『歌舞伎町セブン 〈ジウ〉 サーガ6 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『歌舞伎町セブン 〈ジウ〉 サーガ6 』誉田 哲也 中公文庫 2021年6月25日 6刷発行 

伝説のダークヒーロー VS 姿無き殺戮者 新宿署・東警部補が追う、この街の黒き守護天使

ジウから6年後 伝説の暗殺者集団が法で裁けぬ巨悪を、滅殺す 「歌舞伎町セブンシリーズ、開幕

歌舞伎町の一角で町会長の死体が発見された。警察は病死と判断。だがその後も失踪者が続き、街は正体不明の企業によって蝕まれていく。そして、不穏な空気とともに広まる謎の言葉 「歌舞伎町セブン」・・・・・・・。「ジウ」 の歌舞伎町封鎖事件から六年。再び迫る脅威から街を守るため、密かに立ち上がる者たちがいた。戦慄のダークヒーロー小説。〈解説〉 安東能明 (中公文庫)

稼業の大義は 「晴らせぬ恨みを晴らす」 「世のため人のためにならない殺しはしない」 - あの “必殺“ を地で行くかれらは何者なのか。「目」 とは。「手」 とは。「欠伸のリュウ」 とは、いったい誰なのか?・・・・・・・。

新宿歌舞伎町は、日本最大の歓楽街である。わずか〇・三四平方キロの狭いエリアに三千店の風俗店がひしめいている。バー、クラブ、性風俗店、アダルトショップ、パチンコ、カジノ。毎日、数百万人の人が訪れ、五十万人もが一夜を明かす。

ж

おりしも、石原都政が全盛期を迎えていた時代だ。知事肝いりの歌舞伎町浄化作戦なるものが発動され、警視庁は、歌舞伎町の雑居ビルに特別捜査チームを置いて、不法風俗店や暴力団関係者を次々と検挙し、千人に上る不良外国人を摘発した。その勢いに押されて、中国マフィアは居場所を失い、暴力団事務所も続々と出ていった。

こうして、しばらくは闇勢力の勢いも衰えたかに見えたが、最近になって、ハングレ集団やアフリカ系黒人などの新たな勢力が台頭しつつある。

このような状況下で、行政も手をこまねいてはいなかった。まちづくりを名目に、「歌舞伎町ルネッサンス推進協議会」 なる機関を立ち上げ、大規模開発をうたって、あの手この手の規制をかけ、歌舞伎町の “改造“ に懸命だ。(以下略)

ここまでが前振り。ここからです

小説では、歌舞伎町リヴァイブ推進委員会がその協議会と重なる。

ある師走の晩、推進委員会の有力メンバーのひとり、歌舞伎町一丁目の町会長が委員会の会合に参加したあと、歌舞伎町二丁目にあるうらさびしい神社の境内で倒れているのが見つかる。すでに事切れており、検視の結果は、急性心筋梗塞による心不全というものだった。

だが町会長の死に複数の人間が疑問をいだいた。

歌舞伎町商店街振興協会会長の孫娘の杏奈。フリーライターの上岡。歌舞伎町を根城にする暴力団の若き組長の市村。新宿署地域課警官の小川。そして 『ジウ』 でも重要な役割を担った新宿署の刑事、東弘樹警部補。

本編の主人公、陣内陽一もそのなかのひとり。ゴールデン街のバー 「エポ」 のマスターだ。店を始めて十三年。そんな 「エポ」 にフリーライターの上岡がふらりとやってくる。もともとはヨソ者だが、いまは歌舞伎町リヴァイブ推進委員会のメンバーだ。

その上岡の口からふと言葉が洩れる。“歌舞伎町セブンって、知ってる?“

町会長の死には、その歌舞伎町セブンなるものが関わったらしい、との噂があちこちで囁かれ始める。同時に、歌舞伎町の土地を買い漁る奇妙な手合いがいることも。しかも、その土地の買い方はでたらめで、歌舞伎町そのものを壊滅に追い込むようなものだった・・・・・・・。(解説より)

※な、な、なんと、前作 『ハング』のキーパーソン、あの津原英太巡査部長が、事もあろうに 「歌舞伎町セブン」 の “ジロウ“ とは・・・・・・・。これは驚きでした。但し、それだけではありません。他に、もっと驚くことがあります。

この本を読んでみてください係数  85/100

◆誉田 哲也
1969年東京都生まれ。
学習院大学経済学部経営学科卒業。

作品 「妖の華」「アクセス」「ストロベリーナイト」「ハング」「あなたが愛した記憶」「背中の蜘蛛」「主よ、永遠の休息を」「レイジ」「ジウ」シリ-ズ「もう、聞こえない」他多数

関連記事

『ギッちょん』(山下澄人)_書評という名の読書感想文

『ギッちょん』山下 澄人 文春文庫 2017年4月10日第一刷 四十歳を過ぎた「わたし」の目の前を

記事を読む

『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』(麻布競馬場)_書評という名の読書感想文

『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』麻布競馬場 集英社文庫 2024年8月30日 第1刷

記事を読む

『主よ、永遠の休息を』(誉田哲也)_せめても、祈らずにはいられない。

『主よ、永遠の休息を』誉田 哲也 中公文庫 2019年12月25日5刷 「名無し少

記事を読む

『ギブ・ミー・ア・チャンス』(荻原浩)_書評という名の読書感想文

『ギブ・ミー・ア・チャンス』荻原 浩 文春文庫 2018年10月10日第1刷 若年

記事を読む

『ノワール 硝子の太陽 〈ジウ〉サーガ8 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ノワール 硝子の太陽 〈ジウ〉サーガ8 』誉田 哲也 中公文庫 2018年12月25日 初版発行

記事を読む

『学問』(山田詠美)_書評という名の読書感想文

『学問』山田 詠美 新潮文庫 2014年3月1日発行 私はこの作家が書く未成年たちを無条件に信頼

記事を読む

『後妻業』黒川博行_書評という名の読書感想文(その1)

『後妻業』(その1) 黒川 博行 文芸春秋 2014年8月30日第一刷 とうとう、本当にとう

記事を読む

『ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係 SIT 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ジウⅠ 警視庁特殊犯捜査係 SIT 』誉田 哲也 中公文庫 2023年7月25日 改版3刷発行

記事を読む

『フォルトゥナの瞳』(百田尚樹)_書評という名の読書感想文

『フォルトゥナの瞳』百田 尚樹 新潮文庫 2015年12月1日発行 幼い頃に家族を火事で失い天涯孤

記事を読む

『じい散歩』(藤野千夜)_書評という名の読書感想文

『じい散歩』藤野 千夜 双葉文庫 2024年3月11日 第13刷発行 読み終えた僕は、胸を温

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『友が、消えた』(金城一紀)_書評という名の読書感想文

『友が、消えた』金城 一紀 角川書店 2024年12月16日 初版発

『連続殺人鬼カエル男 完結編』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『連続殺人鬼カエル男 完結編』中山 七里 宝島社 2024年11月

『雪の花』(吉村昭)_書評という名の読書感想文

『雪の花』吉村 昭 新潮文庫 2024年12月10日 28刷

『歌舞伎町ゲノム 〈ジウ〉サーガ9 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『歌舞伎町ゲノム 〈ジウ〉サーガ9 』誉田 哲也 中公文庫 2021

『ノワール 硝子の太陽 〈ジウ〉サーガ8 』(誉田哲也)_書評という名の読書感想文

『ノワール 硝子の太陽 〈ジウ〉サーガ8 』誉田 哲也 中公文庫 2

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑