『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)_書評という名の読書感想文

『銀河鉄道の夜』宮沢 賢治 角川文庫 2024年11月15日 3版発行

あなたの時間を少しだけ、小説とともに。100分間で楽しむ名作小説

病気がちな母と暮らすジョバンニは、学校帰りに活版所で働いて家計を助けている。いじわるな級友から父の不在をからかわれ、つらい思いをする彼の気持ちを、親友のカムパネルラだけはわかってくれていた。祭りの夜、あらゆる星が輝く夜空の向こう側へと、二人は銀河鉄道に乗って旅に出る - 。すべてがきらきらと輝く、かけがえのない物語。(角川文庫)

恥ずかしながら六十歳を過ぎた今まで読もうとは思わなかった 「名作」 を読んでみようと。想像していたのとはずいぶん違いましたが、今は (生きているうちに) 読めて本当によかったと思っています。

但し、読み解くには相応の努力が必要で、宇宙のこと、星々のこと、宗教のこと・・・・・様々描かれていることの大元には、おそらく全部が一つに繋がっているという大きなテーマというか、作者が願う並々ならぬ思いがあるようで、じっくり読むと、ありありとそんな気配が感じられます。

不条理な死を受け入れ、明日を生きる 平田オリザ (劇作家・大阪大教授)

「銀河鉄道の夜」 は一九二四年に着想、執筆。その後も推敲、改訂が繰り返され、現在流布しているストーリーは、戦後もしばらくして発見された第四次稿と呼ばれる作品である。(尚、本書は昭和四十四年七月に角川書店より刊行したものを底本に再編集されたものです)

物語はジョバンニとカムパネルラという二人の少年が、銀河鉄道に乗って宇宙を旅する形で進んでいく。そして結末、カムパネルラは川で溺れそうになった友人を助けようとして亡くなっていたことが明らかになる。

この不思議な童話は、多様な解釈を許容する。私は、この作品をフランスで上演した際、一人の少年が旅を通じて様々な人と出会い、そのことによって友人の死を受け入れ成長していく物語として劇化した。

カムパネルラは、いじめっ子のザネリを助けるために溺死する。それは極めて不条理な死だ。最終盤、カムパネルラのお父さんは 「もう駄目です。落ちてから四十五分たちましたから」 と息子の死を受け入れ、「ジョバンニさん。あした放課後みなさんとうちへ遊びに来てくださいね」 と気遣いさえ見せる。

親しい者の死を受け入れることは、宇宙を一周、経巡るほどに時間がかかる。それでも私たちは他者の死を受け入れ、明日を生きていかねばならない。(略)

宮沢賢治は、大正文学の牧歌の時代から昭和前期の文学の混沌への端境期に、東北の片隅で生まれた小さな種だった。しかしこの種は死後、美しい大輪の花を咲かせることになる。(「好書好日」2021年5月20日掲載より/ 一部割愛)

※ジョバンニが持っていた “切符“ は 「三次空間」 からのものでした。三次空間とは縦、横、高さの三軸で成り立つ立体世界。つまり、今我々が存在しているこの世界のことをいいます。銀河鉄道の乗客のうち、唯一、彼だけがそれを持っていました。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆宮沢 賢治
1896年岩手県花巻生まれ。盛岡高等農林学校卒。農学校で教鞭を執るかたわら、意欲旺盛な創作活動をする。30歳の時に農学校を退職、独居生活に入る。羅須地人協会を設立、農民講座を開く。青年たちに農業を指導したが、肺を患って病臥した。1933年、肺病により死去。生前に詩集 『春と修羅』、童話集 『注文の多い料理店』 を刊行。遺稿として発見された傑作が、死後多数発表された。

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