『なりすまし』(越尾圭)_書評という名の読書感想文

公開日: : 最終更新日:2025/09/03 『なりすまし』(越尾圭), 作家別(か行), 書評(な行), 越尾圭

『なりすまし』越尾 圭 ハルキ文庫 2025年5月18日 第1刷発行

松本清張以来の社会派ミステリーの復活! 満足度93% - 角川春樹

惨殺された妻は戸籍を偽っていた。そして残された私も本当は・・・・・・・。

ある朝、夫婦でブックカフェを経営している和泉浩次郎が娘の杏奈を連れて出勤すると、妻エリカが店内で惨殺されていた。その捜査の過程で、エリカが戸籍を偽っていたことを告げられる。妻はいったい何者で、誰が殺したのか? 激しく動揺する和泉だったが、実は彼も戸籍を偽る 「なりすまし」 だった。焦燥する和泉を嘲笑うかのように、娘の杏奈も殺されてしまう。いったい彼の周囲で何が起きているのか・・・・・・・? 戸籍売買、無戸籍児、そして 「なりすまし」 - 暗部を描き切った社会派小説の傑作! (ハルキ文庫)

とにもかくにも読み終えました。それだけで80点、という感じ。

実はこんなのが一番困ってしまいます。買ったのは私ですから自業自得なのですが、可もなく不可もなし、さしたる感想もなしでは書くことがありません。初読の作家 (特にミステリー)にはありがちな、とても中途半端な気持ちでいます。

難解なストーリーだというのはわかるのですが、ここぞというインパクトに欠けるというか、訴えてくるものの迫力に欠けるというか、イマイチ話に没入することができません。読後の印象が薄く、残念ですが 「満足度93%」 は (どう考えても) 言い過ぎで、天下に名を成した松本清張氏を引き合いに出すのはいかにも失礼ではないかと思うのですが、どうでしょう? 

と、そんなことを考えていたら、今の私の気持ちを代弁してくれているような 「感想」 を見つけました。「読書メーター」 にあった 「竹ピコ」 さんの文章を紹介します。

ネタバレ] 初めて読む作家さん。様々な家庭や個人の事情により、新たな人生を歩むために戸籍を変えた人たちの物語。結局は遺産相続の問題が、上手く行き始めた人達の運命を変えてしまった。妻と幼子を殺害された事件の割に、マスコミが訪れることなく、和泉が自由に動き回れたことや、何度も重要人物を取り逃がしてしまう警察の動きとか、色々と違和感も多かったけど、展開が気になりどんどん読めた。そして、また代理ミュンヒハウゼン症候群が出てきて、何か笑っちゃった。ご都合主義な部分は抜きにして、面白かった。

※「竹ピコ」 さん、やさしい。「色々と違和感があって」 「なぜか笑えて」 「ご都合主義」 な部分があったにもかかわらず、それでも 「どんどん読めて」 「面白かった」 なんて。なんていい人なんだろう。

この本を読んでみてください係数 80/100

◆越尾 圭
1973年愛知県知多郡東浦町生まれ。同志社大学文学部中退、早稲田大学教育学部卒業。

作品 2019年、『このミステリーがすごい! 』 大賞・隠し玉としてデビュー。著書に 『クサリヘビ殺人事件 - 蛇のしっぽがつかめない』 『殺人事件が起きたので謎解き配信してみました』 『AIアテナの犯罪捜査 警視庁情報通信企画課 〈アテナプロジェクト〉 』 『楽園の殺人』 『協力者ルーシー』 などがある。

関連記事

『トリニティ』(窪美澄)_書評という名の読書感想文

『トリニティ』窪 美澄 新潮文庫 2021年9月1日発行 織田作之助賞受賞、直木賞

記事を読む

『負け逃げ』(こざわたまこ)_書評という名の読書感想文

『負け逃げ』こざわ たまこ 新潮文庫 2018年4月1日発行 第11回 『女による女のためのR-

記事を読む

『だれかのいとしいひと』(角田光代)_書評という名の読書感想文

『だれかのいとしいひと』角田 光代 文春文庫 2004年5月10日第一刷 角田光代のことは、好きに

記事を読む

『後悔病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『後悔病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2017年4月11日初版 33歳の医師・早坂ルミ子は末期のがん

記事を読む

『殺人依存症』(櫛木理宇)_書評という名の読書感想文

『殺人依存症』櫛木 理宇 幻冬舎文庫 2020年10月10日初版 息子を六年前に亡

記事を読む

『ちょっと今から人生かえてくる』(北川恵海)_書評という名の読書感想文

『ちょっと今から人生かえてくる』北川 恵海 メディアワークス文庫 2019年7月25日初版

記事を読む

『夜の公園』(川上弘美)_書評という名の読書感想文

『夜の公園』川上 弘美 中公文庫 2017年4月30日再版発行 「申し分のない」

記事を読む

『妖談』(車谷長吉)_書評という名の読書感想文

『妖談』車谷 長吉 文春文庫 2013年7月10日第一刷 なぜこの人が書く小説が気になるのだ

記事を読む

『虹』(周防柳)_書評という名の読書感想文

『虹』周防 柳 集英社文庫 2018年3月25日第一刷 二十歳の女子大生が溺死体で発見された。両手

記事を読む

『茄子の輝き』(滝口悠生)_書評という名の読書感想文

『茄子の輝き』滝口 悠生 新潮社 2017年6月30日発行 離婚と大地震。倒産と転職。そんなできご

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

『八月の母』(早見和真)_書評という名の読書感想文

『八月の母』早見 和真 角川文庫 2025年6月25日 初版発行

『おまえレベルの話はしてない』(芦沢央)_書評という名の読書感想文

『おまえレベルの話はしてない』芦沢 央 河出書房新社 2025年9月

『絶縁病棟』(垣谷美雨)_書評という名の読書感想文

『絶縁病棟』垣谷 美雨 小学館文庫 2025年10月11日 初版第1

『木挽町のあだ討ち』(永井紗耶子)_書評という名の読書感想文

『木挽町のあだ討ち』永井 紗耶子 新潮文庫 2025年10月1日 発

『帰れない探偵』(柴崎友香)_書評という名の読書感想文

『帰れない探偵』柴崎 友香 講談社 2025年8月26日 第4刷発行

→もっと見る

  • 3 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
PAGE TOP ↑