『陰日向に咲く』(劇団ひとり)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2023/03/10 『陰日向に咲く』(劇団ひとり), 作家別(か行), 劇団ひとり, 書評(か行)

『陰日向に咲く』劇団ひとり 幻冬舎文庫 2008年8月10日初版発行


陰日向に咲く (幻冬舎文庫)

この本が出版されたのは、もう6年も前のことになります。今更なぜこの本なのかと自分でも思うのですが、実は発売当初から気にはなっていました。

お笑い芸人でありながら、時おりらしくないシニカルな表情をみせ、突然切れたりする彼の芸風が好きでした。出版されたのがエッセイの類いなら気にもしなかったと思います。小説だから、読んでみたいと思いました。ただあまりにも売れすぎで、手に取ってみるのも何だか気恥ずかしく、買う勇気が出ませんでした。

極めつけは、本のタイトルと表紙の写真です。

『陰日向に咲く』というタイトルは、おそらく良いタイトルなのだと思います。しかし、劇団ひとりが書いた初めての小説となると、良すぎて恥ずかしい、のです。最初の一編から取って 「道草」とか・・・・・・・、「鳴子」 あたりにすればよかったのに、かっこよすぎて如何なものかと。

そして、表紙の写真。あれは、いけません。自分を写してどうすんの?、何をアピールしたいのですか?、という感じに映ります。まあそんなこんなで、先日ようやく文庫を購入しました。

文庫裏の解説はこうです。

ホームレスを夢見る会社員。売れないアイドルを一途に応援する青年。合コンで知り合った男に遊ばれるフリーター。老婆に詐欺を働く借金まみれのギャンブラー。

そして、場末の舞台に立つお笑いコンビ。不器用に生きる人々をユーモア溢れる筆致で描き、高い評価を獲得した感動の小説デビュー作。

売れた理由は (何とはなくですが) わからぬではありません。但し、爆発的に売れた理由は正直よくわかりません。読みやすく、劇団ひとりがテレビで一人芝居をしている感覚で読む (どうしてもそうなります! ) と、それなりに笑えるしオチも用意されています。

後半はより小説らしくなっていますし、努力は認めたいと思います。しかしながら、もしもこれが無名の新人作家が書いたものだとしたら、出版社ははたして本にしただろうか。ずいぶん悩むのだろうなと、そんなことを考えました。

※例えば、もしもこの作品をプロの小説家 (私がイメージするのは荻原浩氏あたり) がリメイクしたとしたら、さらに優しげで上質な 「再生の物語」 に仕上がったことでしょう。但し、間違っても100万部は売れないと思いますが。(すきなことを書きました。劇団ひとりさん、解説を書いたお父さん、ごめんなさいです)

この本を読んでみてください係数 50/100


陰日向に咲く (幻冬舎文庫)

◆劇団ひとり

1977年千葉県生まれ。

92年デビュー、2000年にピン芸人として「劇団ひとり」になる。『陰日向に咲く』は100万部を超えるベストセラーになる。

作品 「青天の霹靂」「そのノブは心の扉」など

◇ブログランキング

応援クリックしていただけると励みになります。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

関連記事

『ジオラマ』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文

『ジオラマ』桐野 夏生 新潮エンタテインメント倶楽部 1998年11月20日発行 ジオラマ (

記事を読む

『くもをさがす』(西加奈子)_書評という名の読書感想文

『くもをさがす』西 加奈子 河出書房新社 2023年4月30日初版発行 これはたっ

記事を読む

『草にすわる』(白石一文)_書評という名の読書感想文

『草にすわる』白石 一文 文春文庫 2021年1月10日第1刷 草にすわる (文春文庫)

記事を読む

『それもまたちいさな光』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『それもまたちいさな光』角田 光代 文春文庫 2012年5月10日第一刷 それもまたちいさな光

記事を読む

『彼女は存在しない』(浦賀和宏)_書評という名の読書感想文

『彼女は存在しない』浦賀 和宏 幻冬舎文庫 2003年10月10日初版 彼女は存在しない (幻

記事を読む

『空港にて』(村上龍)_書評という名の読書感想文

『空港にて』村上 龍 文春文庫 2005年5月10日初版 空港にて (文春文庫) &nb

記事を読む

『私のなかの彼女』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『私のなかの彼女』角田 光代 新潮文庫 2016年5月1日発行 私のなかの彼女 (新潮文庫)

記事を読む

『屋根をかける人』(門井慶喜)_書評という名の読書感想文

『屋根をかける人』門井 慶喜 角川文庫 2019年3月25日初版 屋根をかける人 (角川文庫

記事を読む

『がん消滅の罠/完全寛解の謎』(岩木一麻)_書評という名の読書感想文

『がん消滅の罠/完全寛解の謎』岩木 一麻 宝島社 2017年1月26日第一刷 【2017年・第

記事を読む

『妖怪アパートの幽雅な日常 ① 』(香月日輪)_書評という名の読書感想文

『妖怪アパートの幽雅な日常 ① 』香月 日輪 講談社文庫 2008年10月15日第一刷 妖怪ア

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『改良』(遠野遥)_書評という名の読書感想文

『改良』遠野 遥 河出文庫 2022年1月20日初版発行

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』(村田沙耶香)_書評という名の読書感想文

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』村田 沙耶香 角川文庫 2023年2月

『雨のなまえ』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『雨のなまえ』窪 美澄 光文社文庫 2022年8月20日2刷発行

『くもをさがす』(西加奈子)_書評という名の読書感想文

『くもをさがす』西 加奈子 河出書房新社 2023年4月30日初版発

『悪口と幸せ』(姫野カオルコ)_書評という名の読書感想文

『悪口と幸せ』姫野 カオルコ 光文社 2023年3月30日第1刷発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑