『ハング 〈ジウ〉サーガ5 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文
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『ハング 〈ジウ〉サーガ5 』(誉田哲也), 作家別(は行), 書評(は行), 誉田哲也
『ハング 〈ジウ〉サーガ5 』誉田 哲也 中公文庫 2024年10月25日 改版発行
Key Person 津原英太 (つはらえいた) 捜査一課第五強行犯捜査特捜一係堀田班。巡査部長。両親がおらず祖母に育てられた。祖母の亡き後は児童養護施設で育った生い立ち。
敵は、誰だ 真実を歪ませ、警察組織にさえ介入する巨大な闇 立ち向かう刑事たちの運命は -
警視庁特捜一係堀田班の津原英太刑事たちは、宝飾店オーナー殺人事件の継続捜査を担当し、自供により容疑者を逮捕。だが直後、班員全員に異動辞令が下され、公判では警察の自白強要があったと証言されてしまう・・・・・・・。真実すら歪ませる巨大な闇を相手に、刑事たちは!? 歌舞伎町セブンのジロウの過去を描く物語が、新装版で登場! 〈解説〉 宇田川拓也 (中公文庫)
はじめに、現在までのシリーズ10作品を紹介しましょう。
1.『ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係』 (2005年)
2.『ジウⅡ 警視庁特殊急襲部隊』 (2006年)
3.『ジウⅢ 新世界秩序』 (2006年)
4.『国境事変』 (2007年)
5.『ハング』 (2009年)
6.『歌舞伎町セブン』 (2010年)
7・『歌舞伎町ダムド』 (2014年)
8.『ノワール ガラスの太陽』 (2016年)
9.『歌舞伎町ゲノム』 (2019年)
10.『ジウX』 (2023年) ※これが最新刊
と、これだけあるシリーズの、(なんと間抜けな) ど真ん中の一冊を読んでしまいました。でも大丈夫、何気に手にした一冊は期待した以上に面白くスリリングな展開で、この一冊だけでも十分過ぎるほどの読み応えがあるのですが、(当然ながら) 読み進めるほどに、それ以前にあった、あるいはその後に起こるであろう展開が、知りたくて知りたくて仕方なくなります。これはもう飽きるまで、一から通しで読まねばと、そう思うに至りました。たぶんしばらくは、この上なく愉しい読書の日々が続くだろうと。
累計三百万部を超える誉田哲也の大看板シリーズ 〈ジウ〉 サーガのなかでも、第五弾にあたる 『ハング』 は、とくに異色の作品といえる。
現在はナンバリングが施され、歌舞伎町を守る伝説の暗殺者集団 〈歌舞伎町セブン〉 のメンバーであり、鍛え上げられた大柄な肉体を武器に悪人たちを容赦ない力業で仕留める無口な男 - ジロウの過去を描いた内容であるとされているが、当初からこうした形で紹介されていたわけではない。(以下略)
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物語は、おもに凶悪犯罪を扱う警視庁刑事部捜査第一課のなかでも、重要未解決事件の継続捜査や特命捜査を手掛ける遊軍的な役目を帯びたセクション 「第五強行犯捜査」、その特捜一係 - ベテランの堀田警部補率いる 「堀田班」 に、ある未解決事件の再捜査が命じられるところから動き出す。
港区赤坂一丁目の宝飾店経営者が、夜十一時頃、店から二百メートルほど離れた路地に連れ込まれ、刺殺された事件。後日、その被害者の遺品を整理していた親族により、一枚のディスクが発見される。そこには事件の九日前の深夜、この宝飾店で密かに起きていた強盗未遂事件の監視カメラ映像が記録されていた。
殺人と強盗未遂、ふたつの事件に関連はあるのか。なぜ被害者は、店が襲われた件を警察に通報せず、身内にも語らなかったのか。植草利已、小沢駿介、大河内守、そして津原英太、三十代の巡査部長たちで構成された堀田班の面々が捜査を開始すると、ほどなくして元警備員の曽根明弘が容疑者として浮上。取り調べで曽根は、強盗未遂は認めるも、殺人については激しく否認する。(解説より)
※元々著者の作品は大好きで、ところが、なぜか 〈一冊完結本〉ばかりを選んで読んでいました。根拠のない偏見はいけません。おそらくこの作品群こそが、作家・誉田哲也の真髄、真骨頂なのでしょう。読んだ確かな予感は、外れてはいないと思います。
ここに紹介したのは、単なる事件の始まりにしか過ぎません。その後、状況は刻々と悪化し、事件の様相はまるで違う形に姿を変えていきます。バラバラになった堀田班のメンバーは、誰一人として “以前のよう“ にはいられなくなります。続く不幸の連鎖に、きっと言葉を失くすことでしょう。
この本を読んでみてください係数 85/100
◆誉田 哲也
1969年東京都生まれ。
学習院大学経済学部経営学科卒業。
作品 「妖の華」「アクセス」「ストロベリーナイト」「ハング」「あなたが愛した記憶」「背中の蜘蛛」「主よ、永遠の休息を」「レイジ」「ジウ」シリ-ズ「もう、聞こえない」他多数
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