『祝祭のハングマン/私刑執行人』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『祝祭のハングマン/私刑執行人』中山 七里 文春文庫 2025年5月10日 第1刷

嗤う犯人を許さない。ハングマン“ がついに動き出す!

刑事・瑠衣は死亡事故の真相を追ううちに、奇妙な探偵と巡り合って・・・・。

建設会社のサラリーマンがトラックに轢かれる事件が起きた。どうやら殺人らしい。警視庁捜査一課の春原瑠衣は事件を追ううちに、被害者と同じ会社に勤める自身の父親にも疑惑の目を向け始め・・・。司法で裁けないのであれば、陰の存在 “ハングマン“ が悪に鉄槌を下す! 私立探偵ら謎の人物が跋扈する衝撃のミステリー。解説・中江有里 (文春文庫)

一 暗中模索
二 疑心暗鬼
三 愛別離苦
四 遅疑逡巡
五 悪因悪果

そして、エピローグ  

もしかすると既にシリーズ化されているのでしょうか、それともこれから? いずれにせよ、(かなり高い確率で) この作品には続編があるのではないかと。著者のことですから、とうに準備が整っていたりして。そんな予感がします。

タイトルにある 「ハングマン」 とは辞書でひくと 「絞首刑執行人」 の意味。しかし本書では 「私刑執行人」 を指す。

ж

刑事である瑠衣が公務ではなく、私的に事件を捜査し、犯人を捕らえようとするまでの心の揺れが読みどころだ。

著者インタビューによると時代劇の名作 『必殺仕事人』 現代版のオファーから生まれた作品とあるが、主人公瑠衣は警察官としての資質にあふれた人格だから警察官としての道を踏み外すことへの躊躇がある。

誰もが自分に合った仕事、向いている職業を選んでいるかといえば、そうとも言えないが、瑠衣に関してはいかにも警察官らしい性格と見える。

彼女の父は死亡保険金を瑠衣に残していたが、生きて、事件について証言をしてほしかったと思うのだ。実の父が刑事である娘に言えなかったことがある、と察知している。

瑠衣が目指すのは、言うなれば罪を犯した者が罰せられる社会の実現だ。警察官とはその職業倫理と社会正義が一致した職業である。

私刑はそれ自体が罪である。その罪を犯すのは自己否定に他ならない。(解説より)

※えらくそそる表紙ではありますが、数多ある中山作品の中でいえば、ギリギリ “セーフ“ の出来ではないかと。瑠衣も、派手な衣装のピエロに化けた探偵も、もっともっと “個性的かつ強烈“ なキャラクターであってほしかった。

例えば 「連続殺人鬼カエル男」 などと比べると、いかばかりか見劣りするような。何かはわかりませんが、何かが足りない感じがします。シリーズ化は望むところですが、ならば、次は本作以上に波瀾に富んだ、あるいは徹頭徹尾シリアスな、そんな話を期待しています。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆中山 七里
1961年岐阜県生まれ。
花園大学文学部国文科卒業。

作品 「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「さよならドビュッシー」「闘う君の唄を」「嗤う淑女」「魔女は甦る」「連続殺人鬼カエル男」「護られなかった者たちへ」「人面島」他多数

関連記事

『毒島刑事最後の事件』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『毒島刑事最後の事件』中山 七里 幻冬舎文庫 2022年10月10日初版発行 大人

記事を読む

『殺人カルテ 臨床心理士・月島繭子』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『殺人カルテ 臨床心理士・月島繭子』大石 圭 光文社文庫 2021年8月20日初版1刷

記事を読む

『沙林 偽りの王国 (上下) 』 (帚木蓬生)_書評という名の読書感想文

『沙林 偽りの王国 (上下) 』 帚木 蓬生 新潮文庫 2023年9月1日発行 医

記事を読む

『さよなら、ビー玉父さん』(阿月まひる)_書評という名の読書感想文

『さよなら、ビー玉父さん』阿月 まひる 角川文庫 2018年8月25日初版 夏の炎天下、しがない3

記事を読む

『死んでいない者』(滝口悠生)_書評という名の読書感想文

『死んでいない者』滝口 悠生 文芸春秋 2016年1月30日初版 秋のある日、大往生をとげた男

記事を読む

『死体でも愛してる』(大石圭)_書評という名の読書感想文

『死体でも愛してる』大石 圭 角川ホラー文庫 2020年8月25日初版 台所に立っ

記事を読む

『嗤う淑女』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『嗤う淑女』中山 七里 実業之日本社文庫 2018年4月25日第6刷 その名前は蒲

記事を読む

『シュガータイム』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『シュガータイム』小川 洋子 中公文庫 2022年7月30日21刷発行 三週間ほど

記事を読む

『夜がどれほど暗くても』(中山七里)_書評という名の読書感想文

『夜がどれほど暗くても』中山 七里 ハルキ文庫 2020年10月8日第1刷 追う側

記事を読む

『死刑にいたる病』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『死刑にいたる病』櫛木 理宇 早川書房 2017年10月25日発行 主人公の筧井雅也は、元優等生

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『僕の女を探しているんだ』(井上荒野)_書評という名の読書感想文

『僕の女を探しているんだ』井上 荒野 新潮文庫 2026年1月1日

『この本を盗む者は』(深緑野分)_書評という名の読書感想文

『この本を盗む者は』深緑 野分 角川文庫 2025年11月5日 8版

『いつも彼らはどこかに』(小川洋子)_書評という名の読書感想文

『いつも彼らはどこかに』小川 洋子 新潮文庫 2025年11月25日

『新しい花が咲く/ぼんぼん彩句』(宮部みゆき)_書評という名の読書感想文

『新しい花が咲く/ぼんぼん彩句』宮部 みゆき 新潮文庫 2025年1

『スピーチ』(まさきとしか)_書評という名の読書感想文

『スピーチ』まさき としか 幻冬舎 2025年9月25日 第1刷発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑