解説より)

前に『鈴木ごっこ』という小説を読んで、これが意外と面白かったので読んでみようという気になりました。(失礼な言い方ですみません)

途中で投げ出さずとりあえず最後まで読んだので、面白く、なくはないんだろうと思います。(何といういい加減な・・)でも、本当はよくわかりません。何をどう書くべきなのかが一向に浮かばないので、いっそのこと読まなかったことにしようかと思ったくらいです。

しかし、たまには開き直って「そんな気持ちになる本だってありますよ」ということを書いておくのもいいかと・・・、読み終わっても何だか消化不良を起したようで、内容などはどうでもよくて、とりあえずなかったことにしたい、みたいなときってありません?

あとで知ったのですが、この人の「悪夢シリーズ」というのが有名らしい。そういえばこの本だって「サンブンノイチシリーズ」といってシリーズ化されたものの一冊で、(私が知らないだけで)おそらくファンは一杯いるのです。

ストーリーはしっかりしており、伏線もきっちりとあります。登場人物のキャラクターも悪くないし(私は〈川崎の魔女〉と呼ばれ恐れられている「渋柿多見子」という老婆が一番好きです)と書けば、なら面白いんじゃない! - となるわけですが・・・

何がどうでかが上手く説明できないのですが、私にはビビンと来るものがないのです。(くれぐれも言っておきますが、私に限ってはということですからあしからず)

「驚異のノンストップ・エンターテイメント」というふれ込みも、決して嘘ではありません。それはその通りなのですが、私の場合、少々期待に過ぎたのかも知れません。勝手に違うイメージを膨らませ過ぎて、自滅したような感じです。

基本軽いのはどちらも同じなのですが、『鈴木ごっこ』の方は幾分か落ち着いていたような気がします。そのイメージで読むと、『サンブンノニ』は何だかちょっと慌ただしいのです。

次々とスピーディーに場面転換するのはいいのですが、(速すぎて)何かが抜け落ちてしまうような、気持ちが置き去りになるとでも言うのでしょうか、何かを感じる前にもう次の何かが始まっていて落ち着きません。

例えば、先ほど書いた「渋柿多見子」のことであるとか、本来の主人公である「シュウ」がもっと主人公らしく、もう少し丁寧に書かれていたとしたらどうだったのでしょう。

しかしながら、そういったどれもこれもが自分勝手な弁解にも思えます。要は、もうそれなりに歳を取った私などが読むべき本ではなかったのかも知れません。

木下半太さんがどうだとか、この本がどうであるとかではなく、今どきの、やたら早口で喋り散らすような歌がちっともよく思えないのと同じで、私の、この手の小説に対する感性が少しずつ劣化しているのだろうと思わずにいられません。

 

この本を読んでみてください係数 75/100


サンブンノニ (角川文庫)

 

◆木下 半太
1974年大阪府茨木市生まれ。
18歳で予備校に通いながらパチプロになるが、大学受験は失敗。劇団「渋谷ニコルソンズ」主宰。

作品 「悪夢のエレベーター」「悪夢の観覧車」「悪夢の六号室」「宝探しトラジェディー」「オーシティー」「サンブンノイチ」「鈴木ごっこ」他多数

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