『連続殺人鬼カエル男 完結編』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『連続殺人鬼カエル男 完結編』中山 七里 宝島社 2024年11月22日 第1刷発行

心神喪失者の行為は罰しない 刑法第39条 VS 連続殺人鬼 救うべきは誰か 

人権派弁護士が狙われる連続猟奇殺人事件が発生。カエル男との闘いは衝撃のクライマックスを迎える!

凄惨な殺害方法と、稚拙な犯行声明文で世間を震撼させた 「カエル男連続猟奇殺人事件」。事件のキーマンである有働さゆりは医療刑務所から脱走し、行方知れずのままだった - 。その頃、精神疾患を抱える殺人犯を無罪にした人権派弁護士が何者かに殺害される。遺体のそばには、あの稚拙な犯行声明文が残されていた。捜査一課の渡瀬と古手川はカエル男の犯行を視野に入れて捜査を進めるも弁護士殺人は続く。これまでと異なる動きを見せるカエル男に翻弄される渡瀬はある人物からひとつの提案を受ける・・・・・・・。(宝島社)

遂に完結編。前作から実に5年ぶりになります。間が空きすぎて忘れていたこともあるにはあったのですが、読み進むにつれ、事の背景やこれまでの状況などが蘇り、登場人物それぞれのキャラクターや相互の関係なども思い出し、案外苦労せずに読み終えました。全作品を通じ、それほどインパクトがあったのだと思います。

初読の方、あるいは 「最初の一冊だけは読みました」 などという方のために、巻末に著者からこんなメッセージが添えられています。

本作は四部作となり、以下の順にお読みいただくことをおすすめいたします。
連続殺人鬼カエル男』 (宝島社) → 『連続殺人鬼カエル男ふたたび』 (宝島社) → 『嗤う淑女 二人』 (実業之日本社) → 本作

主だった登場人物を整理しておきましょう。

本シリーズの最重要人物である有働さゆりは言うに及ばず、彼女を主に捜査をするのが埼玉県警捜査一課警部で班長の渡瀬と、彼の部下の古手川和也。但し、捜査にかかる二人の力量には格段の差があり、基本古手川は渡瀬に叱られてばかりいます。

脇を固める人物として、浦和医大法医学教室の光崎教授、同じく法医学教室で学ぶ栂野真琴助教とキャシーペンドルトン准教授。ピアニストの岬洋介。弁護士の御子柴礼二。埼玉日報の嫌味な記者・尾上善二など、作品を跨ぎ、時を跨いで、多くの人物が登場します。四作通しで読むと、人それぞれの背景や来歴などもわかり、とてもスムーズに話に集中できるはずです。

さて、「カエル男」 に特徴的なのは、(誰が何と言っても) 奴がする極めて残酷なその 「殺し方」 にあります。「よくもまあこんな方法で・・・・・」 と思わずにはいられない、およそ人にはできないであろう、あまりに凄惨なやり方で、容赦の欠片すらない殺害方法は、想像すると気が遠くなりそうで、仕掛けた犯人の “精神状態“ を疑わざるを得ません。それほどに、惨たらしいものでした。

本作の目次はこうです。

一 引き摺る
二 啄む
三 乾かす
四 誘う
五  (い) 殺す

そしてエピローグとなるのですが、目次のすべては被害者の 「殺され方」 を示唆しています。これ以上は言いません。想像してみてください。そして、心からゾッとしてください。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。

作品 「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「魔女は甦る」「連続殺人鬼カエル男」「護られなかった者たちへ」他多数

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