『地雷グリコ』(青崎有吾)_書評という名の読書感想文 

『地雷グリコ』青崎 有吾 角川書店 2024年6月20日 8版発行

第24回 本格ミステリ大賞 (小説部門) 第77回 日本推理作家協会賞 (長編および連作短編集部門)  第37回 山本周五郎賞 (トリプル) 受賞直木賞候補作 究極の頭脳戦 (ゲーム) 小説

射守矢真兎 (いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり (「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり (「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは - ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5編。(角川書店)

「地雷グリコ」 というタイトルが気になって気になって・・・・・・・、内容をよく確かめもせず買ったのですが、まさか - 高校生同士がする遊び (ゲーム) の話 - とは思いもしませんでした。何がよくてこんなに評判なんだろうと。登場人物たちと同じ高校生や、それに近しい若い人ならいざ知らず、中年のオジさんやオバさんには果たしてどんなものだろうと。

変てこりんなゲームが主題ではありますが、同時に全き “青春もの“ であるのは間違いありません。謎解きに関わる彼ら彼女らは、今まさに青春の王道を行く者たちです。そして、とても頭がいい。勉強はもちろんのこと、それよりも尚、彼ら彼女らは大人にも増して人に (他人に) 通じています。相手を思い遣ることと傷つけることの両方に、常に心を砕いています。心理戦は、ゲームの中だけのことではありません。    

心理戦・謎解き、圧倒の青春力 (藤田香織/WEBサイト 「好書好日」 より)

まさに破竹の勢いだ。

先月、わずか一週間の間に本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞、そして山本周五郎賞を受賞。十一月の刊行のため、昨年の各種ランキングは対象外となったが、今年、冠はまだまだ増えるに違いない。

主に描かれていくのは、五つのゲームだ。主人公となる高校一年生の射守矢真兎 (いもりや・まと) がまず挑むのは、「地雷グリコ」。文化祭で一番人気の屋上に出店できるわずか一団体の座を掴むため、クラス代表として、常勝チーム生徒会と対戦する。

ジャンケンをして四十六段の階段を、パーで勝てばパイナツプルで六段、グーならグリコで三段と上がっていく。そこまではおなじみの 「グリコ」 だが、独自ルールとして各々三つの場所に 「地雷」 を仕掛けることができる。事前に相手が指定した段で止まると地雷を踏んだと見なし、十段下がらなければいけない。先に階段を上り切り勝者となるには、どんな手が有効なのか - 。

真兎は、提示されたルールを素早く理解し活用方法を考え、有効な作戦を組み立てる。同時に、読者もまた頭の中で戦法を考えずにはいられなくなる。どうすれば勝てるのか。穴はどこにあるのか。神経衰弱、じゃんけん、だるまさんがころんだ、ポーカーと、よく知る遊びが追加のオリジナルルールによってまったく異なるゲームに変わる興奮と驚き。緊張感漂う心理戦と謎解き。

更に本書は凄まじい青春力でも読者を圧倒する。敵が味方になり、チームになり、闘いの場を広げていく少年漫画的な展開。真兎の参謀役を担い、主要視点人物ともなる鉱田を含めた関係性。ハラハラドキドキワクワクの全てが詰まっている上に、ちょっと切なくて愛おしい。好感度も抜群で、この先も大いに期待してしまう。これは強いぞ! =朝日新聞2024年6月1日掲載

「これは強いぞ! 」- そう思うかどうかは、あなた次第。興味を持つか否かは、おそらく、あなたの心と頭の “若さ“ にかかっています。かつてあった “あの頃“ を、どうか思い出しながら読んでください。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆青崎 有吾
1991年神奈川県生まれ。明治大学卒業。在学中の2012年 『体育館の殺人』 で第22回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。著作は他に、〈裏染天馬〉 シリーズの 『水族館の殺人』 『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』 『図書館の殺人』、〈アンデッドガール・マーダーファルス〉 シリーズ、〈ノッキンオン・ロックドドア〉 シリーズ、『早朝始発の殺風景』 『11文字の檻 青崎有吾短編集成』 がある。23年夏には 「アンデッドガール・マーダーファルス」 TVアニメ化、「ノッキンオン・ロックドドア」 がTVドラマ化され話題となった。23年11月現在 「週刊ヤングジャンプ」 にて連載中の 『ガス灯野良犬探偵団』 (漫画:松原利光) の原作も担当。

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