『友が、消えた』(金城一紀)_書評という名の読書感想文

『友が、消えた』金城 一紀 角川書店 2024年12月16日 初版発行

ザ・ゾンビーズ・シリーズ最新作がついに登場! 金城一紀13年ぶりの長編小説

絶対に変えてやる。このクソみたいな現実を。大学生の南方は、友のために立ち上がる。読めば勇気が湧いてくる、最高&最強の青春小説!

著者の小説を初めて読んだのが 『GO』 で、『GO』 は私にとって宝物のような一冊です。

金城一紀は日本生まれの在日コリアンで、中学校まで民族学校 (朝鮮学校) に通い、国籍を朝鮮籍から韓国籍に変えると同時に日本の高校へ通うことを決意します。彼の原点は言うまでもなく彼自身の出自ですが、彼はそれを隠さずむしろ陽のエネルギーヘ変換し、小説は厭味なく、文章は明快かつ軽妙です。『GO』 は自分の生い立ちを綴った自伝的作品なのですが、胸のすく思いで一気に読みました。

そして次に読んだのが、あの伝説的 (!?) オチコボレ高校生集団 〈ザ・ゾンビーズ〉 のデビュー作 『レヴォリューションNO.3』 です。もちろんリーダーは南方。彼はいま、大学生になっています。

オチコボレ男子高校生だった南方は、仲間たちとのある約束のために大学に進学した。「君たち、世界を変えてみたくないか? 」 高校の生物教師のこの言葉をきっかけに、仲間たちと周囲の不条理に立ち向かった彼らは、「殺しても死にそうにないから」 という理由で 「ザ・ゾンビーズ」 と呼ばれていた。だが高校卒業を機にメンバーはそれぞれの道に進み、チームは解散。南方は大学でどこか物足りない日々を送っていた。

そんな折、同級生の結城から 「友人の北澤と、その家族が行方不明になったので捜してほしい」 との依頼が。胸に秘めていた本能を揺さぶられた南方の前に、学内最大のサークルを仕切るカリスマ志田、志田を狙う謎の女子、そして北澤を追う男たちが現れる。渦巻く思惑と予想外の真相に南方は果敢に迫っていく。(KADOKAWA文芸 「カドブン」 note 出張所より )

※括りで言えば 「青春小説」 ですが、明るく平和的でも何でもなくて、かなりの悪事や度を超す一歩手前の暴力など際どい場面の連続で、ハラハラもするのですが、南方だけは至って冷静で、その度量の大きさはもはや学生の範疇をはるかに凌駕しています。その上博識で、普段はすこぶる常識人で。こんな主人公は、滅多にいません。きっとあなたもファンになります。

この本を読んでみてください係数  90/100

◆金城 一紀
1968年埼玉県川口市生まれ。
慶應義塾大学法学部卒業。

作品 「GO」「対話編」「映画編」「レヴォリューションNO.3」「SPEED」「レヴォリューションNO.0」など

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