『赤と青とエスキース』(青山美智子)_書評という名の読書感想文
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『赤と青とエスキース』(青山美智子), 作家別(あ行), 書評(あ行), 青山美智子
『赤と青とエスキース』青山 美智子 PHP文芸文庫 2024年9月20日 第1版第1刷
二度読み必至の感動作 待望の文庫化 2022年 本屋大賞第2位

2021年本屋大賞第2位 『お探し物は図書室まで』 の著者、新境地にして勝負作! メルボルンの若手画家が描いた1枚の 「絵画 (エスキース)」。日本へ渡って30数年、その絵画は 「ふたり」 の間に奇跡を紡いでいく - 。2度読み必至! 仕掛けに満ちた傑作連作短編。
〇プロローグ
〇一章 金魚とカワセミ メルボルンに留学中の女子大生・レイは、現地に住む日系人・ブーと恋に落ちる。彼らは 「期間限定の恋人」 として付き合い始めるが・・・・・・・。
〇二章 東京タワーとアーツ・センター 30歳の額職人・空知は、淡々と仕事をこなす毎日に迷いを感じていた。そんなとき、「エスキース」 というタイトルの絵画に出会い・・・・・。
〇三章 トマトジュースとバタフライピー 漫画家タカシマの、かつてのアシスタント・砂川が、「ウルトラ・マンガ大賞」 を受賞した。雑誌の対談企画のため、二人は久しぶりに顔を合わせるが・・・・・。
〇四章 赤鬼と青鬼 パニック障害が発症し休暇をとることになった51歳の茜。そんなとき、元恋人の蒼から連絡がきて・・・・・・。
〇エピローグ 水彩画の大家であるジャック・ジャクソンの元に、20代の頃に描き、手放したある絵画が戻ってきて・・・・・・・。(webサイト/ebook Japan 「試し読み」 より)
まるで別の時代の話が、実はある一点で深く繋がっています。キーワードは 「エスキース」。画家が最初に描く 「下絵」 のことです。
但し、この小説で語られるエスキースはただのエスキースにあらず、「エスキース」 というタイトルの1枚の 「完成した絵」 を指しています。描いた画家は、「これ以上の絵は描けない」 と言ったのでした。
巡り巡って数十年後、その絵は描いた本人の元へ戻ってきます。そこには愛があり、愛しか語るものがありません。絵の制作に深く関わった者から、偶然目にした者に至るまでのすべてに及ぶ、長い長い、愛についての話です。
この本を読んでみてください係数 80/100

◆青山 美智子 1970年生まれ。愛知県出身。横浜市在住。中京大学社会学部社会学科卒業。
作品 「木曜日にはココアを」「猫のお告げは樹の下で」「お探し物は図書室まで」「月の立つ林で」「リカバリー・カバヒコ」他多数
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