『答えは風のなか』(重松清)_書評という名の読書感想文
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最終更新日:2025/08/08
『答えは風のなか』(重松清), 作家別(さ行), 書評(か行), 重松清
『答えは風のなか』重松 清 新潮文庫 2025年7月1日 発行
子どもからおとなまですべての人に贈る短編集

迷って、なやんで、歩きだす - その時間は、君だけのもの。
新しいお母さんができたケンタ。じつは誰にも言えない秘密があって・・・・・・・家族にとって大切なものを考える 「ケンタの背中」。ほかに、先生から言われた “ふつう“ という言葉について悩む 「いちばんきれいな空」 や、知らなければよかったことを知ってしまいどうすればいいか迷う 「おねえさんが教えてくれた」 など10編。教室で、グラウンドで、帰り道で - 言いあらわせなかった気持ちが見つかる短編集。(新潮文庫)
子どものころの思い出に、できれば 「知らずにいたほうがよかった」 と思うことがありはしなかったでしょうか・・・・・・・。私はありました。
[文庫版のためのあとがき] より
自分の書くお話は 「ああでもないこうでもない」 の 「ああ」 と 「こう」 だらけだな、とつねづね思っている。お話づくりの作法というより、それ以前の、自分自身のココロやアタマが 「ああ」 と 「こう」 であふれかえっている。
迷って、悩んで、行き詰って、別の道を探して、また行き詰って、四つ角まで引き返して、今度はどっちに進もうか迷って、悩んで・・・・・・・という繰り返しで六十年以上の歳月を生きてきた。
疲れますよ、正直言って。いい歳をして難儀なものだが、性分なのだからしかたない。そして、自分のメシの種でもあるお話も、その 「ああ」 と 「こう」 の中から生まれるのだから、文句を言ってはバチがあたるだろう。
本作は、そんな自分のつくるお話のなかでも、特に 「ああでもないこうでもない」 の濃度が高いものになった。子どもを主人公や主要な登場人物にしたお話を集めて一冊に編んだのだから、それは必然だとも思っている。
子どもたちには、子どもたちなりの 「ああでもないこうでもない」 がある。他愛のないものから、おとなになっても答えの出ないものまで、 小さな体で精一杯に、いくつもの 「ああ」 と 「こう」 を背負っている。
重いだろうな、と思う。しんどくて、さっさと答えが欲しくなるときもあるだろうな、と認める。だが、「ああでもないこうでもない」 の状態から早く結論へと導くのが正しいおとなの役目だとするなら、申し訳ないが、「ああでもないこうでもない」 と迷いつづける子どもたちへの敬礼の思いを込めたこの小さな一冊は、正しくないおとなによって書かれたのだろう。
ごめんね。
でも、かつて子どもだったおとなの一人として、やはり僕は、小さくやわらかいココロを 「ああでもないこうでもない」 で満たした君たちに敬礼を捧げたいのだ。(以下略)
※10編中で特に印象深かったのは後半の2編 「おねえさんが教えてくれた」 と 「タケオの遠回り」 です。似た経験があり、それを思い出しました。苦く、胸がつかえて上手く話せなかったのを覚えています。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆重松 清
1963年岡山県津山市生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。
作品「定年ゴジラ」「カカシの夏休み」「ビタミンF」「十字架」「流星ワゴン」「疾走」「カシオペアの丘で」「ナイフ」「星のかけら」「また次の春へ」「青い鳥」「せんせい。」他多数
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