『ミス・サンシャイン』(吉田修一)_書評という名の読書感想文
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『ミス・サンシャイン』(吉田修一), 作家別(や行), 吉田修一, 書評(ま行)
『ミス・サンシャイン』吉田 修一 文春文庫 2025年8月10日 第1刷
『国宝』 が大ヒット 最高に泣ける、吉田修一

歌舞伎役者の次に挑んだ、ある伝説的映画女優の美しい生涯 島清恋愛文学賞受賞の感動長篇
心に傷を負った大学院生・岡田一心は伝説の映画女優・和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理を手伝うことに。引退した今なお美しい鈴さんの胸に秘められていた波乱万丈な映画人生、原爆が奪った運命と大切な人たち - その過去に触れるうち、一心の胸にあたたかな光が灯る。清冽な感動に包まれる島清恋愛文学賞受賞の傑作長篇。(文春文庫)
さて、これはいったい誰をモデルに書かれたものなのか? そんなことを考えながら読み進めていると、本作が、単に昔いた一人の映画女優の “活躍ぶり“ を描いただけの話ではないのがわかってきます。ミス・サンシャイン - そう呼ばれることは、彼女にとって実はひどく苦痛なことでした。
長崎の8月といえば、原爆の季節です。子供たちは夏休みのど真ん中の8月9日に、学校の体育館に集められ、あの日に故郷で何があったのか、丁寧に教えられます。長崎出身の吉田修一さんも、そして私も、そんな子供たちの一人でした。
ひとりの伝説的映画女優の美しい生涯を描いた本作を通して吉田さんが描きたかったのは、戦争が、とりわけ原爆が何を奪い、遺したのか - 大切な人を喪った者たちが、悲しみや寂しさとどう折り合いを付けて人生を歩いていけばよいのか、ということだったと思います。
書き手も読み手も戦争体験者が少なくなり、非戦争体験者が戦争を、原爆をどう描けばいいのかが難しくなっている中、悲惨を悲惨と受け止めつつ、自身の肌感覚と言葉で、軽やかかつ伸びやかに描けたのは、原爆の季節の、あの街独特の空気を胸いっぱいに吸い込んだ吉田さんだからこそだと思うのです。
高校2年の夏、暑い暑いあの街で 『パーク・ライフ』 を読んでいた16歳の私に、「20年後、同郷の大先輩の記念碑的作品に立ち会えるよ」 と囁いても、まさか信じなかったでしょう。これほど長崎県人、出版人冥利に尽きることはありません。(文藝春秋BOOKS 「担当編集者より」)
※大学生の頃だったと思います。永井隆先生の 『長崎の鐘』 や 『この子を残して』 などを読んだのは。亡くなるまでの3年余りの間、先生が療養されていた 「如己堂 」 と名付けられた小屋のことは今も忘れることができません。「己の如く人を愛せよ」 で如己堂。浦上の人たちやカトリック教会の協力により完成した、それはそれは小さな庵でした。
この本を読んでみてください係数 85/100

◆吉田 修一
1968年長崎県長崎市生まれ。
法政大学経営学部卒業。
作品 「最後の息子」「熱帯魚」「パレード」「パーク・ライフ」「悪人」「横道世之介」「平成猿蟹合戦図」「愛に乱暴」「怒り上・下」「犯罪小説集」「湖の女たち」他多数
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