『今日のハチミツ、あしたの私』(寺地はるな)_書評という名の読書感想文

『今日のハチミツ、あしたの私』寺地 はるな ハルキ文庫 2024年7月18日 第23刷発行

第35回 読書感想画中央コンクール高等学校の部 文部科学大臣賞受賞作品

蜂蜜をもうひと匙足せば、あなたの明日は今日より良くなる - 。「明日なんて来なければいい」 と思っていた中学生のころ、碧は見知らぬ女の人から小さな蜂蜜の瓶をもらった。それから十六年、三十歳になった碧は恋人の故郷で蜂蜜園の手伝いを始めることに。頼りない恋人の安西、養蜂家の黒江とその娘の朝花、スナックのママをしているあざみさん・・・・・・・さまざまな人と出会う、かけがえのない日々。心ふるえる長篇小説。 解説・宮下奈都 (ハルキ文庫)

実は私が買った文庫本には表紙のカバーが二枚付いています。ご覧のカバーの上にもう一枚、「小確幸」 と題した加藤柊俐君 (静岡県 浜松学芸高等学校) の作画 - この本を読んで彼がイメージした絵で、おそらくこれが文部科学大臣賞受賞作 - が重なっています。何だか不思議な絵でよくわからなかったのですが、読むと、何とはなしにですが彼が描きたかったことがわかるような気がしてきます。ぜひ書店で確認してみてください。

それはさておき、こんな一気に読ませてしまう本だとは思いもしませんでした。加藤君の絵のタイトルのように、あまり芳しくなかった碧の人生が、甘くて美味しい蜂蜜と出会い、それをずっと忘れずにいることで、わずかずつではありますが、将来へと続く新たな一歩を踏み出す “きっかけ“ を掴むことになります。誰に言われたわけでもなくて、碧が自ら選び取ったものでした。

碧は、効率よくピッピッと物事を進めていけるタイプではない。どちらかといえばまじめすぎるくらい、ひとつひとつのことを自分の中にいったん取り込んでからでないと判断をつけたり評価をしたりしない。それはときどき歯がゆいくらいなのだけれど、碧でなければ見えなかったもの、出会えなかった人たち、つなげなかった時間があって、それが少しずつ増えていくのがいとおしい。そういうものたちで碧の世界はつくられ、そこが碧の居場所となっていく。

これは、居場所の話だと思う。居場所を見つけるのではなく、やわらかく開く感じ。もともとなかった場所に、そっと立ってみる感じ。そして、そこから歩き出すのだ。居場所を求めるだけでなく、自らつくっていく。そう意識していようがいまいが、不器用ながらも居場所をつくりだしていく過程の物語なのだ。(解説より)

※内容を詳しくは書きません。これから読もうとするあなたに失礼だからです。真っ新な状態で、(高校生に戻った気分になって) ページを開いてください。碧がたどる “過程“ こそが一番の読みどころだろうと。読むと、止まらなくなると思います。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆寺地 はるな
1977年佐賀県唐津市生まれ。大阪府在住。
高校卒業後、就職、結婚。35歳から小説を書き始める。

作品 「ビオレタ」「夜が暗いとはかぎらない」「大人は泣かないと思っていた」「正しい愛と理想の息子」「わたしの良い子」「水を縫う」「どうしてわたしはあの子じゃないの」他多数

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