『レッドクローバー』(まさきとしか)_書評という名の読書感想文

『レッドクローバー』まさき としか 幻冬舎文庫 2025年9月15日 初版発行

まさか、こんな展開になるとは思いもしなかった。」 忌まわしくも、不敵な女たちの輪廻。桐野夏生

累計50万部突破のあの日、君は何をした』 シリーズ 著者 文庫最新刊ミステリ  

東京のバーベキュー場で起きたヒ素による大量殺傷事件。記者の勝木は、十数年前の北海道灰戸町家族毒殺事件を思い出す。家族が死んだ居間で寛ぎカップラーメンを啜っていた生き残りの少女、赤井三葉が “また“ 殺したのではないか。三葉の行方を追い勝木は北へ向かうが - 。「みんな死ねばいい」。灰戸町の女たちの怒りの連鎖が、新たな悲劇を産み落とす。解説・北大路公子 (幻冬舎文庫)

くさい、汚い、貧乏などとはやし立てられ、両親をバカにする言葉を投げつけられるのが日常でした。だらしない生活態度に不潔な身なり、誰かれかまわず悪態をつき、町の規則は守らず、人間関係をうまく結ぼうなどという気配はまるでありません。

親しい者はなく、周囲の住民からは鼻つまみ者として扱われた赤井一家でしたが、三葉はその中でさらに孤立していました。ネグレクトや暴力が常態化していたのですが、三葉に手を差し伸べる者はいません。そんな彼女がある日出会ったのが、近所に住む祖母に預けられたちひろという名の少女でした。

発端は東京で起きた殺人事件である。とあるバーベキューパーティの飲み物にヒ素が混入され、七人の死傷者を出した。犯人はパーティの主催者である丸江田逸央。三十四歳で無職の彼は自らを起業家と偽り、いわゆる 「上級国民」 である被害者らとSNSで知り合った後に、犯行に及んだ。

丸江田はその場で逮捕されたものの、事件の詳細はなかなか明らかにはならない。取り調べに対しては、
「ざまあみろって思ってます」
 とだけ述べたとされ、格差社会における富裕層への妬みや恨みを動機とすることで、世間は納得しつつあった。

ところが、事件に使われたヒ素が、十二年前に北海道の灰戸町で一家四人が殺害された未解決事件で使用されたものと同じ種類と判明。その事実を知った雑誌記者の勝木が取材に乗り出したことから、事態は大きく動いていくのである。

東京と北海道。現在と十二年前。
場所も時間も異なる二つの殺人事件の繋がりを追いながら、本作はそこに蠢く人間模様にも迫っていく。ミステリとしての謎解きはもちろん、著者がこれまで多く主題としてきて扱ってきた、家族、とりわけ母と子の拭いがたい業の連鎖が、深く暗い穴へ読者を力づくで引きずり込んでいくのである。(解説より)

※ここには、人の業、人の欲、人の本性のすべてが書いてあります。たとえ血の繋がった母娘であれ、互いが互いを好きかどうかはわかりません。事情は様々ですが、殺したいほど嫌いなこともままあるということ。切ないことではありますが、なにも珍しいことではありません。

この本を読んでみてください係数 85/100

◆まさき としか
1965年東京都生まれ。北海道札幌市育ち。

作品 「夜の空の星の」「完璧な母親」「いちばん悲しい」「熊金家のひとり娘」「ゆりかごに聞く」「あの日、君は何をした」「祝福の子供」「彼女が最後に見たものは」「あなたが殺したのは誰」他多数

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