『陰日向に咲く』(劇団ひとり)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2024/01/14 『陰日向に咲く』(劇団ひとり), 作家別(か行), 劇団ひとり, 書評(か行)

『陰日向に咲く』劇団ひとり 幻冬舎文庫 2008年8月10日初版発行

この本が出版されたのは、もう6年も前のことになります。今更なぜこの本なのかと自分でも思うのですが、実は発売当初から気にはなっていました。

お笑い芸人でありながら、時おりらしくないシニカルな表情をみせ、突然切れたりする彼の芸風が好きでした。出版されたのがエッセイの類いなら気にもしなかったと思います。小説だから、読んでみたいと思いました。ただあまりにも売れすぎで、手に取ってみるのも何だか気恥ずかしく、買う勇気が出ませんでした。

極めつけは、本のタイトルと表紙の写真です。

『陰日向に咲く』というタイトルは、おそらく良いタイトルなのだと思います。しかし、劇団ひとりが書いた初めての小説となると、良すぎて恥ずかしい、のです。最初の一編から取って 「道草」とか・・・・・・・、「鳴子」 あたりにすればよかったのに、かっこよすぎて如何なものかと。

そして、表紙の写真。あれは、いけません。自分を写してどうすんの?、何をアピールしたいのですか?、という感じに映ります。まあそんなこんなで、先日ようやく文庫を購入しました。

文庫裏の解説はこうです。

ホームレスを夢見る会社員。売れないアイドルを一途に応援する青年。合コンで知り合った男に遊ばれるフリーター。老婆に詐欺を働く借金まみれのギャンブラー。

そして、場末の舞台に立つお笑いコンビ。不器用に生きる人々をユーモア溢れる筆致で描き、高い評価を獲得した感動の小説デビュー作。

売れた理由は (何とはなくですが) わからぬではありません。但し、爆発的に売れた理由は正直よくわかりません。読みやすく、劇団ひとりがテレビで一人芝居をしている感覚で読む (どうしてもそうなります! ) と、それなりに笑えるしオチも用意されています。

後半はより小説らしくなっていますし、努力は認めたいと思います。しかしながら、もしもこれが無名の新人作家が書いたものだとしたら、出版社ははたして本にしただろうか。ずいぶん悩むのだろうなと、そんなことを考えました。

※例えば、もしもこの作品をプロの小説家 (私がイメージするのは荻原浩氏あたり) がリメイクしたとしたら、さらに優しげで上質な 「再生の物語」 に仕上がったことでしょう。但し、間違っても100万部は売れないと思いますが。(すきなことを書きました。劇団ひとりさん、解説を書いたお父さん、ごめんなさいです)

この本を読んでみてください係数 50/100


◆劇団ひとり

1977年千葉県生まれ。

92年デビュー、2000年にピン芸人として「劇団ひとり」になる。『陰日向に咲く』は100万部を超えるベストセラーになる。

作品 「青天の霹靂」「そのノブは心の扉」など

◇ブログランキング

応援クリックしていただけると励みになります。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

関連記事

『神の子どもたちはみな踊る』(村上春樹)_ぼくたちの内なる “廃墟” とは?

『神の子どもたちはみな踊る』村上 春樹 新潮文庫 2019年11月15日33刷 1

記事を読む

『貴婦人Aの蘇生』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『貴婦人Aの蘇生』小川 洋子 朝日文庫 2005年12月30日第一刷 北極グマの剥製に顔をつっこん

記事を読む

『神の悪手』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『神の悪手』芦沢 央 新潮文庫 2024年6月1日 発行 このどんでん返しが切なすぎる!! 

記事を読む

『よるのふくらみ』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『よるのふくらみ』窪 美澄 新潮文庫 2016年10月1日発行 以下はすべてが解説からの抜粋です

記事を読む

『空港にて』(村上龍)_書評という名の読書感想文

『空港にて』村上 龍 文春文庫 2005年5月10日初版 ここには8つの短編が収められていま

記事を読む

『恋』(小池真理子)_書評という名の読書感想文

『恋』小池 真理子 新潮文庫 2017年4月25日11刷 1972年冬。全国を震撼させた浅間山荘事

記事を読む

『きのうの神さま』(西川美和)_書評という名の読書感想文

『きのうの神さま』西川 美和 ポプラ文庫 2012年8月5日初版 ポプラ社の解説を借りると、『ゆ

記事を読む

『怪物の木こり』(倉井眉介)_書評という名の読書感想文

『怪物の木こり』倉井 眉介 宝島社文庫 2023年8月10日 第6刷発行 第17回

記事を読む

『泥濘』(黒川博行)_書評という名の読書感想文

『泥濘』黒川 博行 文藝春秋 2018年6月30日第一刷 「待たんかい。わしが躾をするのは、極道と

記事を読む

『幸福な日々があります』(朝倉かすみ)_恋とは結婚とは、一体何なのか?

『幸福な日々があります』朝倉 かすみ 集英社文庫 2015年8月25日第1刷 「夫

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『連続殺人鬼カエル男 完結編』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『連続殺人鬼カエル男 完結編』中山 七里 宝島社 2024年11月

『雪の花』(吉村昭)_書評という名の読書感想文

『雪の花』吉村 昭 新潮文庫 2024年12月10日 28刷

『歌舞伎町ゲノム 〈ジウ〉サーガ9 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『歌舞伎町ゲノム 〈ジウ〉サーガ9 』誉田 哲也 中公文庫 2021

『ノワール 硝子の太陽 〈ジウ〉サーガ8 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ノワール 硝子の太陽 〈ジウ〉サーガ8 』誉田 哲也 中公文庫 2

『救いたくない命/俺たちは神じゃない2』(中山祐次郎)_書評という名の読書感想文

『救いたくない命/俺たちは神じゃない2』中山 祐次郎 新潮文庫 20

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑